第0話.
シンは決心した。
なぜなら、異世界から来た彼はこの世界の学校で新たな青春を送ることを決めたからだ。
しかし、この時の彼はまだ知らない。この世界で彼が新たに送るドタバタ青春劇を。
◆ ◆ ◆
「いただきます」
俺は手を合わせてから食べ物に感謝して、箸を手にする。
今日の朝食は鮮やかなオレンジに焼き上がった鮭の塩焼きに、プルプルとした玉子焼き、赤味噌の濃厚な香りが鼻腔をくすぐるわかめの味噌汁、そして白米である。
まず、俺は美咲が作ってくれたわかめの味噌汁を軽く啜り、素直に感想を伝える。
「いつ食べても美咲の料理は美味しいね」
「……うん。ありがとう。それとシンくん、毎食褒めてくれるのは嬉しいけど、別に毎食しなくても良いからね?」
「なんで?」
「なんでって……毎回褒められると流石に恥ずかしいから」
美咲は一度下を見ながら少し小さな声で答える。
俺が美咲の顔を覗くと、美咲の頬が少し赤くなっているのが見受けられた。
可愛いな、おい。
次に俺は大好物の玉子焼きを一口サイズに箸で上手に切り、口へ運ぶ。
美咲が作る玉子焼き、毎回食べる度に丁度良い甘さが口の中に広がって美味いんだよな。
俺は心の中で美咲の手料理を褒め、幸福に染まっていた。
「シンくん、今日から学校だけど大丈夫そう?」
朝食を食べ進めていると、美咲は心配そうに尋ねる。
「うん。少し緊張するけど、緊張より楽しみの方が大きいかな」
「そうなんだね。早く日本の学校に慣れると良いね。あ、それと、同じクラスになれると良いね」
「そうだね。美咲と同じクラスになると安心できるかも」
俺は心の中で美咲と同じクラスになれることを祈りながら、残りの朝食を食べ進める。食べ進むうちに空腹は満ち、最後の一口を口に運ぶと、満足感が広がる。
時刻は7時30分。
「シンくん、準備できたー?」
「うん。今行くー」
俺は自分の部屋で
初めてこの世界の制服を着たが、俺が通っていた学園の制服よりも着心地が良い。
新しいシャツの生地が俺の肌に心地良く寄り添っている。そしてボタンを留める瞬間、ややきつめの袖が手首を包み込む。
俺は教科書などが入ったスクールバッグを片手に持つと、玄関へと向かった。
俺が玄関で靴を履いていると二階から制服を着こなした美咲が階段を降りてきた。
「忘れ物ない?」
美咲に言われて、俺はもう一度スクールバッグの中を確認する。
教科書よし。筆箱よし。
「大丈夫だと思う」
「分かった。それじゃあ、行こうか」
「うん」
美咲が靴を履き終えると、俺と美咲は玄関の扉を開け、駅へと歩き始めた。
今日はこの世界において、俺の初登校日である。
まさか、この世界の学校に通うとは思ってもいなかったなあ。とりあえず……
元の世界に帰れるまでは、この世界での日々を楽しむとするか。
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