第13話. 異世界の少年、地球で静かな昼を過ごす。
「じゃあ、シンくん、行ってくるね」
「うん、気をつけて。行ってらっしゃい」
俺は美咲を笑顔で玄関から見送る。
美咲とショッピングに出かけた翌朝。
美咲は彼女が通う
美咲を見送った後、俺はリビングのソファに一人で座っていた。
「学校か……」
俺はポツリと呟く。
「シンやソフィアは元気にしているのだろうか。きっと俺が居なくても元気にしてるよな。でも、なんだかソフィアは心配だな」
俺は口元を緩めながら、俺の世界に置いてきてしまった友や家族を心配する。
さてと、気を取り直して……
「美咲が学校に行ってる間、何をするか。とりあえず、俺が地球に転移した原因でも探るか」
俺はそう考え、《
これらの魔導書は大賢者によって書かれた書物である。魔導書には、転移魔法や防御魔法、回復魔法などといった様々な魔法について記載されている。
そして、大賢者が書いた魔導書の存在は俺とエルデン国王、そしてソフィアぐらいしか知らない。それは、この書物を最初に発見したのは俺であり、他の人に知られるとまずいことになるため、他の人には教えなかったからだ。では、何故そんなに他者に知られるとまずい魔導書を俺が発見したかというと……
まずは転移魔法の仕組みについて書かれている文献を探すか。
俺は1冊目の魔導書を開いた。
時間は段々と過ぎ、時刻は13時を回っていた。
「もうこんな時間か」
俺はリビングにある時計を確認した。
「お腹空いたし、一度休憩するか」
俺は今開いていた魔導書を閉じ、キッチンへと向かった。
そして、冷蔵庫という便利なモノの扉を開けた。
俺の世界では、食材などを保存する場合は魔法を使っていた。しかし、この世界の者は魔法が使えないため、電気というものを利用して食事を冷やして長期間持たせることができる冷蔵庫というモノを発明したらしい。
俺は、冷蔵庫から美咲が作り置きしてくれたオムライスという料理が載った皿を取り出す。そして、輝くような黄金色を放っている表面をしたオムライスが載った皿を電子レンジという機械の中に入れ、スイッチを押す。
30秒経過……
チン!
音が鳴ると、俺は電子レンジからオムライスが載った皿を取り出した。
「こりゃ、便利だ」
オムライスが載った皿を取り出すと、皿が温かくなっているのに関心していた。
俺はオムライスが載った皿とスプーン、冷蔵庫から取り出したケチャップというのを持ってダイニングテーブルへと運ぶ。
「いただきます」
俺は食べ物に感謝した後、美咲に言われた通りケチャップというのをオムライスの上に少しかけた。
一口食べると、口の中で具材と卵、ごはんの絶妙なハーモニーが広がり、満足感が広がる。
「ご馳走様でした」
最後まで完食すると、俺は食べ終えた皿を持って流しに運ぶ。そして、魔法を使ってサッと皿を綺麗に洗い終える。
俺はリビングのソファに戻り、魔導書の続きを読み始めた。
なんだか体全体が温もりに包まれている気がする。
俺は瞑っていた瞳のカーテンをゆっくりと開けると、俺の体は1枚のブランケットで包まれていることに気付いた。
「シンくん、起きた?」
目の前を見ると、制服姿の美咲が目の前のソファに座っている。
俺は瞳を軽く擦り、リビングにある時計を確認する。すると、時刻は16時半を示していた。
どうやら、俺は魔導書を読みながら寝落ちしてしまっていたらしい。
「美咲、おかえり」
「ただいま」
俺は再び美咲の方を振り返り、美咲を快く迎え入れる。
「シンくん、横にあるなんだか分厚いそうな本は何?」
美咲は俺の真横にあった数冊の魔導書に気付き、俺に尋ねてきた。
「これか……これは魔導書と言って、大賢者が様々な魔法について書いた書物だよ」
こっちの世界の人に教えても何も問題ないだろうと思い、俺はすんなりと美咲に教えた。
「え、凄い。私にも見せて」
「あ、ま……」
俺は止めに入ろうとしたのだが、少し遅かった。
俺は知っていた、こうなることを。
「なんも読めない……」
好奇心で溢れ出ていた美咲の瞳は次第に輝きを失っていく。
「そりゃ、そうだよ。だって、俺の世界の古代言語だよ?」
俺は小さく笑いながら、美咲を慰める。
「でもシンくん、なんで魔導書?なんて読んでたの?」
「それは、俺がこの世界にきた原因を調べようと思ったからだよ。原因が分かれば、帰る方法が分かるかもしれないしね」
「そうなんだね。できれば、帰りたいよね。ソフィアやシンくんの両親心配してると思うし」
「……ま、まあね」
俺は呟くように言った。その小さな声には、どこか遠くで鳴り響く悲しさが漂っていた。
会話に一瞬間が空き、俺の返事を聞いた美咲は俺のことを心配すると同時に、申し訳なさを抱いた。
「どうしたの?私、なんか気に障ること言っちゃったかな?そしたら、ごめん……」
「いや、そんなことないよ。心配させてごめん」
俺は咄嗟に美咲に謝る。
「じゃあ、どうしたの?そんな悲しそうな声で」
美咲は心配そうに続けて質問する。
「いや、ただ……」
「ただ?」
「俺のことを心配してくれる人はいると思うけど……父さんはしてくれないかな」
「なんで?」
美咲は俺の発言に首を少し傾げる。
「それは……俺の父さんは、もういないから……」
俺はまた小さな声で呟く。
そう、俺の父さんはもういない。あの日以来、帰らぬ人になってしまった。
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