第3話
「ねぇ ヒュー ??」
エミリー・トンプソンが、地面に落ちている両手で抱えるほどの大きな石を持ち上げたヒューを呼び止める。
「………どうしましたか?」
植物の、根が取り除かれたところに石を乗せるヒュー。
それが、石仏だと頭部が戻ってわかる。
「なにか 爆発音がしなかった? 国境の方で ??」
攻撃を、受けたことはまだエミリーは知る由もない。
「そんなのしたかな」
あまり、興味がないヒュー。
「気のせいかもね
それにしてもザイルピックの帰りが遅いわ」
お昼までには、戻って来る予定だったのだが未だにその気配が無いと、イラつくエミリー。
「へーそうですか」
淡々と、仏像に絡まった木の根を手でちぎるヒュー。
「同じ組織のメンバーとして気にならないかしら ??」
ティファが、半ば強引にUNReという世界遺産を守る組織に、ヒューを入れた。
「………興味ないです」
最近、組織に入ったからなのかヒューはメンバーに対して、なんの感情も持てていない。
「そうなの? 元々ドライなの? それとも記憶喪失でそうなっちゃったのかしらね」
原因を、探ろうとするエミリーだが、
「正直パリのカタコンブに住んでた以前のことは 思い出せない………」
どうしても、幼少期の思い出が出て来ないヒュー。
「カタコンブって 人の骨が大量にある地下洞よね
そこにどうやってたどり着いたの ??」
現地、パリに住む人間もけっして近寄らない地下迷宮。
「………わからない
あっ !!」
首を、横に振ったヒューが顔を上げる。
「どうしたの急に ??」
珍しい、反応に少し色めき立つが、
「キャタピラの音………
ティファさんが戻って来た」
ただ、ロボットの駆動音を聞いただけの反応だ。
「あぁ そうね
また 騒がしいのが戻って来たわ」
肩を、すくめて苦笑いするエミリー。
「ヤッホー
たっだいまー」
高さ5メートルほどあるキャロルの、胸部が左右にズレて上の穴から、上半身を出して両手を振るティファ。
「………あ
おかえりですティファさん」
作業を、再開するヒュー。
「ちょっと テンション低くない~?」
華麗に、跳躍して着地したティファだがヒューの反応に、ガクリとなる。
「アンタのテンションが高すぎなのよ」
ティファに、つっこみを入れるエミリー。
「そうだっけか~」
ペロッと、舌を突き出すティファ。
「それにヒューはあなたがいないからって毎晩泣いてたわよ」
変な、笑顔でそんなことを言うエミリー。
「ホントにぃ~ ??」
胸の前で、両手を握りしめて瞳を輝かせるティファ。
「………わかりやすいウソを言わないでくださいトンプソンさん」
ボソッと、つぶやくヒュー。
「ウソか~い
ショボーン」
カックリと、肩を落とすティファ。
「お腹減ってるんじゃない ??」
ティファの肩を、ポンポンと叩くエミリー。
「お腹ペコペコだおぅ」
小悪魔みたいに笑って、ペロッと舌を出すティファ。
「ハイハイ
お昼のカレーが食堂に残ってるわよ」
親指を、食堂に向けるエミリー。
「ありがてぇー」
そう言いながら、キャロルによじ登るティファ。
「さっさと食べて 偵察に行ってちょうだいね」
手を振るエミリー。
「ハーイ」
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