42話:超異世界流!魚雷の作り方!

「ルイサやーい!どこだ!?どこ!?」

「お姉ちゃん!気づかれたらどうするの?」

やべっ。でもどう探せばいいんだ?

村を車両で爆走してても、見つかる気がしない。

もう既に日は沈み、明かりは燃えている建物の残骸と上陸してきた敵兵の松明とかのみ。

その松明も次々と上陸を続けている。呼んで探すのはもう無理だ。


魔導エンジンが静かでほんと良かった。でも限界があるよこれ!

見つけなきゃ…もう時間が無い…頼む!

えっと何か…手がかり…あ!

「わかったアレル!左だ!」

「え?そっち道は…」

「左!」


最高速のまま、ホワイトキャットは急旋回。そのまま建物の扉を突き破る。

扉の先は…階段!?下階段を落ちるように進み…更に壁に突っ込んで止まった。

えっと到着…?


「おっ、やっと来よったか。待っとったで!!」

「ルイサ!!大丈…夫…。」

ルイサは私たちに気づくと、近づいてきて…

…車両横の道具箱から加工用ハンマーを取り出した。

あ、あの。

「さあさあ早速始めるで!あんたが装甲車と現れるのは想定済みやし、道具無しでもできることは既にやっといたからな!」

「えっちょあの感動の再会とか…まーいーけどさぁ。」

「それで、始めるって何を?」

うだうだ言ってる私に代わり、弟くんが話を進めてくれる。


「そりゃうちらが今できることをやるだけやろ?ウチらはパン屋でそれから技術者やけん、新兵器で戦況をひっくり返すんや!」

そ、それで設備の揃ったここに残ったのか…1人で。

「…これ私たちが来なかったらどうするつもりだったのさ。」

「…?来たやろ?」

ルイサはけろりとそう答えた。

「あと仮にその新兵器ができても誰が使うの…?味方はもう退いたしそれに…。」

「というか使い方教える時間もないしうちらやな。安心しぃ?さっき隠し通路はだいたい把握しといたで。」

なんの疑いもなければ、当然嫌味でもなんでもない。

やめて、そういうの私弱い。主人公気質というか自分で全部抱えてるというか…。

弟くんもだけど背負いすぎなんだって…なんでそこまでやる気になれるの…?


まあ今は仕方ないか…もう上では敵兵が練り歩いてるだろうし、頭から突っ込んだ装甲車を動かせるかもわからない。かといって友軍の再攻撃まで待ってたら、いつ捕まってもおかしくない。

自力で戦って脅威を排除するのが最善か…。なら。

「はじめようか?」


いよっしゃ!そうと決まれば切り替えて…って簡単にできないところが私の嫌なところなんだけど。そうは言っても。

「ほな、この加工用ハンマーはあんたに任せるわ。んでまずは…。」

「待って待って。そもそも戦況ひっくり返すつったって何を作る気なのさ。」

「そりゃ、1番でっかい船を1番でっかく爆破するんに決まっとるやろ!つ、ま、り、これや!!」

ルイサは壁に差し込まれたパイプのようなものを掴み、力一杯引っ張り出した。

「えっと…何これ?」


────────

筒爆楔とうばっけつ

筒状の爆薬を射出し、直後に起爆する兵器。

射出するだけでも中型龍の鱗を貫徹する程度の威力はある上に、炸薬量もなかなかある。

ただし射程はかなり短く、直接起動する必要がある。

────────


思い出した!さっきなんか上陸してきた敵を吹き飛ばしてた…はず。

「『敵は圧倒的物量に見えて、都市同士の連携は取れていない。海からしか敵が来ない上に3隻の戦艦のうち2隻を出してきたのがその証拠。』…なーんてエミリなら今頃言っとるんやろな。つまり一番でかい戦艦のどっちかさえ倒せば、残りの敵はもう一隻の戦艦で丸ごと帰ってくれるって算段や。向こうの都市にとっては、戦力の三分の一を失ったも同然やからな。」

「それで筒爆楔の出番なんだね。僕の見立てだとあの戦艦なら一本でも直接命中させれれば倒せると思う。」

「えぇ、直接・・…。まさか小舟にでも乗って突撃でもするわけじゃないだろうね。私!嫌だよ!」

「何言ってんねん。技術と叡智を重んじるうちがそんなんするわけないやろがい。筒爆楔を直接飛ばす…そんでヒューっと行ってドーンで終わり!なっ!派手で簡単そうやろ!」


ミ、ミサイル…!?

そ、そんな物騒なもん…。

それさ…それってさ…。

面白そう!!!ルイサのトンデモ技術が見れるって事でしょ!?

