第24話. 異世界の少年、地球でお泊まり会に参加する。⑧
「ただいまー」
俺が浩介との最終戦を始めた時、風呂上がりのことりが再び姿を現す。
「「おかえりー」」
俺と浩介はテレビ画面に視線を送り続けるが、既に脱落した悠斗はことりの方へと視線をずらす。
「ことり、顔が少し赤いけど、熱でもあるんじゃないのか?」
ことりの顔が少し桃色で染まっているような感じを読み取った悠斗は、ことりに心配の声をかける。
「べ……別に熱なんてないよ」
ことりは少し早口で返事をし、慌ただしい感じでキッチンの方へと向かう。
「それなら良いが……」
ことりはコップ1杯の水で喉を潤したあと、俺たちの方へとくる。
そして、テレビの画面に視線を向ける。
「今、どっちが勝ってるの?」
「浩介だ。俺はもう脱落したよ……」
「そうなんだ」
隣で俺と浩介の勝負の行方を追う観戦者が1人増える。
俺は浩介の攻撃をできるだけかわしつつ、Bボタンで攻撃を仕掛ける。
しかし、浩介は遥かに避けが上手く、俺にカウンター攻撃をしかける。
俺はXボタンでジャンプしながら浩介のカウンター攻撃を避ける。
現在のパーセンテージは、浩介が65%、俺が82%である。
「くっ……」
俺は苦戦している。
ちょっとやばいかな、これ。
そんなことを考えていると、浩介は俺のキャラクターに強攻撃を仕掛ける。
しかし、俺は避けるのが間に合わないと思い、AとBボタンを同時に押してスマッシュ攻撃を試みる。
すると、俺の攻撃と浩介の攻撃がタイミングぴったりでぶつかり合い、相打ちが発生する。スマッシュ攻撃の方が威力が高いためか、浩介のキャラクターがリング外に飛ばされる。
「おー。すげー。これで浩介のライフも残り1つだ」
「シンくん、やるねー」
今の攻撃を見ていた悠斗とことりは俺を応援し続ける。
「相打ちだったか……」
浩介は「それなら仕方ないか」と自分で納得している。
俺は浩介が使うキャラクターのライフを1つ減らすことに成功するが、戦況はかなり厳しい状態だ。
俺が使うキャラクターのパーセンテージは既に100%を超えており、108%だ。それに対して、浩介のキャラクターは復活したばかりなので、0%だ。
かなり絶望的な展開だな、これ。
俺は内心でそんなことを考えながら、浩介の攻撃を避ける。しかし、攻撃を全て避けるなど流石に少し無理があり、徐々にパーセンテージが上昇していく。既に100%を超えていることにより、弱攻撃でも軽く吹っ飛んでしまう状態にまで陥る。
「シン、これで終わりだな」
浩介はそんな言葉を口にしながら、俺にスマッシュ攻撃を仕掛ける。
俺はその攻撃を避けることができず、ダイレクトヒットを喰らい、可愛くて丸いピンク色のキャラクターはリング外へと吹き飛ばされる。
そして、テレビ画面に「GAME SET!」という文字が表示される。
「あー。惜しかったな、シン」
「惜しかったね、シン」
悠斗とことりは俺に励ましの言葉をかける。
「シン、今日初めてプレイした割には上手かった。ナイスゲームだ」
浩介もクールな口調で俺を励ます。
「ありがと」
俺が3人に感謝の言葉を口にすると、リビングのドアが開く音がする。
そして、「お待たせー」と言いながら美咲は俺たちが座っているソファの方にやってくる。
「さきりんも来てみんな揃ったし、みんなでやろうよ」
「良いねー。私絶対負けないよ」
「おう、やろうぜ」
「俺も構わない」
「良いよ。なんかこのゲーム楽しいし」
ことりがみんなを誘うと、みんなことりに賛同する。
俺はすっかりこのゲームの沼に浸かってしまう。初めてプレイしたが、今まで感じたことのない楽しさに胸が高鳴る。
「それじゃあ、全員敵でソロでやるか?」
「良いねー」
悠斗の提案に乗った美咲はワクワク感が止まらない様子だ。
みんなの賛同を得た悠斗は、カチカチとコントローラーを操作しながら、チーム編成を組み直す。
「シン、今度は俺たち全員が敵だから」
「う……うん」
悠斗は俺に次のルールについて簡易に説明して、「ゲーム開始」ボタンを押す。
GAME START!
いざゲームが始まると、テレビの画面上では大乱闘が起きている。
様々な方向から攻撃が飛んでくるため、上に飛んだりなどとスティックとXボタンを押して攻撃を避けたり喰らったりする。もちろん避けるだけではなく、AとBボタンで攻撃を他キャラクターに仕掛ける。
そして現実では、多方向からコントローラーを操作する音や、悠斗が「いけー」って言ってる声が聞こえてくる。
ゲームが開始し、少し時間が経つ。
「シンくん、なんか上手じゃない?」
「そ……そうかな?」
「うん。初めてだとは思えないよ」
俺は少し照れながら「ありがと」と伝える。
「それ、私も思った。さっきさきりんが来る前にさ、シンくん、浩介とやってたけど、浩介から一本取ってたんだよ?凄くない?」
「え!?あの桐嶋くんから?」
「そうそう」
「ことり、ー本だけじゃないぞ。ことりが来る前にもー本取ってたぜ。あれは凄かったな。俺も浩介に勝ちたいぜ」
ことりと悠斗は、美咲が来る前にあった出来事をコントローラーで操作しながら目線をテレビに向けて、興奮気味に語る。
その話を聞いた美咲は、「凄過ぎる」という感じの表情を驚きと同時に浮かべる。
それに対して、俺はそんなに騒ぐことなのだろうかと思う。
「そんなに凄いの?」
「そうだよ。桐嶋くんって、このゲームめっちゃ上手いんだよ?私たち、まだ桐嶋からー本も取ったことないよ。だから、今日初めてプレイして、桐嶋くんから一本取れるなんて、成長がすご過ぎるよ」
「そ……そうなんだ」
美咲がどれぐらい凄いのか教えてくれるため、俺は美咲の説明に軽く頷く。
確かに、プレイしたのは今日が初めてだが、相手の行動を予測する予測力と即座に対応できる反射神経があれば勝てるのではないかな。その辺の能力はあっちの世界で鍛えていたし。
俺はそんなことを内心に潜めつつ、コントローラーのAボタンを押す。
「シンは強かった」
浩介も軽く一言言って俺のことを称賛するが、目線はテレビ画面で、ゲームに全集中している。
あれから勝負は続き、最後には決着がつく。
GAME SET!
結果は……
1位. 浩介
2位. シン
3位. 美咲
4位. ことり
5位. 悠斗
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