第39話. 異世界の少年、地球で夏祭りに行く。④

 「「いただきます」」


 ことりたちが購入してきた食べ物も合わせて、木製のテーブルの上に屋台で購入した食べ物や飲み物を並べる。

 ちなみに、ことりたちが購入した食べ物はフランクフルト5本に、お好み焼き3枚、唐揚げ10個、そしてフライドポテトが3箱だった。

 

 美味しそうなソーセージが串に刺さったフランクフルトはゴールデンブラウンに焼きあがり、その皮からは軽い焦げ目が見える。ジューシーで肉厚なソーセージからは、香ばしい香りが広がっている。

 薄く広がったお好み焼きの表面は円形に近い形をしており、表面には焼き目がしっかりとついている。そして、トッピングとして表面にはソースやマヨネーズが交互に網状にかけられ、上からは青のりやかつ節が振りかけられている。

 紙製のボックスに入った唐揚げは、ゴールデンブラウンに仕上がり、その表面にはサクサクとした衣が広がっている。また、唐揚げの形状はバラエティに富んでいる。

 紙製のボックスに詰められたフライドポテトは、ゴールデンブラウンの色合いが美しく、その表面には軽い塩がまぶされている。箱の蓋からは蒸気が立ち上り、熱々のポテトの香りが誘惑的に漂う。



 「それにしても、俺たちが買ったものとシンと美咲が買ったものが被らなかったのは奇跡なんじゃねえか?」


 みんなでワイワイと食べ物を食べていると、悠斗が発言する。


 「確かにね。私、被ると思ってたよー」


 美咲は飲んでいたラムネから口を一度離し、悠斗に同意する。


 「私、さきりんが買いそうな食べ物を予想していたから被らなかったんだよー」

 「そんなわけないだろ。エスパーじゃあるまいし」


 さきりんの嘘としか思えない発言に悠斗はツッコミを入れる。


 「いや、私、さきりんと一心同体だから」

 「え、ちょ?」


 ことりの発言に美咲は驚きの表情を浮かべる。


 

 「浩介くん、何飲んでるの?」


 美咲と、ことり、悠斗の会話を眺めていたが、浩介の方を見ると、なんかこの場に相応しくないようなものを飲んでいた。


 「ん?これか?」

 「うん」


 浩介は一度容器を口から離す。


 「これは、牛乳だ」

 「牛乳?なんで、ここで飲んでるの?」

 「俺は毎日、朝、昼、晩と牛乳を飲んでるからだ」

 「シン、浩介はただの筋肉バカだからこんなに牛乳を飲んでいるんだぜ」


 俺と浩介の会話を聞いた悠斗は途中に割り込んで、浩介が牛乳を飲んでいる理由を説明する。


 「おい、悠斗、誰が筋肉バカだ!?」


 悠斗の発言に不満を抱いた浩介は悠斗に少し強い口調で問う。


 そんな2人の様子を眺めていると、美咲がベンチから立ち上がる。


 「私、ちょっとトイレ行ってくるね」


 「「分かった」」


 美咲の発言を聞いて、みんな了解する。




 15分後……


 「なー、ちょっと美咲遅くないか?」


 悠斗は美咲の戻りが遅いことを感じとり、口を開く。

 

 確かに、美咲の帰りが少し遅い。女子のトイレは少し長いと聞くが、それにしても遅すぎる。なんだか、心配だなあ。

 俺も悠斗と同じようなことをちょうど考えていた。


 「お腹でも痛いんじゃないのかなあ。私、ちょっと見てくるよ」

 「頼む」


 悠斗の発言と同じようなことを考えていたことりは、美咲の様子を確認しに行くことした。




 5分後……


 美咲の様子を確認しに行ったことりは、少し焦ってる表情を浮かべながら俺たちの元へと戻ってきた。


 「ことり、どうしたんだ?」


 ことりの異変にいち早く気づいた悠斗は、ことりに優しい口調で尋ねる。


 「さ、さきりんが……トイレにいないの……」


 「「なんだって!?」


 ことりの発言を聞いた俺と悠斗は同時に同じ声をあげる。それに対して、浩介はクールな表情で冷静さを保っている。


 「どうするんだ?どうするんだ?」


 悠斗も焦り始める。


 「おい、悠斗、一回冷静になれ。まずは、美咲に電話しろ」

 「わ……分かった」


 冷静な浩介から言われ、悠斗はポケットからスマホを取り出し、美咲の連絡先を開く。


 しかし……


 「ダメだ、浩介。圏外だ」

 「そうか。おそらく、人が多すぎるのと、神社の敷地内だから電波が繋がらないだろう」

 「どうするんだ?圏外じゃ、美咲と連絡取れないし」

 「仕方ない。手分けして探そう」

 「ああ」

 「うん」

 

 悠斗と俺は浩介の提案に賛成する。


 「それじゃあ、1時間後にここに集合だ。見つけられなくてもな」


 「「分かった」」


 俺と悠斗は同時に理解して、互いに反対方向を探し始める。



 「ことりはどうするんだ?ここに残って待ってるか?」


 俺と悠斗がいなくなって、浩介は少し心配する口調でことりに声をかける。


 「いや、私もさきりんを探す」


 下を見ていたことりは上を向いて浩介の目を見ながら、意思を示す。


 「そうか。じゃあ、1時間後にここに集合な」

 「分かった」


 ことりも浩介の提案に賛成し、美咲のことを探し始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る