3話:姉弟っておねショタなのか?

「良かった!もう会えないかと思ってたよ!でもいきなり鑑定なんて…僕のこと忘れちゃった?」

「ああー、うん…。」

さっきも言ったけれど私に弟はいないんですよー。

…でも私の本能が言ってる。本当に血が繋がった弟なんだよーって。


うーっむ。

…異世界在住のサリアさんだっけ?の体に私の意識が乗り込んじゃったとか?

魂だけ異世界転移ってこと。だから体とか家族構成とかが全くの別人でも、意識と記憶は私!…的な?


…自分でも何言ってるかわかりません!

結局この疑問も保留だよ!うがー!

まあ、とにかく彼は「弟くん」って呼んどこう。脳内でだけ。


「お姉ちゃんどうしたの?いきなり鑑定とかするし…ってか鑑定石持ってないじゃん!今日のお姉ちゃんなんか変…?」

「あーえっと…ほら暗かったからさ、ちゃんと確認しとこうと思って…それにこの状況で変にならない方が凄いよ。」


実際はわずかな明かりで弟くんの顔は見えてる。

やっぱ知らない顔だな…まあ私弟いないし覚えてないのも当然…ん?

…いや、覚えてる…?思い出した…?

記憶は様々なものと紐づいている。故に自身が見た内容や経験から記憶が戻る事がある。

今、弟くんの顔を見る事で思い出した事がある。でも私のじゃない。

じゃあ身体の元の持ち主…サリアさん…!?


サリアさんの記憶を掘り起こしてみる。

どこかの家の景色だ。今いる国から海を挟んでずっと行ったところ。

記憶によるとこの星は地球そっくりの形で、オーストラリアの西半分みたいな感じの国に私や弟くんの家があるらしい。

国の名前は…何?オース?東半分はラリアって言うんだって。何じゃそりゃ!

で、オース国で我が家は代々商人やってる…と。

最近はサリアさんと弟の2人で、ダンジョンの入り口に行ったりして、ポーション類を売ってたみたい。


ダンジョン…モンスター…こう実際にあるとなると…なんかね?

モンスター普通に怖い。私たちLV3とLV2だし…死ぬし。

この世界での私の両親、赤字じゃないならそれでヨシ!的な思考してるから、どんだけ過酷な環境でも売りに行かされる。

さらに人件費がめちゃくちゃ低い。

そう、たとえ馬車3日の距離でも徒歩で売りに行かされる。

なんということだ…。


そしてあぁ…数日前の記憶だ思い出した。

なんとか商品を売り切って帰ろうとしたその時。

行く手を塞ぐは人攫い!

5人ぐらいいるし、他に助けてくれそうな人いないし!

で、サリアさんたち2人とも、3秒くらいで捕まった。

誇張みたいだが、本当に3秒だった。


その後は…運ばれた。

商船にこれでもかってぐらい人間が詰め込まれ、みんな奴隷として輸送されてたんですねー。えぐ。

なんとか私だけ逃げ出したところで…"私"は目覚めたと。


「…どしたの?急に固まって…。」

弟くんが不思議そうに聞いてくる。

「あー、ずっと考えてた。弟くん連れてこっから出る方法。」

「弟くん…?」

「あ。…えっとそこは気にしないで言い間違えた。」


まずいまずい!あんま弟くんには中の人が違ってるってバレない方がいいよなー。

だって記憶をざっと見ただけでもこいつかなりのお姉ちゃんっ子だとわかるし、そんな本当のお姉ちゃんが行方不明なんて知れたら…。

本当のお姉ちゃんじゃ無いけど嫌だ。私の精神的に。


「で、なんか方法ありそう?」

「それが分からんのよねー。」

全然疑われないな。特に演じてるわけでも無いのに。

サリアさんと私って…もしかして似てる?

いや、なんにしてもまずはここから出ないと。


…あ、そういえばサリアさんはどうやって船底の牢屋みたいになっている部屋から脱出したんだ?

あー…ね。

商船に鉄格子は無い。

逃げるのを阻止するのは今も私の足についているやつ…"拘束の輪"。


これのデバフ効果を最大にまで出して、ステータスを体を動かすことすら難しいレベルまで下げるみたい。すばやさ0!

