第19話. 異世界の少年、地球でお泊まり会に参加する。③

 夕飯を食べ始めてから1時間半。

 リビングにある時計は18時30分を示していた。


 

 「「ごちそうさまでした」」


 俺たちは楽しい食事の時間を過ごしながら、美咲が作った料理を完食する。


 「それじゃあ、みんな順番にお風呂に入って。私、片付けとかあるし最後で良いから」

 「俺、片付け手伝うよ」


 俺は風呂を後回しにし、美咲のことを手伝おうと席から立ち上がる。


 「え?手伝ってくれるの?」

 「うん。美味しい料理沢山作ってくれたし、少しは美咲の負担減るかなって思って」

 「……ありがとう」


 「私も手伝う!」


 すると、俺に続いてことりも名乗り出る。


 「ほんと?」

 「うん」

 「そっか……二人ともありがとう」


 美咲は有り難く感じ、俺とことりに指示を出し始める。


 「じゃあ、まずは食べた皿を流しに運んでくれるかな?私、食器洗うから、洗った食器をシンくんとことりが拭いてくれる?」

 「分かった」

 「任せて!」


 ことりはやけに気合いが入っている。ことりの背中から美咲の手伝いへの意気込みやエネルギーが滲み出ているように感じられる。

 一体、どうしたのだろうか。

 俺にはことりがなぜそんなに気合いが入っているのか理由が分からなかった。


 俺はそんな思いを抱えながら、美咲に言われたように食器を流しへと運び始める。



 「美咲、俺たちも手伝うぞ」


 食器を運んでいると、悠斗は自分も手伝った方が良いのではないかと考え、美咲に声をかける。


 「悠斗はいいよ。先にお風呂入って。キッチンに五人もいたらやりずらいし、多分もう手伝えることないよ?それに、お風呂詰まっちゃうし」

 

 すると、美咲が返事をするよりも前にことりが美咲と話す時の口調とは少し違う、少しツンとした口調で悠斗の申し出を断る。


 「そうだね。手伝ってくれることはとても嬉しいけど、ことりの言う通り他に手伝って欲しいことは今ないからね。だから、気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとね」


 美咲はことりの後に続いて、食器を洗いながら「ごめんね」と少し申し訳なさそうな表情を浮かべながら、悠斗の申し出を断る。


 「そ、そうか……」



 悠斗は美咲とことりに申し出を断られたが、すぐさま気持ちを切り替えて浩介に声をかけた。


 「それじゃあ、浩介、一緒に風呂入ろうぜ」

 「いや、一人で入れよ」


 浩介は少し嫌な顔をしながら悠斗の誘いを断る。

 しかし俺が浩介の様子を見ると、浩介は「悠斗と一緒に風呂に入るのは断固拒否!」みたいな様子では無かった。


 「ほら、一緒に入るぞ」


 浩介に断られた悠斗は全く悲しげな目つきをしておらず、浩介の右腕を無理やり引っ張りながらリビングから廊下に出るドアを開ける。

 悠斗と浩介の様子を見る感じ、浩介はそんなに体に力を入れず、悠斗はみるみると浩介を風呂場の方へと引っ張っていく。

 同じく二人の様子を見ていたことりは「いってらー」って二人を見送る。





 ◇ ◆ ◇

 

 悠斗と浩介はカバンから着替えを取り出して、脱衣所で風呂に入る準備をしていた。

 


 「なんで、俺がお前と一緒に風呂に入るんだよ……」


 浩介はぶつぶつと何かを言っているが、服を次々と脱いでいく。


 「たまには、良いんじゃん。最後に一緒に浩介と風呂入ったのは確か……先月にあった京都の修学旅行と時か。案外最近じゃん」

 「そうだな。あの時、お前俺の腹筋触りまくってきてたよな。あれマジでキモかったから」

 「だって、浩介の腹筋バッキバキじゃん。惚れちゃうー」


 悠斗は冗談混じりに話す。


 「お前も筋トレとかすれば良いじゃないか。サッカー部でやってるだろ?」

 「まあ、ある程度筋トレはやっているけど、浩介みたいにまではならないよ」

 「……」


 悠斗の言葉を聞いて、浩介は返す言葉を無くす。

 しかし、丁度タイミング良く悠斗と浩介は服を脱ぎ終え、風呂に入る準備が整った。


 「それじゃあ、風呂入るぞ」



 

 悠斗と浩介は体を洗い終えると、熱いお湯の中に浸かる。


 「そういえば、浩介さ……」

 「ん?なんだ?」

 「シンって、なんかがない?」

 「確かにな。今日シンに初めて会ったが、美咲の親戚の感じがしないというか。なんか、俺ら日本人とは違う感じがするな。まあ、外国人だからそう感じてもおかしくは無いかもしれないが、外国に長く住んでいたのにも関わらず、のは少し不思議だな」

 「そうだよな。マジで不思議だ」


 悠斗と浩介は風呂に浸かりながら、シンという一人の青年について話している。


 「まあでも俺らが勝手にそう感じてるだけかもしれないしな。さっき話してても別に悪い人じゃなかったしな。浩介もそう思うだろ?」

 「そうだな」


 ◇ ◆ ◇

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