第2話. 異世界の少年、逆・異世界人に出会う。
「ここは、どこだ?」
俺はそんな言葉をポツリと呟きながら周り一面を見渡してみる。
空は爽やかな青色に輝いており、目の前の大きな川の水面は太陽の光を反射して美しく輝いていた。俺の足元には美しい緑の草が一面に広がっており、川辺で釣りを楽しむ人も数人見受けられる。さらに、川の上には今まで見たことのない大きな青い橋がかかっており、その上をとても長い不思議なモノが左右に動いていた。
なんか、俺が知ってる景色と全く違う気がするな。一度状況を整理しよう。
まず、俺はギデオンと模擬戦をしていて、ギデオンが上級の6級レベルの魔法を放ったんだよな。そしたらギデオンが魔力暴走を起こして、俺の視界が真っ白になったんだ。そして、気付いたらここにいるわけか。
はぁー。ったく、ギデオンの奴、いくら俺のことが嫌いでもやり過ぎだろ。
俺は深くため息を吐き、内心でギデオンに苛立ちを覚えていた。
とりあえず、ここに居ても何も解決しないから、みんなのところに帰るとするか。
俺は一度立ち上がり、草の斜面を上ってみた。斜面を登りきると、目の前には黒色の地面の道があった。その道の上には、歩行者やジョギングを楽しむ人が見受けられる。
俺がその道を歩こうとした瞬間、右耳から「チャリン、チャリン」という音が聞こえてきた。俺はその音に驚き、草の上まで一度戻った。すると、二つの車輪をつけた三角形のフレームが車輪を回転させながら、俺の目の前を通り過ぎていった。
「な、なんだ、アレは?あんなモノ、今まで見たことがないぞ。エルデン国の国宝物か、何かか!?」
俺はその不思議な形状をしたモノに関心していた。
俺は様々な形をした建物などに囲まれた場所にやってきていた。
俺が今いる場所は人の数も先ほどよりは多く、先ほどとは違う四つの車輪をつけた流線形の不思議な物体が左右に数多く走っている。
また知らない場所に来てしまった。ここは、ほんとに俺が知ってる世界なのか?
俺は今まで見てきたモノから、ここは俺がいた世界ではないのではないかと仮説を立てる。
街の喧騒が俺を包み込み、ただ風に身を委ね、道なき道を適当に歩いていると、俺は周囲から視線を感じ始める。
おそらく俺の服装が原因だろう。俺が今着用している服装はレオナ魔法学園の制服である。
レオナ魔法学園の制服は、青いローブとシルバーの装飾が施された白いユニフォームである。それと比べて、この世界の多くの者は白、黒、などといったあまり派手ではない色のシャツと単色のズボンを組み合わせたファッションをしていた。
見たところ、俺の服装はこの世界の一般的なファッションとは異なり、少し目立ってしまっている状態だった。
俺が周りの景色に見惚れていると、胸の辺りに「POLICE」と書かれた黄色のバッジを付けた青い服装を着こなし、紺色の帽子を身に着けた二人の男性が俺の方へ近づいてきた。
「(君、高校生っぽいけど学校は?あまり見ない制服だね)」
何かを言っているようだが、何を言っているのか俺には理解ができなかった。俺は面倒なことに巻き込まれたくなかったので、仕方なく二人の男性をあとにして走り出した。
ある程度走ると、また先ほどとは違う景色になり、周りには家らしきものが並んでいる。
俺はもう一度、今まで見てきた景色や状況を整理するため、腕を組みながら歩き進める。
やっぱり、ここは俺が知ってる世界ではないのでは?さっきの男性2人も俺が知らない言語で話してたし……。
「きゃっ!」
下を向きながら歩いていると、俺はある曲がり角で、鮮やかな赤色のリボンを首に飾り、白いシャツと紺色のスカートを身にまとった少女にぶつかってしまった。俺が彼女とぶつかってしまった衝撃で、彼女の左肩にかけていた紺色の直方体のカバンが地面に落ちてしまう。
「(す、すみません)」
俺は咄嗟に彼女に謝り、地面に落ちた彼女のカバンを拾い上げる。しかし、彼女は俺の言葉に反応することなく、少し困惑した表情で黙っていた。それでも、俺が謝罪の際に少し頭を下げたことから、俺の意思が通じてる様子が窺えた。
「(ありがとうございます)」
彼女はまた何か言葉を発していた。再度、その言葉を俺は理解することができなかった。
しかし、俺はふとあることに気づいた。
初級の2級レベルの魔法、《
先ほどの男性二人には急に話しかけられたので魔法のことが頭からすっかり抜けてしまっていたが、今冷静に考えてみれば、もし魔法が使えるのであれば、《言語理解》を使用して彼女の言葉を理解できるかもしれないと考えた。
俺はそう思い、小声で「《言語理解》」と呟く。
そして、彼女にもう一度謝罪をする。
「先ほどは、すみませんでした」
「いえ、こちらこそ。すみませんでした」
すると、先ほどとは違って彼女が発していることを理解することに成功する。その瞬間、俺は「もしかして、ここは俺が知ってる世界なのか?」と考えた。
魔法が使えるということは、俺が知ってる世界なのか?でも、俺が知ってる言語と全く違う言語を使ってるしな。もしかして、俺は時を越えて未来に来たのか!?まさか……ね?
そう頭の中で俺が別の仮説を立てていると、目の前にいる少女に再度声をかけられた。
「あまり見ない制服ですね。このあたりの高校に通っているのですか?」
俺は内心では動揺していたが、それを表に出さずに、彼女からの質問への回答を考える。俺は自分の中で答えを決めると、彼女の質問に回答する。
「あ、えっと……はい。僕は最近この付近に引っ越してきました」
「そうなんですね。私は、
「申し遅れました。僕は、シン=ブラッドフィストと申します。よろしくお願いします」
「シンさんですか。もしかして、外国の方だったりしますか?」
「は……」
俺が「はい」と答えようとした瞬間だった。
「危ない!」
美咲の背後から四つの車輪をつけた流線形の不思議な物体が猛スピードでこちらに向かってきているのが見えたので、俺は美咲に反射的に声をかけた。
しかし、美咲が背後を振り返ったときには既に遅かった。
カッシャン!
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