第38話. 異世界の少年、地球で夏祭りに行く。③
「シンくん、まずは何買おっか」
美咲と2人で歩いていると、美咲は屋台を見回しながら俺に尋ねる。
「何か食べたいものとかある?」
「んー。そう言われても……」
俺は周りの屋台を見回しながら考える。
「あ。じゃあ、あれ食べてみたいかも」
俺はある屋台で店主が手際よく球状の食べ物を焼いてるのを見つけ、指を差す。
その屋台からは美味しそうな香りが漂ってきて、俺は喉を鳴らす。
「あー、たこ焼きね。良いと思うよ」
「たこ焼き?」
「うん。たこ焼きっていうのはね、柔らかい生地にタコが包まれた食べ物なんだよ」
「そうなんだ。なんか、美味しそう」
「それじゃあ、一緒に買いに行こっか」
「うん」
俺は美咲と一緒にたこ焼きが売られてる屋台に近づく。
「いらっしゃい」
たこ焼きを売っている店主は、40代ぐらいの頭に白いタオルを巻いた男性だった。
「おじさん、たこ焼き10個ください」
「あいよ。ちょっと待ってな。もう少しでできるから」
男性店主は鉄板でたこ焼きをひっくり返しながら答える。
待つこと5分……
「できたよ。ほら、たこ焼き10個だ」
「ありがとう」
美咲は男性店主に代金を支払って、フードパックに入った揚げたてのたこ焼きをもらう。
「俺、持つよ」
「ありがとう」
たこ焼きの屋台をあとにして、俺は美咲からたこ焼きが入っているフードパックを受け取る。
ほんと、美味そうだな。
美咲から受け取ったフードパックに入っている揚げたてのたこ焼きには、軽く焦げ目がついていた。その姿はまさに小さなアートピースのようで、美味しさが惹き立っている。たこ焼きの上には、ソースや青のり、マヨネーズが絶妙なバランスでかかり、見るだけで食欲をそそる。
俺は何とか我慢しつつ、美咲の右隣で一緒に歩き進める。
「シンくん、次は何買おっか」
「じゃあ、飲み物なんかどう?」
「確かに……まだ飲み物買ってなかったね」
俺の回答を聞いた美咲は「それだ!」という感じな表情を浮かべて、拳を手のひらにポンッと当てる。
「それじゃあ、やっぱり夏祭りと言えば……ラムネでしょ」
「ら・む・ね?」
「そう、ラムネ。ほら、シンくん、家でコーラ飲んだことあるでしょ?
「うん。コーラは美味しかった」
俺は美咲の家で初めてコーラを飲んだ時、コーラの美味しさを知ってしまった。
熱い飲み物なら……紅茶。冷たい飲み物なら……コーラ。
これは、俺の中での定番ドリンクみたいなものだ。
「そのコーラと味は少し違うんだけど、ラムネはコーラと同じようにシュワシュワした飲み物なんだよ」
「なるほど……飲んでみたい」
「じゃあ、早速買いに行こうか」
「うん」
俺は美咲の説明を聞いて、ラムネというものも飲んでみたいと思った。
実際俺がコーラにハマったことは、炭酸飲料水にハマったことと似ている。
炭酸飲料水は一口飲むと、口の中でシュワシュワとした刺激が広がる。微細な炭酸の泡が、舌の上で軽やかに弾けて、口いっぱいに爽快感をもたらす。その泡の感触は軽やかで、舌触りが気持ちよく、炭酸の刺激が口の中に広がる。
これらの感覚が癖になってしまい、俺は炭酸飲料水が好きになってしまった。
「お姉さん、ラムネを5本ください」
「ありがとうございます。合計で1000円になります」
俺と美咲はラムネが売られている屋台を見つけ、そこで美咲は若い20代ぐらいの女性店主に注文をする。
注文を承った女性店主は、氷水の中に入っていたラムネ瓶を1本とずつ取り出し、白いタオルで軽く水滴を拭き取る。
「ちょうどですね。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
美咲は代金を支払ったあと、ラムネ瓶を5本女性店主から受け取る。
「冷たっ」
ラムネ瓶を1本受け取った瞬間、美咲はラムネ瓶の冷たさを感じ、反射的に声をあげる。
「大丈夫?」
「うん。ありがと」
俺は美咲に心配の声をかけるが、美咲の返事を聞く感じ大丈夫そうだった。
「それじゃあ、最後に焼きそばでも買って集合場所に行こうか」
「そうだね」
そして、俺はたこ焼きが入ったフードパックを持って、美咲はラムネ瓶5本を持って、俺と美咲は焼きそばが売られている屋台へと向かった。
「まだことりたちは来てないみたいだね」
「そうだね」
焼きそば3パック、たこ焼き10個、ラムネ瓶5本を購入して、ことりたちとの待ち合わせの場所に俺と美咲はひと足先に着いた。
「それじゃあ、あそこに座って待ってよっか」
「そうだね」
俺は美咲の提案に賛成し、美咲が指差した木製のテーブルに購入した食べ物を置く。
その木製のテーブルは、屋台の周りに配置されていて、暖かな灯りで照らされている。テーブルの木は温かみのある色合いで、夜風にさられながらも優雅に見える。木の質感が手に心地よい感触をもたらし、神社の雰囲気と調和している。
「シンくん、夏祭りはどう?」
「楽しいよ」
「それなら良かった」
美咲は少し安心したような声を漏らす。
「俺の世界にも『祭り』というのはあったけど、それは貴族の人たちしか参加できなかったから、『祭り』というのを味わったことが今日までなかったんだ。だから……美咲、今日はありがとう」
俺は美咲にしっかりと感謝の言葉を伝える。
「シンくんが楽しめてるなら、私も嬉しいよ。実際、私夏祭り楽しんでいるから」
「そうだよ。美咲、めっちゃ楽しそうな顔しているもんね?」
「うん」
俺の発言を聞いて、美咲は微笑みを浮かべる。
美咲との雑談が続くこと15分……
「ほら、悠斗、ちゃんと持って」
「持ってるって」
遠くからことりと悠斗の声が聞こえてきた。
「美咲、来たよ」
「どこ?」
「ほら、後ろ」
俺は美咲の背後を指差すと、俺と対面して座っていた美咲は後ろを振り向く。
「ほんとだ」
「おーい、ことりー」
美咲は大きく手を振りながら、ことりたちに居場所を教える。
どうやらことりは美咲に気づいたらしく、こっちの方に向かって歩く速度をあげた。
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