2話:おそらく洗礼
樽の影から様子を伺う。
とにかく見つかっちゃダメ!なのは確か。頼むぞマジで…!
「どうだー?上は寒いかー?」
さっき来たおっちゃんが誰かと話してるな…ん?上?
「勿論寒いさー!だからとっとと登ってこいよー!俺もう下りるぞー?」
「わーったよ。下りてこい!俺登るから…。」
マストの上を見てみる。
あー…。
えっと誰かがゆっくりと降りて来ましたー。
…あ。
目があった。
私と彼の間に走る一瞬の一瞬のラグ。思考停止ってやつだ。
直後、私たちはすべき事を理解した。
「おま、ちょ待て!どうやって抜け出した!」
知るかそんなん!とにかく逃げるぞ!
樽を避けつつ、船尾方面へダッシュ!
扉から中に入り、近くのモップみたいな物でドアを封鎖する。
そして奥へ!奥へ!
あ、後ろからバキって聞こえた!
多分扉壊された!しかも一瞬で!
後ろを振り返ればいつのまにか追手は3人になっていた。
「お前らー!!奴隷が逃げたぞー!!」
いいって!仲間呼ばないでいいって!
てか、増えたやつが持ってるの…何あれ杖?
「『風は従う事を選び、我の力となる。【風波斬】』」
何か呪文的なのが聞こえた後杖が振られて…
あ何か緑色の衝撃波みたいなの出てきたぁぁぁ!てか何で色ついてるんだこれ!?
てそんな場合じゃ…!回避ぃぃぃ!!そりゃあ!
ギリギリ避けれた!緑のはすぐ横の壁に当たる。
バシィン!
大きな音とともに壁が割れて…いや、これ斬られた。
え何この威力!あ分かった魔法だ!分かったところでどうしろと!
そうしてる間に、あいつがまた何か言って杖を振る。
…軽く10を超える衝撃波が現れる。
ちょちょちょ!!
それ怖いからやめて!これ魔法だよね?風魔法だよね?
異世界に!よくあるやつだよ!気づいたんだしもう許して!
あ。船の端まで来ちゃった。詰んだ…!
ちょっと掠った!服破けた!痛い!絶対当たるの時間の問題!
後あいつらの目的捕獲じゃないの?
これ以上私を攻撃する意味なくない?もう追いつめらてますよ私!?
「降参しろ」とかなんとか言ってくれれば…いやそれより前にもう降参します!貴方の強さはわかりました!
あ「脱走者は殺せ」とかいう怖い思考の持ち主ですか!?
何にせよどうにかして逃げないとまずい!どうする!?
ふと、後ろを振り返ると大きな裂け目が目に映る。
あの斬撃がここまで掘ったのか…!イチかバチかここに賭ける!
裂け目に突っ込む!いっけええええええ!
そのまま私は海に飛び込…めなかった。
風魔法打ちまくってた奴達の、一番後ろにいた棒立ちのやつ。
何か深っかいフードかぶってる、闇属性の魔法とか打ってきそうな奴。
そいつが突然前に出てきて、呪文を紡ぐのが聞こえる。
「『探究者は遂に重力を操った。その力は今、我が中に。【重力支配】』」
瞬間、私の体が完全に止まった。
落下もしないし、体も動かせない。
と、突然再び体が落ち始める。
船の横壁に向かって。
引っ張られているのとはまた違う。だけど自由落下より遥かに速い。これやば…!
なすすべもなく私の体は船の外壁に打ち付けられる。
何が起こって…あ、意識…が…。
途切れた。
◇
……。
…。
…?
……はっ!
起きたぞ!おはよう!
結構長い時間気絶してたかもしれないなー。
何か気がついたら監禁されてたとか、そんな事ないよなぁ?
周りを見る…あー鉄格子だね。
はい。監禁されてましたとさ。
これは…マズいね。鑑定もそう言ってる。
────────
【奴隷販売所中倉庫】
────────
鑑定さんが答え合わせしてくれました!だったら私は商品扱いだね!
いやー絶望的!それなら…脱走だ!
何故かって?いやそりゃそうでしょ!
せっかく異世界にまで来たのにこんなところで終わって良いはずがない!
そうだよ異世界だよ!これは私は伝統に従ってチート能力を授かるべきなんだ!
なあ神!転生の醍醐味だろ!?出てこいや!!
出てこない…っと。
えーっと。どうやって脱走しよう。
周りを見ると、私は鳥籠のような何かに入れられていると分かる。
で、別の奴達も似たような鳥籠や、壁に固定されている檻に入れられている。
…あれこれだけ?
