第16話. 異世界の少年、地球でスマホデビューする。

 美咲に俺の過去を話してから4日間、美咲が学校に行っている間、俺は魔導書を読み漁っていた。



 土曜日。時刻は13時30頃。


 昼食のチャーハンを食べ終えてから1時間ほど経過した今、俺と美咲はそれぞれ違うことをしていた。



 ピンポーン


 俺は魔導書を着々と読み進め、美咲は1冊の小説を読み進めていると、インターフォンの音がリビングに鳴り響いた。

 美咲は読んでいた小説を中断させ、玄関へと向かう。



 「シンくん、届いたよ」

 

 美咲が何か茶色の小型の箱を持ちながら、俺の方に向かってくる。


 「……何が?」


 俺は美咲の発言に首を少し横に傾ける。


 「だよ、シンくんの」

 「スマホ?」

 「うん」

 「実は、お父さんに頼んでおいたんだよね。ほら、シンくん、スマホ持ってないじゃん。こっちの世界で暫く暮らすにはスマホがあった方が便利だからね」

 「まあ、異世界にスマホなんてないからね」


 俺は軽口を叩く。


 「そこで、お父さんにシンくんがスマホ持ってないことを伝えたら、お父さんがシンくんのスマホ用意してくれたんだよね」

 「そうだったんだ……色々とありがとう」


 俺は感謝の言葉を口にする。


 美咲は茶色の小型の箱からさらに小さな白色の箱と手紙を1枚を取り出す。

 美咲は差出人がお父さんからであろう手紙に目を通す。

 数分後、手紙を読み終えた美咲は小さな白色の箱の蓋を明け、スマホを取り出す。

 そのスマホは美咲が持っているスマホと色が少し違い、青色が少し混ざった黒色をしていた。あとは美咲のスマホと同じように正面には大きなスクリーンディスプレイがあり、背面の左上には斜めにレンズが2つ付いている。


 「シンくん、どうぞ。なんか、お父さんが色々と既にセットアップしてくれたらしい」


 美咲は取り出したスマホを俺に手渡しする。


 「ありがとう」


 俺は再び感謝する。


 美咲からスマホを受け取った俺は、側面に付いているボタンを軽く押す。

 

 「お、ついた」


 俺は一言呟く。

 本当にありがたいな。まだ出会って1週間の俺にこんなことまでしてもらっても良いのかな?

 俺は内心で感謝と遠慮の両方の感情を抱いていた。


 「シンくん、じゃあPINE交換しよ」

 「PINE?」

 「うん」


 初めて聞いた言葉に俺は口をポカンと開ける。


 「これだよ」


 美咲は自分のスマホに表示された画面を俺に見せてきた。

 

 「とりあえず、シンくん、一緒にセットアップしようか。初期設定などはお父さんが既にしてくれてるけど、そのあとは何もしてないみたいだから」

 「うん。頼む」


 

 俺は美咲に手伝ってもらいながらPINEというアプリをインストールし始める。

 なんて不思議なものなんだ、スマホというものは。

 俺はインストールが完了する30秒ほどの間、スマホというものに改めて関心していた。


 インストールが完了し、俺はPINEと書かれた黄緑色のアイコンをタップする。

 すると、画面に「ログイン or 新規登録」と表示される。


 「シンくん、新規登録って書いてある方をタップしてみて」

 「こ、これか」


 美咲に言われ、俺は「ログイン」と書かれた方ではなく、「新規登録」と書いてある文字を優しく人差し指でタップする。

 すると、「Goobleで続行」「メールアドレスで続行」「電話番号で続行」と縦に並んで表示された画面に切り替わる。


 「じゃあ、電話番号で続行をタップして」

 「うん」


 画面には「電話番号を入力してください」と表示される。

 俺は美咲に言われた番号を一つずつ○○○××××△△△△と入力する。

 すげーな。数字をタップするだけで画面に反映されるし。


 そして画面には「認証コードをお送りしました」という表示に切り替わる。



 ピロン!


 「うわ!」


 俺の体が一瞬中に浮く。

 ビビった……

 突如スマホから音が鳴り、少し振動したことによって、俺は驚く。

 隣で美咲は俺の驚き方にクスッと笑っている。


 「シンくん、そんなに驚くことないよ」

 「そ、そうだな」


 俺は少し恥ずかしさを覚えながら、微笑みを浮かべる。


 「それじゃ、今きた通知に書いてある4桁の数字を入力してみて」

 「うん」


 通知に書かれている数字を確認して、俺は表示されている画面に4・1・8・6と入力する。

 すると再び画面が切り替わり、画面の下には横一列に「ホーム」「チャット」「ニュース」「ウォレット」と表示され、画面の中央には「友達を追加して、チャットを始めましょう」と表示されている。


 「シンくん、これでできたよ」

 「そうなの?」

 「うん。それじゃあ、私とPINE交換しようか」

 「うん。けど、どうやるの?」

 「えっと、ここをこうして––––––––––」

 



 「美咲、ありがとね」

 

 美咲とPINE交換を終え、俺は美咲に感謝の言葉を口にする。


 「どういたしまして。それじゃあ、試しにチャット送ってみる?」

 「う、うん」


 俺は美咲の提案に頷く。


 俺は先ほど美咲に説明されたやり方通りに「チャット」を開き、俺は「みさき」と書かれたチャットをタップする。そして、「ありがとう」と入力して美咲に送信する。

 スマホって面白い。


 俺からメッセージを受け取った美咲は少し嬉しそうな笑みを浮かべ、「どういたしまして」と俺に返信する。




 あれから俺は美咲にスマホの他の機能について色々と教えられた。まだ操作にあまり慣れてはいないが、何となく使い方を理解した。


 夕飯として美咲と一緒にピザという食べ物を食べている時だった。


 「そういえばシンくん、来週の金曜日に私、友達と私の家でお泊まり会するんだけど良いかな?先週会ったことりもいるけど……」

 「うん、分かった。良いよ」


 俺は迷わず即答する。


 「俺も美咲の友達と会ってみたいし」

 「そっか。分かった。男の子もいるから仲良くなれると良いね」

 「うん」




 毎日、俺は転移魔法について書かれた魔導書を読み漁っていると、あっという間にお泊まり会当日を迎えた。

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