第26話. 異世界の少年、地球でお泊まり会に参加する。⑩

 「やったー!あっがりー」


 嬉しそうに良いながら美咲は最後のトランプをハートの3と一緒に捨てる。

 

 「あー。俺の負けだよ」


 俺は少し悔しい表情を浮かべる。


 「もう一回やろうぜ」


 初手6枚もあったにも関わらず、1位抜けした悠斗はもう一戦を希望している。

 今回負けたし、もう一回やるか。

 そんなことを思いながら俺は悠斗に賛成する。


 

 なんやかんやあれから、俺たちはババ抜き以外にも七並べや大富豪をやった。

 リビングにある時計を見ると、23時過ぎを示している。


 「そろそろ寝よっか。私疲れたかも」

 「私もー」


 美咲とことりは笑顔と満足感で満たされながら、ソファの背もたれにもたれかかる。


 「そうだな。そろそろ寝るか」


 浩介は冷静で落ち着いた表情を崩さずに言葉を口にする。

 

 俺たちはトランプや、紅茶を飲み干したカップを洗って、後片付けをし、廊下に出る。

 リビングから出る際に美咲は、リビングの明かりを消す。そして、俺たちは互いに言葉を交わし、それぞれの部屋へと向かう。

 「おやすみ」という言葉が廊下に響き渡ると、静まり返った空気へと変わった。




 「じゃあ、電気消すね」

 「良いぞ」

 「ああ」


 俺は悠斗と浩介に一言かけてから、部屋の明かりを消す。


 男子組は俺の部屋(修二しゅうじさんの部屋)で寝て、女子組は美咲の部屋で寝るような組み分けである。俺の部屋は7畳でそこそこ広く、男3人が寝てもまだスペースが余る。

 普段はこの部屋で1人で寝ている俺だが、今夜は悠人と浩介と一緒に寝ることになる。


 俺は明かりを消すと、3枚並行に敷いた布団のうち、右の布団の中にゆっくりと入る。すると、俺の身体を包み込むように布団がやさしく抱きしめてくれる。


 俺が布団に入って数分後には、真ん中で寝ている悠斗の口からいびきが聞こえ始めた。対して、浩介は「スースー」と小さな音を立てながら既に目を閉じていた。

 2人とも疲れてたんだなー。

 俺はそんなことを密かに思って、2種類の音を聞きながら、瞼を閉じる。すると、心地よい眠気が広がり、夢の扉がゆっくりと開かれていくような感覚が訪れる。

 



 眠りから覚めると部屋には淡い光が広がっていた。まだ夢の中のようなぼんやりとした視界が、次第に明るさに包まれてくる。外では鳥たちにさえずりが、新しいー日の始まりを告げている。

 ゆっくりと目を開けると、周りの景色が次第にくっきりと見えるようになる。視線を時計に向けると、7時過ぎを示している。

 周りを見回すと、相変わらず悠斗は未だ寝ている様子である。対して、浩介はというと、既に布団が綺麗に整えられ、浩介の姿がない。



 「おっと。シン起きたか」


 玄関の扉が閉まる音がし、俺の部屋に上下ジャージ姿の浩介が戻ってくる。


 「どこ行ってたの?」


 俺は浩介の格好を見て浩介に尋ねる。


 「ちょっと朝トレしてたんだ」

 「そ……そうだったんだ」


 俺は浩介の汗だくの姿を見て、納得する。


 「シン、少しシャワーを浴びたいのだが、良いか?」

 「べ、別に良いけど」

 「ありがと」


 この家は俺の家ではないので俺が決めて良いのだろうかと一瞬考えるが、浩介の姿を見て俺は浩介のお願いを承諾する。


 浩介はジャージ姿のままお風呂場に向かった。

 浩介がいなくなると、俺は悠斗を起こさないように自分が寝ていた布団を綺麗に畳む。



 悠斗を部屋に寝かしたままリビングに来ると、リビングに2人の人影が見える。


 「おはよう」


 俺はその人影が誰なのか知っていたため、元気よく挨拶しながらリビングに足を踏み入れる。


 「シンくん、おはよう」

 「おはよう、シンくん」


 部屋に入ると、美咲とことりも挨拶を返してくれる。2人の姿を見ると、美咲はピンク色のエプロン、ことりは薄黄色のエプロンをして朝食の準備をしている様子だった。


 「朝ごはん、もう少しでできるからソファでゆっくりしてて」

 「う……うん。ありがと」


 俺は美咲に言われて、2人に感謝の言葉を口にして、ソファに腰を下ろす。



 数十分後、俺がスマホをいじっていると、美咲から声をかけられる。


 「シンくん、もうできるから、悪いけど山本くんを起こしてきてくれる?」

 「うん。分かった」


 美咲に言われ、俺は自分の部屋へと再び戻る。

 部屋に戻ると、悠斗は幸せそうな表情でまだ寝ていた。

 起こすことが少し可哀想だと思ったが、俺は悠斗の身体を優しく揺らす。


 「悠斗くん、起きて。朝ごはんだってよ」

 「ん……」

 

 思っていたよりも早く悠斗は目を覚ます。


 「おはよう、シン」

 「おはよう」


 俺と悠斗が挨拶を交わすと、丁度良いタイミングでシャワーを浴び終えた浩介が部屋に戻ってくる。


 「やっと起きたのか」

 「おはよう、浩介」


 浩介は少し呆れた表情で悠斗に声をかける。


 「浩介くん、美咲が朝ごはんできたって」

 「そうか」


 俺は浩介にも朝ごはんができることを伝える。


 


 悠斗が布団を畳む終える、俺たち3人はリビングへと向かう。


 「「おはよう」」


 リビングに入って、悠斗と浩介は美咲たちと挨拶を交わす。


 「朝ごはんできたから、食べよ」


 美咲は「こっちにおいで」と誘いながら、ダイニングテーブルの席につく。



 「「いただきます」」


 俺たちは食事と美咲たちに感謝をして、朝ごはんを食べ始める。


 今日の朝ごはんのメニューは……

 焦げ目が程よくついたゴールデンブラウン色の表面をした食パン、黄身が程よくトロリとした目玉焼き、スパイシーで香ばしい香りが立ち上るチョリソー、そして彩り豊かで鮮やかな野菜が含まれるシーザーサラダだ。


 どれも味は絶妙に美味しく、朝から贅沢な食事をしていると感じさせる。



 幸せを感じながら朝食を済ませると、ことりたちは帰りの支度を始める。




 ことりたちは帰りの支度を終え、今玄関にいる状態である。


 「さきりん、昨日と今日に撮った写真あとで送っておくね」

 「うん。分かった」

 「あ、シンくんにも送っておいた方が良いかもね。シンくん、私とPINE交換しよ」


 ことりは俺とのPINE交換を求めてくるので、俺は「良いよ」と言ってQRコードをことりに提示させる。


 「俺とも交換しようぜ」


 ことりとPINEを交換していると、悠斗もスマホでカメラの準備をしていた。



 「「お邪魔しましたー」」


 「うん。またねー」


 俺は帰り際にことりと悠斗、浩介とPINEを交換し、美咲と一緒にことりたちを笑顔で見送った。






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《お知らせ》(1/16/24)

明日1/17/24より18時頃と21時頃から19時頃と21時頃の更新に変更します。よろしくお願いします。

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