十二 帰路にて

 雨の日なら〝死神〟はいつでも仕事をしていると思わないでほしい。館の入り口の前で待ち構えていた、顔も名前も知らない連中を前に、飯店からの帰り道にあった由羅は、純粋な恨みを覚えた。

「今日に限って……!」

 傘の柄を右手で、財布と買った食べ物たちが入った袋を左手で握りしめる。すっぽ抜けて落とすなんてことがないようにだ。

 先手必勝。向こうが気づいていないうちに仕掛けて一瞬で終わらせるのだ。

「飯が冷めるだろうが!」

 怒りに叫ぶと同時に、地響きを伴って豪炎が上がった。彼らはひと目見て縮み上がり撤退を叫ぶが、

「逃がすか!」

 金の炎が鋭く伸びて、走り出したところを捕らえられる。抵抗も虚しく由羅の前まで引きずり出された。

 炎がぎりぎりと締め上げれば、一人、二人、最後の三人目の体からも力が抜ける。妖術を受けすぎて意識が飛んだのだ。

「直接倒すのは、捧のほうが得意なんだよな」

 敵が抵抗しないことを確かめたら炎を消す。三人という少数だから間に合ったが、もし大人数だったら手こずったかもしれない。

 無理をさせるつもりはもちろんないが、早く回復してほしいと思った。仕事柄、館の周りには不届き者が湧きやすい。由羅だけで始末するのはなかなかに骨が折れる。

 気を取り直して館を目指した。 少し時間を食ってしまったが、終点はもう目の前に迫っている。

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