序章. 逆・異世界へ
第1話. 異世界の少年、逆・異世界へ転移する。
空は淡い青に染まりつつあり、夜明けの余韻がまだ残っている。太陽は低く輝き、空には薄い雲が優雅に広がっている。そして、空気は新鮮でまだ冷んやりとしている。
そんな空の下で今日も俺は、左右に風情ある建物を見ながら深い赤褐色に輝いた大きな道を歩いていた。
「やあ、シン」
レオナ魔法学園への通学路を歩いていると、俺は誰かに肩を軽く叩かれた。
後ろを振り向くと、そこには俺の親友・レイが立っていた。
「おはよう、レイ」
俺はレイに挨拶をする。
そして、俺はレイと一緒に肩を並べながら再び歩き始める。
「そういえば、今日の授業で模擬戦をやるらしいよ」
「そうなんだ。って、なんで知ってるの?」
俺は唐突なレイの発言に疑問を抱き、レイに尋ねる。
「いや、ただの勘だよ」
「なんだよ……またレイの勘かよ」
俺は淡々とした口調で言い返す。
一瞬俺はレイの発言を信じてしまったが、勘だと聞いて「この野郎!」と心の中で呟いた。なんせ、レイの勘は今まで一度も当たったことがなかったからだ。
レオナ魔法学園。それは15歳から入学できるエルデン王国の中で一番大きい魔法学園であり、入学試験に受かれば誰でも入学することができる。設備も充実しており、数々の有名な魔法使いを世に排出している。
クラスは、生徒の実力次第で上から順にアルファ、ベータ、ガンマクラスに区分されている。しかし、貴族の生徒は実力関係なくアルファもしくはベータクラスに所属している。一方で、貴族の生徒たちよりも実力があったとしても「平民」という理由だけで、平民の生徒たちは底辺のガンマクラスに所属している。簡潔にいえば、レオナ魔法学園では貴族の生徒たちによる平民の生徒たちへの差別が存在している。
俺とレイがアルファクラスの教室に入ると、既に登校していた生徒たちの視線が一斉に俺たちに向けられ、中には睨んでいる人もいれば、隣の友達とヒソヒソ話している人も見受けられる。
「おい!平民出身のシン・ブラッドフィスト、なぜお前は平民の分際でこのアルファクラスにいるんだ!?それに、レイ・シルバーリーフもなぜブラッドフィストと一緒にいるんだ!?貴族であるなら分かってるだろ?!?」
ギデオン・ミッドデイスターは彼の仲間2人と共に俺とレイの前に不服そうな顔をしてやってきた。そして、俺が言葉を口にしようとしたところ、アルファクラス担当のレイナ先生が教室へ入ってきた。
「みなさん、席についてください。授業を始めます」
先生が言葉を口にすると、ギデオンは「チッ」と舌打ちをして仲間と共に自分の席へ戻っていく。
「今日の授業では模擬戦を行います」
先生の言葉を聞き、俺は隣に座るレイの方へ向くと、レイは嬉しそうに親指を立てていた。
「言ったでしょ?今日は模擬戦だって」
「初めて当たったな、レイの勘」
そうして、俺たちはレイナ先生の授業を受けるのだった。
一限目のレイナ先生による魔法の仕組みについての授業を終えると、俺とレイは次の授業の模擬戦のために闘技場を訪れていた。
「では、みなさん、今から模擬戦を行います。ルールは先ほど説明した通り、相手が戦闘不能もしくは時間切れになるまで続行します。そして、魔法は5級レベルまでの使用を認めます。では、まずシン・ブラッドフィストとギデオン・ミッドデイスター中央へ」
「行ってくるよ、レイ」
「うん、頑張って!」
正直、俺自身ギデオンとは模擬戦をしたくない。しかし、一限目が終わった後に模擬戦の組み分けがくじ引きで行われ、運悪く対戦相手がギデオンになってしまった。
俺は余計な騒ぎや噂を流されるのを避けたい気持ちで胸がいっぱいだった。だから最初はギデオンと互角の戦いを続け、ある程度時間が経過したらわざと負けるつもりだ。
そんな考えを胸に秘めつつ、俺は闘技場の中央に向かって進んで行く。
「ここできっちりと決着をつけるぞ、平民」
「そうか、分かった」
ギデオンは俺を挑発しようとするが、俺は彼の挑発にはのらず気怠く返事をする。
「では、はじめ!」
レイナ先生の合図とともに俺たちの模擬戦が開始される。
開始直後ギデオンは、いきなり10段階に分かれる魔法の中でも上級に達する4級レベルの魔法を放ってきた。しかし、俺は簡単にギデオンの攻撃を防いでしまった。俺自身、上級を超える神級の9級レベルの魔法まで扱うことができるため、ギデオンの攻撃を簡単に防ぐことができる。
俺は面倒なことに巻き込まれたくないため、今までエルデン国王以外の誰にも神級の魔法を見せたことがない。そもそも俺の家はお金がそこまでなく、レオナ魔法学園へ通う学費すらない。しかし、俺はある事件をきっかけにエルデン国王と関わることになり、特待生としてレオナ魔法学園に編入してアルファクラスに所属することになったのだ。
「《
ギデオンは、先ほどの魔法より一段階上の上級に達する5級レベルの魔法を使用してきた。しかし、俺はその魔法も簡単に防ぐことに成功する。するとギデオンは怒り狂い、《火の嵐》と同じ上級に達するが一段階上の6級レベルの魔法を放とうとしていた。
「平民無勢が俺を舐めるな!!」
「《
「やめなさい!6級レベルの魔法を使うのは禁止なはずよ」
レイナ先生がギデオンに注意し、止めに掛かろうとしていた。しかし、ギデオンは先生の注意を無視し、ただ俺に勝つことだけを考えて《炎の牢獄》を俺に向けて放った。俺は仕方なく、超級の7級レベルの防御魔法で防ぐことにする。
俺は《炎の牢獄》を無事防ぐことに成功し、ギデオンの方へ向くと、彼はなんだか苦しそうにもがいていた。その数秒後、ギデオンの身体からは大量の魔力が放出され始める。
「みなさん、今すぐ闘技場の外へ避難を!魔力暴走です!」
レイナ先生はギデオンが魔力暴走していることに直ぐ気づくと、生徒たちを闘技場の外へと避難させていた。しかし避難は間に合わず、ギデオンの身体から強烈な光が放射され、瞬く間に俺の視界は真っ白に染まってしまった。
俺が目を覚ますと、俺の視界には川や見慣れない建物などが映っていた。そして俺は一人で呟いたのだった。
「ここは、どこだ?」
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