30話:超異世界流!戦車ができるまで(2)

人歩歴990年11月27日、夜

「ルイサーーーーーー!ぽい素材いっぱい持ってきたよー!」

私はそう叫びながら、工場の扉を開け放つ。

塔のところで

別れてから次の日の夜までの間、私は色々な所を巡って使えそうな素材を探していた。

私は領主のリアムスさんから直々に依頼を受けている。

ってわけでそれを言うと皆んな快く素材を分けてくれた。いやーいいねこういうの。

「あーもうやかましいそんな大声で言わんでも分かるわ。それにあんたが勝手に戦車作るなんて言うたからうちは渋々協力してるだけやっちゅうに。」

「またまたぁ、じゃあどうしてそんなに早くから覚醒して、着る毛布も脱いで準備万端なの?」


昼間ちょくちょくルイサさんのところへ顔を出し、ほとんど寝ているルイサさんと会話したりしていたんだがあっという間に仲良くなれた。

元々かなり相性が良かったんだと思う。そりゃもうすっごく。

そういえばポーション作りしてた時もそうだったが、ルイサは昼間ずっと身につけている着る毛布の下に、軽装の作業着みたいなのを着ているのね。

その作業着がちょっと和風なのも相まってなんか職人みたいなオーラが感じられる。


「お姉ちゃん!そのくらいにしときなよ?」

「あはは、ごめんごめん。でも自分の店から色んな魔道具持ってきて並べてるのにそんな事言ってるもんだからつい…。」

「ああもうほんまあかんわ。認めるから堪忍してくれや?はよつくろうで?」

好奇心が抑えられないようですね。実は私もなんです。

「ということで、まずこれが私とアレルで集めた素材!」

魔導袋をひっくり返し、中身を床に並べる。

「えっと火薬と…何やこれ、鉄板?」

「そうそう。正直何の金属かも分かってないけど…そ・れ・よ・りこっちが本命!軍の所まで行ってやっと一門借りてこれれたんだー!」

アレルと二人がかりで工場の大扉を開けると、途端に馬に繋がれた巨大な大砲が姿を現す。


ジャーン!!ジャジャジャーン!!!ジャジャーン!!


「な…なんや…これ…。」

「152mm青銅攻城砲、巨大な鉄製の球を打ち出してその重量で城壁を叩き割る大砲なんだって。別になくても良いと思うんだけどお姉ちゃんがどうしても欲しいって言ったから…。」

いや、そりゃまあ…大砲ないと戦車じゃないと思ったし…多分…。

だけど領主の前であんだけ言ったはいいものの今から主砲を作るのなんて無理!って思ってたんだ。

そしたら異世界にも大砲はあるらしいじゃ無いですか!いやあ剣と魔法だけじゃ無いんですねここは!


「にしてもこれ、よう手に入れたな。軍機だかんなんとか言われとうたから、うちも見るのは初めてや。」

「お姉ちゃんさ、これの為にわざわざエミリさんに頼んで軍に入れて貰ってるんだ。行動力がすごいよ、ほんと。」

大砲は軍人じゃないと動かせないらしい…なら軍人になれば良いじゃん!

って事で特別にならせて貰っちゃいましたー!本来あるはずの厳しい試験も全部ナシ!やったー!

ちなみに書類上は[第二大隊直属第三特別小隊]…だって。

小隊名乗ってるけど隊員は私と弟くんの2人だけなのよねー。


「それでお姉ちゃんが言う戦車っていうのは、この大砲を積んで運べるようにした物なんだよね?」

「まあ、ざっくりといえばそうかな…?車っていうのは馬車の荷台部分みたいなもんでー、えっと馬の代わりにエンジンを動力としてるんだー。」

「ほなそれから作ってみよか。それだけなら結構簡単にできるで。」

「多分大砲とかも絶対こんなんじゃないけど、まあそっちは後回しで良いかな?」

まあ…私戦車詳しいわけじゃないし詳しい事はわかんないけどねー!

「大丈夫大丈夫!うちに任せとき?」


ってなわけで!戦車ができるまでの過程を一気にご紹介!

