第4話

「パオ隊長」


 野営用の、大きなテントの中でパオ隊長に詰め寄るマオウー。

 テントの、外は騒がしく兵士たちが行き交っているが、テント内は2人だけだ。


「なんだね マオマオ」


 カーミットチェア風の、イスに腰掛け薄い木の板のテーブルに両ひじをついた姿勢で、ニコニコしているパオ隊長。


「決行が 今夜だと聞きました」


 テーブルに、手をついて問い詰めるマオウー。


「うむ 本国がヤバいらしい

早くこの地に我々の手で傀儡国家を樹立しなくては」


 小声で、ボソッとつぶやくパオ隊長。


「では ワタシも」


 身を、乗り出すマオウー。


「今日は ロボット兵は出さない」


 歩兵のみで、今日の作戦を実行すると言うパオ隊長。


「なぜです隊長」


 食い下がるマオウー。

 戦果を、一刻も早くあげて昇格したい。


「今日は 秘密裏に行動し 相手の監視が薄い内に寺院遺跡を落とす」


 作戦を、大まかに話すパオ隊長。

 マオウーの乗るロボットは、大きすぎて目立つ。


「でも 相手がロボットを投入してきたら ??」


 ティファの乗る、ロボットを警戒しているマオウー。


「マオマオその時はその時だよ」


その頃


「ハァハァ

み………水」


 文字通り、地面を這って戻って来たザイルピック。

 視界に、入ったヒューに手を伸ばす。


「なんで地面に寝転がっているんです ??」


 その様子を、ただボンヤリと見るヒュー。

 ザイルピックは、髪の毛がチリチリにコゲており服は、ススけて穴がところどころ開いている。


「あーっザイルピック!! どこで道草を喰ってたのよ」


 ヒューの、目線の先にザイルピックを見つけてひどい剣幕で怒鳴るエミリー。


「ヒーヒー」


 声に、ならない声を出すザイルピック。


「それに クチに咥えてるのタバコじゃあない

アンタ禁煙車をヨゴしたわね」


 さらに、まくしかけるエミリー。


「………これはスーパーカップだよ

ヒューちょっと水を持って来てくれ」


 必死に、声を絞り出すザイルピック。


「………はい」


 多少、イヤそうに返事するヒュー。


「それに 車はどうしたの? あんたまさか」


 事故をして、放置したのかと勘違いするエミリー。


「ちげーし

興産党軍の連中にミサイル攻撃を受けた」


 正直に、話すザイルピック。


「あんたなんでそれを早く言わないの!!」


 ザイルピックの、胸ぐらを掴み揺らすエミリー。


「必死に ここまで戻ったんだよぉ !?」


 少し、涙声になるザイルピック。


「はい 水」


 ヒューが、戻って来る。


「ありがとう

ってコップじゃなくてバケツ!?」


 バケツに、なみなみと入った水。


「せーのっ」


 ふりかぶるヒュー。


「待て待て待て」


 ザイルピックが、止めようとするがもう遅い。


ザバーン


「あ゛ー」


 全身、ズブ濡れになったザイルピック。


「これでイイでしょ ??」


 真顔のヒュー。


「いいわけねぇだろぉ

そう言えば 昼はカレーだったよな ??」


 大声を、出したらお腹が減ったザイルピック。


「なーに騒がしい!

ザイルピック

なんで地面に寝てるの? カレーは全部食べたわよ」


 残っていたのを、全部食べてしまったティファ。


「えーッ

もう 立ち上がれねぇわー」


 くやしそうに、地面を叩くザイルピック。


「水ってもう一杯いります ??」


 バケツを、持ち上げるヒュー。


「いらねぇよ!」

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