第27話. 異世界の少年、地球で看病する。①
次の日、俺と美咲はいつものようにゆっくりと朝食を食べようとしていた。
美咲はエプロンを取り外し、席につく。
「「いただきます」」
俺たちは一緒に手を合わせて、食べ物に感謝する。
けど……普段とは少し違う。
美咲の声が少しかすれていた。
「美咲、顔色少し悪いけど大丈夫そ?」
俺は美咲の顔を覗きながら心配そうに声をかける。
「う……うん」
やはりいつもより元気がない。
美咲の顔は普段よりも赤みを帯び、健康な肌の色合いが少し失われていた。おそらく熱があるであろう美咲の顔は微熱が広がるように、頬には軽い発赤が見られる。眼差しはやや鈍く、元気がなかった。
俺は席から立ち上がり、「ちょっとごめんね」と言って、美咲の額に優しく手を当てる。
これは……
「美咲、熱あるでしょ?」
「た……多分。少し倦怠感があるかも」
「少し休もうか」
「うん」
俺は美咲の手を取って、美咲の部屋へと誘導する。
「少しベッドの上で横になれる?」
「うん」
俺は美咲を支えながら、ベッドに寝かせる。
「《
俺は美咲の体調を元に戻そうと治癒魔法をかける。
しかし……
美咲の表情は和らげない。
あれ?おかしいな
俺は《治癒》が全く効かないことに疑問を抱く。
《治癒》とは、どんな怪我でも病気でも必ず治すことができる最上級・神級に達する
10級レベルの治癒魔法である。
もう一度やってみよう。
「《治癒》」
やっぱりだめだ。
俺は何度か《治癒》を試みたが、全く効かなかった。
「シンくん、もう大丈夫だよ。ありがとう」
「で……でも」
「ただの風邪だから、少し寝れば治るよ。だから……ね?」
「……うん。分かった。じゃあ、俺が後片付けをしておくから、ゆっくり休んでね」
「うん。ありがとう」
俺は美咲を部屋に寝かせて、リビングへと戻る。
さてと、せっかく美咲が用意してくれたし、まずは朝ごはんを食べるとするか。
俺はダイニングテーブルに並べられた食パンと目玉焼きを食べ始める。
バターを少し付けた食パンを一口食べると、少し冷めてはいたが、もっちりとした食感は残っていた。
「ごちそうさま」
俺は朝ごはんを食べ終えると、食べ終えた食器を流しへと運ぶ。
美咲が食べる予定だった食パンも一緒にさげる。
さてと、洗いますか。
俺は流しの蛇口を捻る。
洗うと言ってもどう洗えば良いのか。
俺は今まで食器を洗ったことが無かった。俺のいた世界では、お父さんがいなくなってから俺が家族のために冒険者になって働くようになった。こっちの世界に来ても、家事は美咲に任せっぱなしだ。時々、美咲に全て任せっぱなしにするのも申し訳ないと思い、美咲に「手伝うよ」と声をかけても「平気だよ。私、家事するの好きだから」と毎回断られていた。
俺はとりあえず流しにあるスポンジに洗剤をかける。ただどれくらい付ければ良いのか分からず、スポンジが泡立つまでかけ続ける。
よし。って、これ付け過ぎたか?
スポンジを一握りすると、予想を遥かに超える大量の泡が発生する。
うわああああああ。
泡は洗剤と水の反応で立ち上がり、流しの中に広がって、流し周辺に飛び散る。
ど、どうしよう。
俺は泡の量を少しでも減らそうと思い、蛇口を再び捻る。
しかし水を流すと、泡がさらに発生し、流しから溢れ出始める。
これはやばい。
俺はそう思って、泡がたくさん付いた手を水で流して蛇口を閉める。
俺は一度食器洗いを諦め、ソファに座り込む。
やらからしてしまった……今まで家事やってこなかったからなー。
俺は自分で今までの行いを振り返る。
あ、そうだ。食器洗いは難しかったけど、部屋掃除なら大丈夫かも。部屋掃除ぐらい誰でもできるっしょ。
俺はそう思って魔法を使ってリビングの部屋掃除を始める。
数分後……
カッシャン!
リビングにガラスでできた何かが割れる音が響く。
や、やってしまった……部屋掃除ならできると思ってたのに……
俺は自分が全く家事ができないことに苛立ちを覚える。
仕方ない、ことりに助けてもらおうかな。
俺はそう考えて、ことりにPINEメッセージを送った。
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