第5話

「お嬢ちゃん着いたよ」


 夕暮れに、ようやく目的地に到着するトゥクトゥクに乗ったおじさんとレセア。


「あーん

イタタタターッ」


 魔法の杖を、地面に立てるがチカラ無くへたりこむレセア。


「やっぱりギリギリ夕陽が見れなかったな

だいたい こんなへんぴな場所になんで来たかったんだい ??」


 アヒル座りをして、お尻をさすっているレセアを見下ろすおじさん。


『アハッ

おじさんには内緒よーん』


 姉の、テンションに合わせて無理やり笑顔をつくるレセア。


「なんだよぉー

あッ 電話だ」


 スマートフォンを、ポケットから取り出そうとするおじさんを見て、あわてて立ち上がるレセア。


『それじゃあ またね おじさん』


 大げさに、手を振ってそそくさと立ち去るレセア。


「ああ

もしもし」


 スマートフォンの、画面にはおじさんの奥さんからの着信とある。


『アンタどこほっつき歩いてるの ??』


 ちょっと、お怒りの奥さん。


「いゃあ聞いてくれよ

ワンチャイさんの娘さんを乗せて北部まで来たんだよ」


 おおまかな、説明をするおじさんだが、


『なに言ってるの

ワンチャイさんとこの一人娘は 交通事故で死んだでしょう………』


 そう、もうこの世にはいない。


「えーッ

だってちゃんと乗せたぜ………」


 周囲を、見回すおじさん。


『大丈夫かいアンタ ??』


 妙に、心配になる奥さん。


「そうだよな

そうだよもう亡くなっている」


 ずっと、おかしいとは思っていたおじさん。


『そうよ』


 同情するトーンに変わる。


「じゃあ俺は何を乗せた? ゥゥワ! はッ早く帰らなくちゃ」


その頃


「ヒュー

日が沈んだから ご飯を食べよー」


 街灯は、ほとんど無いので暗くなったら作業は中断する。

 ティファが、ヒューを呼びに来る。


「………はい」


 超イケメンだが、腕で額の汗をぬぐって泥が付くヒュー。


「あれ………

近所の子かな ??」


 食堂に、向かっているとダンプを停めてあって資材を野ざらしに置いているところに、人影を見付けるヒュー。

 よく、近所の子が遊びに来る。

 ケガを、されると困るのでいつも追い払っているのだが、


「はぁぁ

お尻が痛いッ」


 レセアは、誰もいないか周りを見て思い切り大声で痛みを訴える。


『ちょっとレセア

しゃべるなって言ってるの』


 レセアの、頭にガンガン響く姉の声。

 いつもなら手で耳をふさぐのだが、中腰でお尻を抱えるレセア。


「ごめんなさいお姉様」


 あやまることしか出来ない。


「あの~」


 変な、態勢をしているレセアを見付けるヒュー。


『はいッ!!』


 いきなり、ビシッと立って振り返るレセア。


「近所の子かな? ここはあぶないから出て行ってくれないか ??」


 そう、言うように言われているから言うヒュー。


『あっ お久しぶり!!』


 いきなり、青い石をあやしく光らせるレセア。


「えっ 誰 ??」


 全く、ピンと来ないヒュー。


『えー忘れちゃったのー』


 さらに、ジュレルを光らせる。


「知らない

見たことないよキミなんて」


 全然、反応を示さないヒュー。


「エ゛ッ!!」


 つい、ビックリしてレセアが声を出してしまう。


「あっ 今の

キミの本当の声だね」


 別の人が、声を出していると見抜くヒュー。

 なにか、違和感を感じていた。


『レセア

しゃべるなと言っているだろ!!』


 レセアの姉が、めちゃくちゃ怒っている。


「ごめんなさい………」

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