第7話

「それじゃあすぐ戻って来るからちゃんと起きていてよナンシー」


 食事が、終わってすぐエミリーに急かされるように食堂をあとにするティファ。


『アハハ

うん待ってるね』


 手を、振るレセア。


「………ちょっと話がある

来て」


 ボクは、どうしても確認しなければならない。


「どうしたのヒュー

恐い顔をして」


 いきなり、イスから立ち上がったボクの顔色を見て心配するエミリー。


「エミリーさんには関係ないです」


 会話の、途中で話がゴチャゴチャするのを避ける為に、人払いすることにした。


『エミリー大丈夫だから少しだけ待ってて』


 苦笑いするレセア。


「うん 大丈夫ならイイけど」


 エミリーにとって、ナンシーにしか見えていないので二人でどういう会話をするのか気になる。


「………キミの本当の名前を知りたい

それと 目的」


 奥の、寝室で二人きりで話す。

 女を、ベッドに座らせると、


『あのねヒュー

悪気があってあなたに近付いたんじゃあないの』


 あい変わらず、頭に不快に響いて来る声

に辟易とするボク。


「………よくわからないな ??」


 一体、どうなっているんだ。


『あたしの名前は レセア・ガルーダよ』


 自己紹介する女。


「それは キミの名前? それとも目の前に座っている女の子の名前どっち ??」


 少なくとも、目の前の女の子のクチは微動だにしていない。

 これで、なぜ騙されているのか不思議でならない。


『目の前に座っている女のことよ

レセアあなたから自己紹介しなさい』


 声の主が、レセアに命令する。


「だって しゃべったら怒るでしょ」


 かわいらしい、声を出すレセア。


『イイから言いな』


 高圧的な、声の主。


「………レセア・ガルーダです16です」


 改めて、自己紹介をするレセア。


「へぇ ボクの1こ下だ」


その頃


「ランランララ ランランラーン」


 両サイドの、田園風景が闇に染まる中で未舗装路を鼻歌まじりでキャロルを操縦するティファ。

 軽快なスピードで駆け抜ける。


「おっと

なんだ カエルちゃんかぁ」


 モニター上には、路上に生物反応があってあわてて避ける。


「わーッ」


 キャロルの、左足のキャタピラが完全に田んぼにはまって身動きが取れなくなってしまった。


「あー

やっちったァー」


その頃


「………それで なぜボクに会いに来たんだい ??」


 会いに来たからには、それなりに理由があるはずだ。


「それはぁー」


 どう、話すべきか考えるレセア。


「それは ??」


 曖昧だった自分から、抜け出せるかと思った矢先、


「ちょっと イイかしら」


 スマートフォンの、画面を見ながらあわててヒューのところまで来たエミリー。


『わーッ』


 イヤな予感から、悲鳴を出すレセアの姉。


「どうしたんですかエミリーさん ??」


 なんだろう。

 普段、あわてることなんて皆無なのに。


「おとりこみのところすまないけど

マズいことが起きて」


 困ったように、笑うエミリー。


「………なにがあったんです ??」


 タダ事ではないと、察するボク。


「キャロルが 脱輪して田んぼから抜け出せそうにないらしいのよ

迎えに来てってさ」


 苦笑いするエミリー。


「それじゃあ すぐ迎えに行きましょう」


その頃


「パオ隊長

あれを」


 ミャンマーから、闇に乗じてタイに進軍する興産党軍。

 その進む先に、キャロルが停止しているのを見付けると軍に動揺がはしる。


「ウーム

動きを察知されたかロボット兵で待ち構えているな」


 パオ隊長は、少々自分の読みが浅かったと悟る。


「どうしましょう? このまま進めば10分後には戦端が開きます」

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