第19話

「………なんだ」


 飛行艇の中。

 火花が、散っている。


「体が 重いな」


 地面を、這うように進む。


「みんな………

レセアは」


 みんな、荒い息をしている。


「もう少しッ

レセア!レセア!」


 床に、倒れているレセアの頭を抱えるように抱きしめたところで、


「ハッ………」


 ベッドに、寝ている。

 夢を見ていたようだ。

 重いと、思っていたら女が上に乗っていてボクの顔を見ている。


「お目覚めに なられました? 勇者さま ??」


 20代前半の女性だろうか。

 いきなり、ボクを勇者と言う。


「ゥグッ

君は 誰?」


 顔が、近いよ。


「あたしスゥトゥーパだよ」


 なんだろ。

 ここは、どこだ?


「卒塔婆? やっぱりあの世に来てしまったようだな」


 死んだんだろうな。

 天使が、目の前にいるんだ。


「なに言ってるの? これでも砂漠の民の首領の娘だよ?」


 首領の娘?

 砂漠?

 とりあえず、上半身を起こす。


「じゃあなんでそんな薄着で寝込みを襲っているんだ ??」


 ピンク色の、スケスケの服を着ているスゥトゥーパ。


「それはその………首領から勇者さまをもてなすようにと」


 接待?


「………おいおい

みんなは ??」


 周りを、見回すが見当たらない。


「みんなとおっしゃいますと ??」


 首を、かしげるスゥトゥーパ。


「飛行艇に乗っていたメンバーだよ」


 急に、心配になる。

 生きているだろうか?


「それでしたら広場の中心に」


 なにかしら、言いにくそうなスゥトゥーパ。


「広場の中心? なんで ??」


 歓迎会でも、しているのだろうか。


はりつけになっています

そろそろ 火がくべられるかと」


 棒に、しばりつけられているみたい。


「なに

なんだって ??」


 なんで、そうなった?


「なぜかは わかりませんが生きたまま燃やすらし───」


「止めなくちゃ」


 ベッドから、飛び上がるボク。


「えっ ??」


 困惑しているスゥトゥーパ。


「どっち ??」


 テントを、飛び出そうとしたがとりあえず聞く。


「テントを出て左手です」


「わかった」


 暗い中を走る。


「うぅぅ」


 ティファとエミリーとザイルピックが、それぞれ棒に縛られて、足元には薪が置かれている。


「さて そろそろ火を放つか」


 松明を、持つ男がティファの足元に火を近付ける。


「助けて ヒュー」


 頭の上で、縛られた両手をギュッと握るティファ。


「待って」


 なんとか、間に合った。


「おお 勇者さま

お目覚めですか」


 立派な、ヒゲをたくわえた砂漠の民が話しかけて来る。


「火を 付けないで」


 その人に、頼みこむ。


「どうしたのです? 心変わりなされたのですか ??」


 おかしなことを、言う男。


「えっ

そんな指示は出してない」


 なにを、どう勘違いしたのだろうか?


「おかしいですな

マイサが そう言っておったので」


 男が、そう言うとレセアが暗闇から出て来る。


「マイサ ?」


 その男は、レセアのことがマイサに見えているらしい。


『あーあ

もう少しでジャマなの消せるところだったのに』

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