窓は?光源は!?何なら出入り口すら見当たらない。
そう、出入り口すらないのだ。出させる気絶対無いのだ。
あれか?魔法で出入りしてるのか?ここ異世界だし?
…あ、そうか。
そうじゃん!
私も魔法で出ればいいじゃん!転生特典とかあるっしょ!もう貰ってたオチじゃん驚かせやがって!
そうと決まれば早速鑑定だ出てこいステータス!
────────
【サリア・コール】
分類:人間
年齢:13
状態:通常
LV3
HP:11/11
MP:2/2
攻撃:8
防御:7
速度:9
魔力:3
自己スキル
【鑑定】【何か買っていくかい?4】【両替え5】【貯金3】
────────
え?→ え?⤴︎ え?⤵︎
誰よその女!いや自分!
何?転移後異世界人名でも違和感ないようにしたとか?そもそも私転移したことにすら納得してないんだけど!
だめだこんなの今考えてもわかるわけがない…。
とりあえず今は私のスキルがどんなものなのか見てみるか。
名前からしてお察しって気もするが…。
────────
【貯金3】
分類:一般基本スキル
入手条件:財布いっぱいにお金を詰め、その状態で取引
自分の所持金を異空間から出し入れできる。
スキル【アイテム・ボックス】よりも獲得が楽。
────────
【両替え5】
分類:一般魔法スキル
入手条件:魔導書から習得
自分の目に見える範囲内のお金を両替えする。
ランクアップで両替えできる種類が増える
両替え可能:【石貨(1G)】【鉄貨(10G)】【銅貨(100G)】【銀貨(500G)】【金貨(1000G)】【白金貨(10000G)】
────────
…へー。
あ、ちなみに所持金は2823G。1Gと1円は価値一緒みたい。
それと【両替え7】になると【大金貨(50000G)】と【大白金貨(100000G)】が増えるってさ。こんなにいる?
────────
【何か買っていくかい?】
分類:一般魔法スキル
入手条件:???
話しかけて来た相手に「何か買っていくかい?」と言う事で発動可能。
相手の目の前にウインドウを開いて、商品を表示する。
相手が望んだ商品を、素早く受け渡しできる。
表示可能:【商品名】【値段】【商品写真】【商品説明】
────────
うーん…商人だね。私。
RPGとかの商人ってこれ使ってたのねー…あの画面も本当に出てた…じゃなくて。
てかこれ魔法なのかよ…。
私今売る側というより売られる側だからどうしようもないけど!
────────
【魔法】
分類:用語
MPを消費して、魔力を操作する行為。
魔石を用いないと、魔力を操作できない。
魔力は魔法陣へと姿を変え、様々な効果をもたらす。
────────
【MP】
分類:用語
マジックポイント。魔力とは別の概念。
魔力とはこの世界の「流れ」そのものであり、操作することは代償を伴う。
これはその代償に耐えられる限界を数値化したものである。
睡眠などで休息を取るか、薬を飲むなどで回復する。
────────
便利だな、この検索機能。
まあ…この魔法じゃ脱出に役立つ気しないけどね!
魔石持ってないから魔法使えもしないし…。
となると…後は近くの人に協力してもらうしか無いかな。
あれだ、あの檻ならあんまり大声出さずに話しかけれる。
「えっと…ねえ、そこの君?…そう。君。」
声を抑え目にして話しかける。
…相手もこっち気づいたようだ。
「あれ?お姉ちゃん?」
隣の檻の少年そう聞き返してきて…
「え?」
…オネエチャン?私に弟はいないぞ…あ、もしかして…
そっと鑑定を使う。
────────
【アレル・コール】
分類:人間
年齢:11
状態:通常
LV2
HP:8/8
MP:2/2
攻撃:6
防御:5
速度:7
魔力:2
自己スキル
【鑑定】【何か買っていくかい?1】【両替え4】【貯金1】
────────
「本当だ。私が…お姉ちゃんだ。」
苗字が一緒だ。アレル君、11歳と。
ってなるとこいつ弟なのか…は?
何なんだ?でも苗字が一緒なだけの他人ってのは無さそうだし…。
えどゆこと!?
そうして訳がわからないまま、私は弟(?)と合流した。
〜〜あとがき〜〜
ちなみにこの世界の金の価値は、金貨一枚1000円になるくらいには低いよ。
この世界は錬金術があるからね。日本にも欲しいね。
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