「要するにあれやろ?歯車とか使えばええんやろ?ほら、水車小屋の応用や。」

ルイサさんが金属板を丸っこい魔道具にあてがうと、金属板はまるでひしゃげるように形が変わり、一気に加工されていく。

「凄い…どうなってるの?」

「これか?重力魔法っちゅうもんの応用や。範囲指定をめっちゃ限定的にして、複数方向に重力改変することで、変形させたり剪断したりできるねん。」

「…このレベルのものは僕らには理解できそうにないよ…。」

ルイサは魔道具を器用に操り、歯車が組み合わさった骨組みのような機構が完成!


「あ、全体を金属板で囲った方がいいかも。矢とか魔弾に耐えれるように。」

「あー確かに。多分戦車ってそういうもんだよねー?」

「いや、お姉ちゃんしかわかんないよそれは。」

よく分からんけど戦車の装甲って分厚い鉄板なのかな?まあ矢防ぐだけだしどーにかなるか。

「じゃあとりあえず箱みたいなの被せとくで。こうして…ボルトで固定して…おお!見栄えも良うなったやんか!」

見栄え…ボルト剥き出しの金属箱の下に、馬車用の頼りない細い車輪がアンバランスに付けられている。でもまあ完成したならそれで良っか!


「とりあえず試作1号車ってとこかねー?せっかくだし名前付けちゃう?」

「せやなぁ。えらいちっこくなってしもたし、リトル君とかでええんちゃう?」

確かに結構小さい。そりゃもう本当に…あれ。

「あれちょっと待って、でもこれいくら何でも小さすぎない…?僕の身長くらいしかないけど…?」

「あ。」

ルイサさんを見る…これはノリノリで作りすぎた結果、根本的な所ミスしたパターンですかねー?


「あかん、やらかしたかもしれへん!これじゃ大人一人も乗せられんちゃうか!?」

うーむ、いくら試作とはいえ確かに不味いね。動かす人乗れなきゃ話にならん。

…と思ったのだが、ふと大丈夫だということに気づく。

「いや、全然問題ないや。アレル、お前乗れ。」

「お姉ちゃん!?」

「このサイズじゃ、小柄なアレルしか乗れへんのや。堪忍なぁ?」


私達は"リトル君"を押し、昨日龍を解体した広場まで移動させる。

「これ結構重い…!もうここで走らせれば良いんじゃないの?」

「いやここだと散らかりすぎだよ…流石にぶつけたくないでしょ?」

気づけばルイサさんは例の着る毛布を羽織っている。

そりゃそうだ、季節は冬。もうすぐ12月だしクソ寒い。

そういえばと思い出し、服についてる暖房石とやらを起動する…あぁあったかあぁあ…カイロだこれ…。


「よし、タイマーと計測器の用意もでけたわ。ほな、早速走らせようで!」

ということで弟くんが乗り込む…本当に狭そうだな。

「どう操縦するのこれ?」

「左から3番目のボタンに魔力を流すことでエンジンがかかるんや、後はそこにある4本のレバーがそれぞれの車輪に対応しとるで。速度調節とか色々そこでやるんや。」

流石にハンドル式では無かったかー。

いわゆるギアチェンジってやつだ。こんな複雑な機構一発で組むなんて…

…いやちょっと待って、これギアチェンジじゃない!歯車そのものを変質させてる!

多分魔法かなんかだろうけど絶対理解できないから考察するのはやめとこーね。


「じゃあ…エンジン始動させるよ!」

パン!パン!パン!パン!

炸裂音4回が鳴り響き、同時にエンジン始動。

私達の最初の戦車…のようなものが動き出した。



〜あとがき〜

作者に絵心がない!

ならば(見た目のイメージだけ)現実世界の車両を採用しよう!

ってことでリトル君の見た目のイメージは"リトル・ウィリー"です。画像検索でもして調べてみよう!

あ、あとこれはあくまで見た目のイメージ、商人さん世界のソレはまるで別もんだからそこんとこよろしくね!

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