第17話. 異世界の少年、地球でお泊まり会に参加する。①

 金曜日。お泊まり会当日。



 「シンくん、そろそろ着くみたいだよ。ことりたちから連絡もらったから」

 「……う、うん……」


 すぅー、はあー。

 俺は深呼吸を一度する。


 「シンくん、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」

 「……うん」


 美咲は少し心配した表情で俺に言葉をかける。

 美咲の友達を待っている間、俺は落ち着きがなく、リビングで1人そわそわとしていた。対して、美咲はキッチンで料理をしていた。美味しそうな匂いが俺の鼻をくすぐる。


 美咲の家では、リビングからキッチンの姿が見え、キッチンからリビング全体を見渡せる構造になっている。しかし、キッチンで何を作っているかまでは分からない。



 ピンポン。


 家の中にインターフォンの音が鳴り響く。

 キッチンにいた美咲は「はーい」と言いながら玄関へと向かう。続いて、俺も美咲の後ろをつく。


 

 「いらっしゃい」


 美咲は玄関のドアを開けると、友達を快く迎え入れる。


 「お邪魔しまーす」


 可愛らしい声を出しながら一番最初に顔を出したのは、レッドブラウンの髪でツインテールをし、甘いふわふわとした香りがする小柄な少女だった。俺は、此間こないだ美咲と一緒にショッピングモールに出かけた時に一度この少女に会っている。

 その少女とは……桜井ことり。今日ことりが身にまとっているスカートは、柔らかな質感であり、ことりの動きに合わせて優雅に揺れていた。

 

 「美咲、お邪魔するぞ」


 少し低い声を出しながら次に顔を出したのは、黒いショートの髪型で整った容姿と黒い瞳を持つかっこいい少年だった。その髪はこぎれいに整えられ、軽く手を通すだけでまとまりがあり、顔を引き立てていた。身体は引き締まり、黒いショートのシンプルな服装が彼のスタイルをより際立たせていた。


 「お邪魔します」


 丁寧な挨拶をしながら最後に顔を出したのは、茶色の髪をやや長めに伸ばし、深い瞳を持つ少年だった。ストレートな髪型が彼のクールで洗練された印象を際立てていた。髪の先には自然な動きがあり、玄関のドアを閉めた際に生じた風で揺れていた。整った容姿は引き締まり、洗練された服装が青年のスタイルをより一層引き立てていた。クールな雰囲気が周囲を引き込み、少年の存在はどこか謎めいていた。



 「そういえば、さきりん、これ」

 「これは?」


 ことりは手に持っていた紙袋を美咲に渡す。


 「クッキーだよ。私が作ったの」

 「ことりの手作りクッキー美味しんだよね。ありがとう」

 「ありがと。でも、さきりんには敵わないよー」

 「そうかな??」


 美咲は少し首を横に傾げるものの、少し嬉しそうな表情を浮かべる。


 「そういえば、さきりんってシンくんと一緒に住んでるの?」

 「そうだよ。シンくんが日本にいる間はね」

 「えー。私もさきりんと一緒に住みたい!」

 「それは、無理だよ」

 「えー」


 美咲に断わられて、ことりは少ししょんぼりと肩を落とす。そしてことりが俺の方を向くと、少し羨ましそうな目つきをしている。

 どんな顔をすれば正解なんだ、これ。

 俺はどんな表情を浮かべれば良いのか悩んでいた。


 「もうことり、シンくんが困ってるじゃない」


 美咲は腰に手を置きながらことりを優しい口調で少し注意する。

 そして、美咲に言われたことりは視線を俺から外す。


 「それじゃあ、みんな夕飯にしよっか。色々と作ったから」


 美咲は「パン!」と手を一度叩き、改めてことりたちを迎え入れる。


 


 「みんな、座って少し待ってて。少し温めてから持ってくから」


 手洗いを済ませたみんながリビングに入ってくると、キッチンにいる美咲はみんなをダイニングテーブルへと誘導させる。


 「私、手伝うよ」

 「ありがとう。じゃあ、料理を少し運んでもらおうかな」


 美咲はことりの申し出を受け入れ、ことりに手伝ってもらうことにした。


 ことりは次々と美味しそうな匂いがする初めて見る料理をダイニングテーブルへと運んでくる。


 全ての料理をテーブルに並べ終え、美咲は着ていたエプロンを外し、俺と対面した席につく。

 ちなみに、ダイニングテーブルは4人分の大きさだったため、俺の右隣には黒髪の少年、美咲の左隣にはことりが座っている。そして、ことりと黒髪の少年の方のテーブルの横側に茶髪の少年が座っている。



 席についた美咲は口を開けて言葉を発する。


 「それじゃあ、食べる前に山本やまもとくんと桐嶋きりしまくん、シンくんに自己紹介しよっか」

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