第37話. 異世界の少年、地球で夏祭りに行く。②
じゅわー。
「いらっしゃい、いらっしゃい」
カラン、カラン。
「おめでとうございます。2等です」
鳥居を潜って
周りの人も浴衣を着ている人が多い。
「いらっしゃい、いらっしゃい。おっと、そこの嬢ちゃんたち、金魚すくいやってかないかい?」
周りの屋台を見ながら歩いていると、ある屋台の50代ぐらいの男性店主が俺たちに声をかける。
「どうする?」
先頭でことりと一緒に歩いていた美咲は後ろを振り向き、俺たちの返事を待つ。
「せっかくだし、やって行こうぜ」
「そうだな」
悠斗が賛成の意思を見せると、浩介も続いて賛成する。
「シンくんは?」
「じゃ、じゃあ、やってみようかな」
「分かった」
俺は流れ的に「はい」と答える。
そもそも俺は、金魚すくいというもの自体知らない。
「1回いくらですか?」
俺たちの返事を聞いた美咲は男性店主に尋ねる。
「200円だよ」
店主は笑顔で答える。
「じゃあ、5人分お願いします」
「まいどお」
俺たちはそれぞれ200円ずつ店主に渡して、水が少し入った小さなカップと円形の紙が貼ってある物体を店主から貰う。
「よーし、とるぞ。なー、浩介。勝負しようぜ」
悠斗は袖を捲ってやる気満々の様子で、浩介に勝負を持ちかける。
「どんな勝負だ?」
「どっちが多くすくえるかだ」
「別に俺は構わない」
「じゃあ、負けた方は勝った方に何か奢るっていう感じで」
「分かった」
両者の合意を確認した悠斗と浩介は水にぽいを入れる。
30秒後……
「俺の勝ちだな」
「く……くっそー」
悠斗は悔しい表情を浮かべている。
結果は3:8で浩介の圧勝だった。
「桐嶋くん、すごーい」
悠斗と浩介の勝負の行方を見ていた美咲は、浩介を称賛する。
「さきりん、私たちもやろ」
「そうだね」
ことりの誘いもあって、美咲はぽいを水面に近づける。
さっき悠斗と浩介の勝負を見ていた時に、美咲から金魚すくいのやり方を教えてもらった俺も片手にカップを持って、ぽいを水面に近づける。
美咲曰く、金魚すくいのコツはできるだけぽいに貼ってある紙を水の中に長い時間入れないことだそうだ。
「シン、あれを狙ってみろ」
既に金魚すくいを終えた悠斗と浩介が側で俺の金魚すくいを見ていると、悠斗は水の中にいる1匹の金魚を指差す。
俺は悠斗に言われた金魚の近くでぽいとカップを構え、タイミング良くぽいを水中に入れる。
狙った金魚は無事ぽいの上に乗るが、金魚がぽいの上で暴れて、ぽいに貼られている紙が今にも破けそうだ。
それでも、なんとか俺はカップの中に金魚を入れることに成功する。
「やったな、シン」
側で見ていた悠斗は俺を褒める。
「じゃあ、次いってみるか」
「うん」
俺はもう1匹すくおうと試みるが、ぽいを水中に入れた刹那、紙が破けてしまった。
俺は破けたぽいとカップを男性店主に渡すと、店主は1匹の金を水が入ったビニール袋に入れて俺に渡す。
「さきりん、上手っ」
俺が右隣を見ると、美咲はまだ金魚すくいをやっていた。ことりは美咲が金魚すくいしている姿をずっと眺めている。どうやら、ことりは既にぽいに貼ってある紙を破ってしまったらしい。
「えい!」
美咲は次々と金魚をすくっていく。
丁度8匹すくいあげると、美咲が使っていたぽいは限界に達し、紙が破ける。
「おっしー。あと1匹すくっていれば、幸助に勝っていたのにね」
「そうだね」
美咲はカップに入った8匹の金魚のうち、6匹を水の中に戻し、残り2匹になったカップと使い終えたぽいを男性店主に渡す。
「ありがとう」
店主から2匹の金魚が入ったビニール袋を受けとると、美咲は店主に感謝の言葉を伝える。
「また、きてな」
「うん。ありがとう」
男性店主の言葉を聞いて、俺たちは金魚すくいの屋台をあとにする。
「次はどこ行こっか?」
浴衣姿に美咲はみんなに楽しんでる笑顔で尋ねる。
「私、お腹空いたから何か食べたかも」
美咲の質問に対して一番最初に答えたのはことりだった。
「そうだな。俺も腹減ったぜ」
「私もお腹空いたから何か食べたいかも」
「良いんじゃないか」
「そうだね。何か食べよう」
俺も一番最後に賛成するが、食べると言っても何が売っているか分からない。
「それじゃあ、私とシンくん、ことりと山本くんと桐嶋くんの2グループに分かれて、それぞれ適当に買ってみんなで食べよっか」
「「おっけー」」
美咲の提案に俺たちは賛成し、その場で2グループに分かれた。
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