第41話. 異世界の少年、地球で夏祭りに行く。⑥

 「じゃあ、最後は私だね。私の名前は、星野ほしのひとみ。よろしくね」

 「う……うん。よろしく」


 5年前エレスティアに初めて会った時は、「エレスティア」と名乗っていたのに、今日は「星野ひとみ」と名乗っていて、とても違和感がある。


 「そういえば、シンくん、さっき何か急いでいたみたいだけど大丈夫そ?」

 「あ、そうだった」


 ひとみに指摘され、俺は美咲を探していたことを思い出す。


 「ごめん、俺もう行かなきゃ」


 俺はそう言ってその場から離れる。

 

 美咲、ごめん。

 俺は心の中で美咲に謝りながら、美咲を探し続ける。




 ひとみたちと別れて美咲を探すこと5分……


 「あ、いた」


 俺は、屋台が並んでいる道の側に生えている大きな木の下に美咲の姿を見つける。

 しかし、同時に俺は若い3人組の男たちが美咲の目の前に立って美咲に話しかけていることにも気がつく。いわゆるナンパというやつだ。





 ◇ ◇ ◇


 「ねー、君かわいいね。良かったら俺たちと遊ばない?」

 「1人じゃつまらないでしょ?」

 「俺たちと遊んだ方が絶対楽しいよ?」


 私は今ナンパされている。


 私はトイレに行った後に、甘いものが食べたくなり何か屋台で甘いものを買ってからみんなの元に戻ろうと考えていたが、買いに行く途中で今目の前にいる男性3人に絡まれてしまった。


 1人目の男性は短髪でサイドをスッキリと刈り上げ、トップは軽く立ち上がったスポーティなスタイルだった。男はカラフルで軽い素材のシャツに、程よくフィットしたジーンズを履いている。足元はスニーカーで、アクセントにキャップを被っている。

 2人目の男性はやや長めで自然な感じに流し、トップはこなれた雰囲気のセットをしていた。男はシャープなシルエットの白いシャツに、スリムフィットのデニムを履いている。足元は洗練されたデザインのローファーで、腕には腕時計が輝いている。

 3人目の男性はミディアムレングスで、自然なウェーブがかかった髪型をしていた。男はリラックス感のあるTシャツと、ややゆとりのあるショートパンツを身にまとっている。足元は快適なスニーカーで、方には軽いジャケットを羽織っている。



 「あのー、私待たせてる友達がいるので、お断りさせていただきます」


 ナンパされるのは今回が初めてではなかったため、いつも通り私はお誘いを断る。


 「なんだよー。釣れないなー。ちょっとぐらい良いじゃん」

 「なんなら、そのお友達さんも一緒に俺たちと遊ぼうよ」


 しつこい。

 私の頭に少しずつ血が昇り始める。


 「ですから、私急いで戻らないといけないので、これで失礼します」


 私は少し強い口調で3人組の男性に言って、この場を立ち去ろうとする。


 しかし……


 「ちょ、待てよ」


 短髪の男性が私の右手首を掴む。

 私が後ろを振り向くと、残りの2人の男性が私の背後に回り、先ほどまでとは少し違う雰囲気が3人組の男性たちから感じ取れる。


 「君、せっかく俺たちが遊びに誘ってるんだから、有り難く思えよ」

 「いや、私、別にあなたたちと遊びたいなんて一言も言ってないんですが……」


 私は目の前にいる男性に言い返す。


 「なんだと!?」


 私の目の前にいる男性は再び私の手首に手を伸ばす。


 目の前の男性が私の手首を掴もうとした刹那、私の視界には右から別の手が映り込み、そして目の前の男性の手首を掴んだ。


 「何してるんですか?」


 私は聞いたことのある声を聞いて、右横を向く。


 「シ……ンくん?」


 そこには私の手首を再び掴もうとした男性の手首を掴んでいるシンくんがいた。


 ◇ ◇ ◇





 美咲の姿を見つけた俺は、美咲の元へと歩き進める。

 

 美咲の元に近づくに連れて、段々と3人組の男たちの声が聞こえてくる。


 「君、せっかく俺たちが遊びに誘ってるんだから、有り難く思えよ」

 「いや、私、別にあなたたちと遊びたいなんて一言も言ってないんですが……」


 美咲は男たちに向かって強い口調で言い返している。


 「なんだと!?」


 美咲の発言が気に気に入らなかったのか、それとも美咲に相手にされないことに苛立ちを覚えた短髪の男は美咲の手首を再び掴もうと手を伸ばす。


 「何してるんですか?」


 刹那、俺は手を伸ばして、短髪の男が伸ばした手の手首を掴む。


 「シ……ンくん?」

 「美咲、遅くなってごめんね。少しの間、俺の後ろに居てくれないかな?」

 「う……うん」


 美咲らしくない涙声を聞いた俺は、眉間にしわを寄せる。


 

 短髪の男は、掴まれた手首から思いっきり俺の手を振り払う。


 「なんだ、お前は?」


 俺の存在に気づいた男は俺を睨みつける。


 「俺は彼女の友達です。中々戻ってこないもので、探していました。そしたら、あなたたちが原因だったのですね」

 「ああん!?」


 男はさらに俺を睨みつける。


 「彼女、嫌がっているのになんで無理やり遊ぼうとしているのですか?」


 俺は淡々とした口調で男を問い詰める。


 「いや、この女は俺たちと遊びがってるぜ」

 「良くも平気で、そんな嘘がつけますね。俺、彼女が嫌がっていた様子を見ていましたよ」

 「ああん!?黙れよ!その女は俺と遊びたがってるんだ!」

 「美咲、そうなの?」

 

 俺の背後に隠れている美咲に俺は尋ねると、美咲は首を左右に振る。


 「ほら、彼女は嫌がってるみたいだ」

 「うるさい!黙れ!お前たち、そいつをやっちまえ!」


 「「あいよ!」」


 短髪の男は残りの2人の男に俺をボコすように命令する。


 「美咲、ごめん、ちょっと俺から離れててね」


 俺は美咲を安心させるような口調で言って、美咲から少し離れて前に出る。


 そして、短髪の男の命令を受け取った残りの男2人は、俺との距離を一瞬で縮めてきた。

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