第21話. 異世界の少年、地球でお泊まり会に参加する。⑤

 「お風呂どうぞー」


 俺は20分ほどでお風呂を済まし、髪をドライヤーで乾かしてリビングへと戻る。


 美咲にドライヤーというのを紹介されて、初めてドライヤーを使った時は、正直怖かった。スイッチを入れる際に吹出口を自分の顔に向けていたことから、スイッチを入れた際にいきなり顔面に強くて熱い風が直撃し、顔が火傷するのではないかと思った。美咲に改めて使い方を聞くと、正しく使いこなせるようになり、今では毎日風呂上がりにドライヤーを使っている。

 思えば、あっちの世界にいた時は毎日風呂なんて入ることなんてなかったなあ……



 「それじゃあ、ことり、私たちもお風呂に入ろっか」

 「うん」


 美咲たちはみんなで様々なボタンが付いている何かを手に持ちながらテレビと向き合っていたが、美咲とことりは手からその謎の物体を手離す。


 「じゃあ、山本くん、私たちお風呂入ってくるからシンくんとやってて」

 「おう」


 悠斗の返事を聞いてことりと美咲はソファから立ち上がりリビングから出て行く。

 そして、俺は美咲と入れ替わって悠斗の隣に腰を下ろす。


 「シンもやるか?」


 美咲とことりが居なくなると、悠斗は俺を何かに誘う。けど、俺は何に誘っているのか分からなかったため、首を横に少し傾げる。


 「何を?」

 「これだよ、だよ。俺家から持ってきたからさ、俺たちと一緒にやろうぜ」

 「げ・え・む?」

 「そうだ。ゲームだ」

 

 悠斗は先ほど美咲たちも手にしていた謎の物体を手に持ちながら、俺の質問に答える。

 けど、俺は分からなかった。悠斗は俺を何かに誘ってくれているのは分かるが、その「何か」が分からなかった。

 そこで俺はもう一度悠斗に尋ねる。


 「げ・え・むって何?」

 「シン、もしかしてゲーム知らないのか?」

 「うん」


 悠斗は「マジか」ってな感じの表情を浮かべる。


 「ゲームって言うのはアレだ。このコントローラーというのを使ってテレビでプレイする遊びだ」

 「……」


 悠斗が親切に教えてくれるのは有難いが、いまいちイメージが湧かない。


 「悠斗、お前の説明じゃ分からないだろ」

 「そんなことないぞ。そうだろ、シン?」


 悠斗は俺に賛同を求めるように尋ねる。


 「……」


 俺は何も言葉が出ない。


 「マジか……」


 悠斗は少し残念そうな表情を浮かべる。


 「……ごめん。でも、説明してくれてありがとう」


 俺は悠斗に謝ると同時に感謝の言葉も伝える。


 「悠斗、そんなに気を悪くするな。お前は少し不器用なだけだ」


 浩介も励ましの言葉を少しだけクールな口調から優しい口調に変えて伝える。

 

 「……浩介、ありがとな。シンも」

 「俺は礼を言われるようなことは別に何もしてない」

 

 俺は二人の様子を静かに眺める。そして思った。

 二人とも仲が良いんだな。


 

 「シン、悠斗に代わって俺がゲームについて少し教えてやろう」

 「うん」

 「ゲームといってもまず、テレビゲームや、ボードゲーム、カードゲームみたいに様々な種類があるんだ。今俺たちがやってたのはテレビゲームと呼ばれてるやつで、テレビゲームはこの様々なボタンが付いたコントローラーというのを使ってテレビで遊ぶゲーム。テレビゲームには、シューティングゲームや、パズルゲームなどといった様々なジャンルのゲームが存在するが、俺たちがさっきやっていたのは対戦アクションゲームと呼ばれるゲームだ。コントローラーに付いてるボタンやスティックを使ってキャラクターを動かし、プレイヤー同士で戦うゲームだ」

 「う……うん」

 「まあ、シンもやってみれば分かる」


 思ったよりも浩介は詳しく熱く説明してくれたが、情報量が少し多かった。

 とりあえず、テレビでコントローラーというのを利用してプレイヤー同士が戦うゲームということか。

 俺は内心で何となく自分なりにまとめる。


 「それじゃあ、シンもやるか」


 元気を取り戻した悠斗は再び俺をゲームに誘う。


 「うん。やってみようかな」


 俺は悠斗に誘いに乗り、悠斗から一台の青色のコントローラーを受け取る。 


 そのコントローラーは軽くて、表面はしばしば滑りにくく、そして何より握り心地がとても良かった。


 「シン、テレビを見な」

 「うん」


 俺は悠斗に言われ視線をコントローラーからテレビへと移す。

 テレビ画面上には、カラフルで多彩なキャラクターたちが映し出されている。


 「シン、こういう風に自分が使いたいキャラクターを選ぶんだ」


 悠斗はコントローラーを使いながら俺にキャラクターの選び方を教える。


 「選ぶって言われても、どれが良いの?」


 俺はどのキャラクターを選べば良いのか分からなかった。それは画面上に映し出されたキャラクターは30種類以上あり、どれが良いのか俺には分からないからだ。


 「そうだな。それだったら俺がおすすめキャラを教えてあげようか?」

 「うん。お願い」


 俺は悠斗にキャラクター選択を委ねる。


 「このキャラでどうだ?操作もそこまで難しくないし」


 悠斗が選んでくれたキャラクターは、丸くてピンク色のふわふわした体をしており、大きな目が印象的だ。そのキャラクターには手足が無く、顔には少し悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。



 「浩介、一回チーム戦でやろうぜ。チームは俺とシン。対して浩介は一人で」

 「構わない」


 悠斗の提案を浩介は難なく受け入れる。


 「シン、操作方法はプレイしながら教えるから」

 「う……うん」

 「それじゃあ、シン、勝つぞ!」

 「うん」


 そして、悠斗は「試合開始」ボタンを押した。



 GAME START!






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《お知らせ》(1/13/24)

明日1/14/24より18時頃と21時頃に更新し、1日計2エピソードずつの更新になります。よろしくお願いします。

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