第6話. 異世界の少年、地球でお泊まりをする。③
「どうしたの?」
俺は美咲に静かな口調で尋ねる。
「あのね……なんか全然眠れないの。だから、眠くなるまで少しシンくんとお話ししたいなって思ったんだけど、だめかな??」
紺色のクルーネックTシャツを着こなし、紺色と茶色のチェック柄のズボンを履いてる美咲は唇を少しプルプルさせながら俺の質問に答える。
なんだこれは……可愛すぎるでしょ。美咲の寝間着姿と少し緊張している姿がマッチしてとても尊い。
俺はそう密かに思っていた。
「そうなんだ。実は……俺も全然眠れないんだ」
「シンくんもそうなの?」
美咲は少し驚きの表情を浮かべる。
「実はさ、俺今まで女子の部屋に上がったことなかったんだ。ましてや、一緒に同じ天井を見上げながら寝るなんてね」
「そうなんだね。実はね、私も初めてなんだよね、男の子と一緒に同じ部屋で寝るの」
「そうなんだ。美咲は明るくて話しやすい子だからてっきり彼氏とかいて、既に彼氏と一緒にお泊まりしたことがあるかと思ってた」
「そんなことないよ。そもそも私、今まで彼氏ができたことないよ」
「え、そうなの!?」
「うん。学校ではかなりの男子に告られたことがあるけど、全部お断りしてるんだよね」
「え、なんで??告白してきた男子のことが好きじゃなかったから?」
美咲のルックスや華奢な体つきからして、多くの男子に美咲が人気であることは納得がいくが、美咲が一度も告白をオッケーしたことがないことに俺は疑問を持ち美咲に尋ねる。すると、美咲はカラッとした言い方で答える。
「そういう理由もあるけど……」
「けど?」
「……私、恋愛とか恋とかよく分からないから……」
「逆に、シンくんは恋とかしたことあるの?」
「俺もないよ。だって、好きな人できたことないから」
「そうなんだね」
「あ、でも、少し気になっている子はいるけどね」
「え!?シンくん、気になっている子はいるの?どういう子なの?」
「俺が住んでいる国・エルデン国の王女様で、ソフィアっていう子なんだ。ソフィアは、明るくて元気で何事にも前向きな子なんだ。好きなものはとことん好きで、それに夢中になってる姿が可愛んだよね」
「なるほどね。っていうか、シンくん、ソフィアのこと楽しく語ってるし、ソフィアっていう好きな子ちゃんといるじゃん」
「いや、ただ気になっているだけで好きではないよ」
俺はきっぱりと否定するが、美咲は納得してくれなさそうだ。寧ろ、微笑が口角に浮かび、美咲は楽しんでいる様子だった。
時々、俺は思うことがある。それは……
「好き」と「気になる」の違いは何だろうか、と。
「でも、シンくんの耳赤くなってるよ」
「いや、なってない」
俺は今感じてる羞恥心を顔には出さないように努力していたが、美咲が言うなら俺の耳は今赤くなっているのだろう。
それでも、俺は美咲に羞恥心を隠すために先程より少し強い口調で否定する。すると、美咲は「なんか、可愛い」と言ってくるものなので、気になっている子が俺にいることを美咲に教えるべきでは無かったと少し後悔する。
「ごめんね。そんなに怒らないで。それで、シンくんはソフィアのこといつから好……いや、気になっているの?」
美咲から今「好き」という言葉が聞こえそうになったが、訂正してくれたので俺は美咲の質問に答えてあげる。
「分からない。でもまず、俺がソフィアに出会ったのはある事件がきっかけなんだ。それは––––––––––」
俺と美咲は再びベッドや布団に入り、一緒に同じ天井を見上げながら俺が美咲にソフィアとの出会いについて語っている間、美咲は時折「うん」と呟きながら最後まで話を聞いてくれる。
「そうだったんだね。それにしてもシンくん、ソフィアのことめっちゃ好きだね」
「そんなことないよ。それに好きではないってば。ただ、少し気になっているだけであって」
まだ美咲は俺がソフィアのことを異性として好いてると勘違いしているので、もう一度俺は否定する。
これは決して「好き」という感情ではない。多分……俺は、ソフィアという一人の少女の生き方にただ惹かれているだけかもしれない。
俺はそう頭の中で考え、自分に言い聞かせる。
ソフィアについての話が終わると、美咲は枕元にあったスマートフォンというもので現在時刻を確認し、俺に一つ提案してくる。
「もう日付が変わってるから、そろそろ寝る?シンくんのおかげで少し眠くなってきたし」
「そうだね。そろそろ寝ようか」
「うん」
「じゃあ、おやすみ」
俺が美咲から「おやすみ」という言葉を聞き、
美咲と長話していたらいつの間にか体の緊張が解れ、俺は今なら眠れそうな感じがした。
そして予想通り、数秒後には俺は深い眠りについていた。
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