第9話

「………おお ??」


 その時、ボクの魂がブーンと音をたてて揺らいだ。


「早く戻って来てよ !!」


 ティファが、涙声で懇願する。


『二人は 離れてください』


 ボクに、勝算があるわけじゃない。

 ただ、二人だけでも助けたい。


「なに言ってるの ??」


その頃


「おい 相手側のロボットに動きがあるぞ !!」


 棚田が、広がる一帯に泥だらけになりながら進んでいた興産党軍だが、キャロルを見下ろせる場所に集結している。


「スティンガー持って来い」


 そう言ったのは、先頭を進んでいた隊員だ。


「はいよ」


 その兵士に、スティンガーが手渡されると、


「よし 一発おみまいしてやるか」


 肩に担いで、構える兵士。


「ミサイルか」


 キャロルの、ディスプレイに暗視画面が表示される。

 ボクは、それを見てキャロルの上半身を左に90度回転させ、


「そこだ」


 放たれたミサイルに、キャロルの右肩にある120ミリ滑腔砲を発射。


ドゴーーン


「やったか !!」


 大爆発に、色めき立つ興産党軍。


「キャーーー」


 爆風に、飛ばされないようにジープにしがみつくティファとエミリー。


「なんだ? ミサイルを撃ち落としただと!?」


 煙が、引いてキャロルが健在だと見ると興産党軍に動揺がはしる。


『大丈夫すかティファさんエミリーさん ??』


 ボクは、二人が無事か気になったが、


「………ええ なんとか」


 吹き流しのように、風になびいていたティファも、無事のようだ。


『離れてください ケガしますよ』


 早く、逃げて欲しいんだけどな。


「ってか

なんでキャロルを使いこなせてるの ??」


 ティファは、そっちが気になっているようだ。


『知らないよ そんなこと』


 今の今まで、乗ったことないし。


「はへぇ ??」


 変な、声が出るティファ。


ドゴーン


 興産党軍の兵士が、固まっているところに砲弾を撃ち込むと、


「わぁぁぁぁぁ」


 吹き飛ばされる兵士たち。


「パオ隊長

前線部隊が散り散りになっています」


 報告する兵士。


「ウーム」


 一瞬、退却も頭をかすめるパオ隊長だが、


『ワタシが あんなへんちくりん粉砕してやるわ』


 移動が、間に合った興産党軍のロボット。


「おお

たのんだぞマオマオ」


 パオ隊長は、少女に命運を託すことにする。


『了解

ハァァアアアアア』


 ゆっくりだが、確実にキャロルに近付く興産党軍ロボットのグドカン。


「ヒュー

あんなデカブツなんて相手出来ないわ」


 目視したティファが、悲鳴をあげる。


『大丈夫ですよ』


ズドーン


 ボクは、迷わず砲弾を放つ。


「わっ

なんだ どこ狙って」


 ロックオンの、警告音が鳴り響くグドカンのコックピット。

 マオウーが、防御態勢をとろうとしたのだが、


「わーー右脚がぁーーー」


 被弾したのは、グドカンの右足。

 そのまま、前のめりに田んぼに倒れて、


ドボーン


「ぐへぇーーー」


 腰の、シートベルトに締めつけられクチから大量の出血をするマオウー。


「マオマオ !!」


 あの高さから、モロに衝撃を受けたマオウーを心配するパオ隊長。


「うわー まともにコケたけど パイロットは大丈夫か ??」


 グドカンの周りに、ゾロゾロと兵士が集まって来る。


「エ゛ア゛ァァァ

近寄るな! 這ってでもキヤツを殺す!!」


 目が、血走っているマオウー。


「おお

マオウーは無事だ」


 兵士の間に、安堵が広がる。


「我が軍に 栄光アーレー」


 マシンガンを、乱射しながら突撃して来る兵士たち。


「おいおい

やめときなって」


 ボクは、砲弾を発射しようとしたが、


カチッ


『あれっ』


 何回、押しても発射しない。

 ディスプレイには、砲弾なしの表示。


「ごめーん

3発しか砲弾入れてなかった~

テヘペロ~」


 舌を、思い切り出すティファ。


『ティファさん………』


 せっかく、あと一押しのところで。


「だってぇ~

だから もう撤退しましょ ??」


 ジープに、乗り込むティファ。


『いや やってやりますよ』


 ここで、引くわけにはいかない。


「へっ ??」


 目が、点になるティファ。


『グーパンで』

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