朝のパンで一目惚れした!戦車を作って確信した!この天才の技がまた見れる!!


「よし作ろうやってやろう!!」

「急に態度変わっとんなー。でも、そう来なくっちゃ!やな!」

「…僕は入り口を見張っとくよ。いつ何がくるかわからないし、それに装甲車を修理しなきゃ。」

弟くんは破壊された入り口をどうにか瓦礫でカモフラージュすると、壁に突っ込んだままのホワイトキャットを確認しに行く。

「操縦手が修理も詳しいのが一番やからな。一応横の箱に設計図も入っとるけど…これを作ったのはうちらやけんいけるやろ?」


無茶振りされてる…弟くん、がんばれ。

とにかく私たちはミサイルに着手しよう。

「っても流石に飛ばすのは無理があるんじゃない?」

「昔作った花火の応用で行けると思うんやがな…重さは飛翔石で誤魔化して…いやでも、それだと魔力エネルギー発生装置が…。」

眠才のルイサが悩んでるんだ。私が同じ考え方をしても追いつかないだろう…ならば私は別な角度から考えるべきだ。


「あっ魚雷。」

「なんて?」

「魚雷だよ。私の故郷で船を攻撃するなら、そういうのもあったなって思ったんだ。つまり筒爆楔みたいな筒状の爆弾に、水中を進ませて敵にお届けする兵器。」

私は落ちてたチョークみたいなのを使い、壁に絵を描いて説明してみせる。

ルイサとも思考共有ができれば良いのに。


「ふむ…ええなそれ。でもどうやって水中を進ませるんや?」

「えーっとあんま私も詳しくないんだ。戦車の時みたいに名前だけは知ってるけどみたいな。」

私が地球にいた時の記憶は、ほとんどどーでもいい雑学ばっかしだし、昔からそういうのが好きだったのも覚えてる。けどまぁ限界はある。


「ま、確かに筒爆楔をそのまま利用できそうなのはええとこやな。そもそもコレの開発者は、そういうの魚雷を目指しとったんとちゃうか?」

「そうかも。あっ、スクリューってのつけたら?えっとスクリューはプロぺらの水中版で…あっ、プロペラってのは…。」

「まあとにかく手を動かしながら考えるとしよか。加工用ハンマー出して?」

そうだ、さっき投げ渡されたんだ。こんな重いの投げないでよ…。

「えっと…これか。」

「確かアンタには龍の素材剥がしの時に貸しとったよな?でもこのハンマー…カギアって言うんやが、それの真髄はまた別にあんねん。つまり…。」


ルイサは横に畳んであったもこもこの服に手を突っ込み、一冊の青い本を取り出す。

「つまり…?うわああっ!」

本を受け取った瞬間、脳に情報が流れ込む。

幾つかの魔法。

「魔法の押し付け。それこそこのハンマーの真髄や。威力が低かったり、本来付与できない魔法を無理やり内側に打ち込めるで。」

「あぁ、この本前にポーションについて書いてたのと同種のやつか。持っただけで情報が入ってくる…。」

「せや、うちはノートとして使ってて、こんなこともあろうかと生活魔法を幾つか書いといたんや。スキルとして修得しとらんけん威力も無いやろうけど、打ち込んだら関係無しや!」

へぇ…。


例えば【調合】…【保存】…【鍛錬】…【精錬】…【硬化】…【軟化】…【液状化】!?

生活…魔法?

ま、まあ、加工に便利なのをルイサがピックアップしてたらこうなるのか。いやでも液状化て。


まぁ、ものは試しだ。ってことでとにかく何かやってみることにする。

だって私ら1から戦車作ったんだよ?試行錯誤を繰り返せば魚雷くらい作れるに決まってる!


そのまましばらく時間が過ぎた。


「そういえばサリア…アンタはなんでここ気づいたん?まあアンタは意地でも来ると思っとったから」

「えっと、何か青っぽいというか松明のと違う光が見えてさ。"るいさのぱんや"でみたのと同じ色。」

「錬成炉やな。青い炎で鉄を溶かしたり魔石を加工したりパンを焼いたり…とにかく物作りには欠かせない魔道具や。この要塞のはなかなかいい性能しとるけん、ポテンシャルはあると思うんやが…。」

「やが?」

嫌な予感。

「駄目や、調合がどうも上手くいかん。そっちの加工はどうや?」

「駄目。加工用ハンマーの扱いには慣れたけど、どうにも形が歪んじゃう。」

「あぁ…。」

戦車をつくってた時とはまた違う、終わりのまるで見えない感覚。

おいなんだ!!スランプ!?は違うだろうし…。

なにか、なにか衝撃の走るようなアイデアが必要なんだけど…なにか…?

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