怪し死神、夜陰に雨

『雨の日に、街の西に向かってはいけない。〝死神〟に命を狙われるから』
　中華街では、有名な噂である。

　妖怪たちの暗黒街にて恐れられるその〝死神〟。臓器商として名を馳せる彼らの正体は、妖力を失った剣客・捧と、身に余るほどに大量の妖力を持つ妖術使い・由羅の、常識から外れた命を持つ二人組だった。
　妖力の根源である体内の器官、泉《セン》を捧の身に取り戻すために、平穏ではないが代わり映えしない日々を繰り返している二人。
　ある日、馴染みの商人から、組織の長を暗殺してほしいと依頼が舞い込んだ。
　標的には思うところがありつつも引き受けるが――これが波乱の始まり、そして仕組まれた災厄のほんの端部であることは、二人は知る由もなかった。

【万能の妖術使い×妖力を持たない剣客】
これは、歪な関係のまま進んでいく、とある運命共同体の物語。