第23話

「今日の午後にキャラバンが このオアシスに来たじゃない ??」


 村人の、動きをつぶさにモニタリングしていたティファが、目ざとく見つける。


「ティファさん

乗せてもらう気ですか ??」


 車に、荷物をパンパンに積んでいるので一人くらいなら紛れて逃げれそうだ。

 サウジアラビアの、どの街に行くかはわからないが。


「違うの

一人だけ逃げようとは思ってないわ」


 抜け駆けを、狙っているわけじゃあないと話すティファ。

 小声で話す。


「じゃあ どうするんですか ??」


 なにがしたいのか、サッパリだよ。


「奪うのよ車を」


 ティファの目が、ギラリと光る。


「正気ですかティファさん ??」


 ウソだと、言ってくれ。


「こんなところにずっといたら本当に気がどうかしそうよ」


 だいぶ、ナーバスになっているティファ。


「ボクはもう慣れました」


 なにかの動物を、煮込んだクサいスープにも拒否反応が起きない。


「うらやましい順能力ね」


 ガクッと、肩を落とすティファ。


「ねぇ勇者さま

勇者さまとティファってどういった関係ですの? あたしは2番で全然かまわないのですけれど」


 いつの間にか、スゥトゥーパがそばにいた。


「付き合っているのよねー」


 とりつくろうように、そう言うティファ。


「ティファさん

話がこじれるからやめて下さい!」


 これ以上、ややこしくしてどうするんだよ。


「ヒューと出会ったのは ちょっと用事があってフランスのパリに行っていたの」


 最初に、会った時の話をはじめるティファ。


「それでそれで ??」


 興味津々なスゥトゥーパ。


「ちょっと油断してサイフをスられて」


 観光客は、ガードが甘くなりがちでターゲットになりやすい。


「えっ !!」


 ビックリするスゥトゥーパ。


「ボクは ちょうど裏路地で残飯をあさっていてそこにスリの犯人が走って来たからボコって」


 ティファが、捕まえてって叫んでいたからちょっとやってみた。


「うわー

なんかすごい」


 目を、輝かせるスゥトゥーパ。


「アハハ

犯人は半殺しになっちゃってその後に二人で逃げたわ」


 けっこう、ヤバい状態だった。


「う゛」


 目が、点になるスゥトゥーパ。


「それが アタシたちのなれそめなの」


 頬を、赤らめるティファ。


「なんだか すごいですね」


 感嘆の声を、あげるスゥトゥーパ。


「そうなの

だから あきらめなさい」


 腕組みして、スゥトゥーパに詰め寄るティファ。


「いやだ

あきらめない」


 にらみ返すスゥトゥーパ。


「ふーん」


 そして、砂漠に太陽が沈んで闇が押し寄せる。


「ねぇヒュー

やるわよ」


 周囲を、キョロキョロするティファ。


「本気なんですか ??」


 どうも、乗り気になれないボク。


「このチャンスを逃したら いつまでここに縛り付けられるかわからないもの」


 もう、腹をくくっている様子のティファ。


「ティファさんが そこまで言うなら仕方ないですね」


 他の、メンバーもやる気マンマンだ。


「いくわよ」


 ティファが、中腰で小走りで進みだした時、


ヒューーーン

ドガーーン


 なにかが、空を横切って地面に衝突して大爆発する。


「なんですかアレ? ティファさんの仕業ですか ??」


 これも、作戦の一環だろうか。


「ち………

違うわよ あんな爆発」


 否定するティファ。


「とりあえず行ってみましょう」


 逃げることは、そっちのけで見に行くことにするメンバー。


「ええそうね」

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