それでサリアさんがどうやって無効化したのかというと…


ーーーーーーーー

【マジック・インバルド・クリーム】

分類:魔法薬

塗った魔石の魔力操作を妨害する。

最終的に魔石の全てを蝕み、ただの石ころにしてしまう。

魔石に直接塗る必要があるため、大半の魔物には使えない。

ーーーーーーーー


わあ、すっごい!

まるでこのためにあったかのようなクリーム!

そんな都合のいいクリーム2個も3個も持ってない!

あ、私の拘束の輪は私が気絶してる間に新品のになってましたねー。はーい。

あとご丁寧に軽めのデバフまで発動してるしー!ちょっと体が重い!


うーん…参考にならねぇ…。

「そもそも私この部屋の出口が何処にあるかすら知らないもんなー…。無謀にも程があったかなあ…。」

「えっとね、部屋の中央に檻が無い所があるじゃん?あそこにね、【短距離転移陣】があるんだと思う。」

「うんうん…詳しいなお前。」

「本で読んだ事があるんだよ。【短距離転移陣】は向こうからしか起動できないようになってて、向こうで起動させるとこっちに魔法陣が浮かび上がって…」


弟くんが言い終わらないうちに、唐突に部屋の中央から紫色の光が差し込んできた。

見ると丁度弟くんが指さす所に魔法陣みたいな円…てか完全に魔法陣だなこれ…が現れていて、それが紫色の光を発している。

「うわでた。」

直後、魔法陣の上に3人のおっさんが現れましたー。


「…そう。あんな風に出入りしてるの。」

弟が小声で私に話しかける。

おっさん3人は何かを話し合った後、ポケットから鍵の束を取り出す。

で、その鍵で1人目がこの部屋の檻の扉を順に開けていく。


私と弟くんのは開けられなかった。

そして中の人を、それこそ物のように2人目が引っ張り出す。

3人目が魔法陣に投げ込む。どこかに転送される。

むごい…地獄絵図だよ怖いよ…。

「多分…『出荷』だね…。僕達の番はまだっぽいけど…。」

こええ…助けてリンカーン…。

やがておっさん3人が去って行った時、この部屋の檻にはほぼ誰もいなくなっていた。


「あ、言い忘れてたけど…」

弟くんがまた小声で口を開く。

「この部屋ってどっかから監視されてるのね?だからあんまり大声を出すと丸聞こえになる。」

これ以上協力者を増やすのは無理…ってことか。


「…あ、そう言えば魔導袋ってどうなったん?」

「とられた。【アイテム・ボックス】とかさ、スキルの力で物をしまう系のやつだったらあいつらも奪えないんだけど、そんなレアスキル僕ら持ってないもん。多分奴隷商店の小物用の倉庫みたいなところにあるんでしょ。」

知ってた。て言うか【アイテム・ボックス】ってそんなレアなんだな。


…ん?

…あれ?ちょっと待って?「スキルの力で物をしまう」?

気づいてしまった。

【貯金】から金貨と銀貨を取り出す…あ!

あっれま魔石埋め込まれてるじゃないですかー!!

偽造防止か装飾か。否、これは私達の為にあったんだ!

「…弟よ。」

「ん?何?」

弟くんが怪訝な顔をして振り返る。

「お前さ、お金っていくらくらい持ってるの?」

「…?あー、1500Gだよ。僕の【貯金】で貯めておける最高金額。でもどうしたの?」

なるほど…だとすると私の2823Gと合わせて4323G…銀貨4枚分プラスアルファ…いけるぞ!


「…弟よ、私閃いてしまったかもしれない。」

多分私は、すごい楽しそうな顔をしていたと思う。



〜あとがき〜

魔法について

魔法の打ち方講座!

後々作中で詳しい解説が入るけど、ざっくりとだけ。

・魔石を持つよ。

・(魔石を体内の魔力器官として持ち合わせてない例えば人間なんかは)呪文と技名を言うよ。

・魔力エネルギーが魔石に流れて、魔石で魔法に変換されるよ。

・ここでMPが消費されるよ。基本的にMPは非戦闘状態時に休憩する事で回復するよ。

・魔法陣が展開するよ。魔法陣を維持し続けるには常に魔力を消費し続ける必要があるよ。

・魔法が発動するよ。

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