14話:商人ギルドと冒険者ギルド

「ほーう。なるほどねー。」

エリウルスに着いた。

大きな両開きの木の扉があって、看板にエリウルスって書いてある。

「じゃあ入ろっか。」


弟くんが腕に所属紋を出して、扉の真ん中にかざす。

すると小さな音が鳴り、扉が開いた。

やり方分かんないお姉ちゃんでごめんよ…とにかく弟くんに続いて入る。


…へー、中こんな感じなんだ。

あちこちに小さめな机とか椅子とかがバラバラに置いてあり、たまに[総合案内1〜3]とか、[依頼受注][依頼発注][プチオークション][商品預かり][預金][販売許可証発行]…他にも色々あるな。

とにかくそういう札の付けられた机があちこちにある。


そして弟くんはまっすぐ、[総合案内2]と札が付いた机に向かう。

因みに[総合案内1]にはもう誰かがいた。意外と混んでる。ここ。

で、[総合案内2]の机の上に置かれていたベルを鳴らすと、奥の扉から青年が1人出てきた。


青年はこっちへ歩いてきて、私達の向かいの席に座った。

胸元のネームプレートを見ると、[ベント・ローム]と書いてある。

これが青年の名前かな。

「こんにちは。見慣れない顔だけど、所属紋見せてもらって良いですか?」

「ほいほい。」

所属紋を出して、ベントさんに見せる。ほーれほれ。


「あー、オース国からですか。随分と遠くから。今日は行商ですか?」

あー。

「えーっと…うん!行商…かな?」

奴隷にされたんで逃げてきましたとか絶対言えない。

「分かりました。因みにどんな種類の商品を持ってきたんです?」

「あー、食料品なの…かな?お肉とか。うん。」

嘘は言ってない。


「なるほど。ではお二人はここに来るのは初めてなので鑑定情報の記録をします。この鑑定石に触れ、魔力を流して自身を鑑定すると情報が自動でこちらに記録されます。」

ほーん。門の時と微妙に違う。

いちいち許可を取るよりは、商人自身に鑑定させた方が楽ってことかな。

「えーと、魔力を流すんですよね。」

「そうです。」


じゃあ魔力を…これMP1持ってかれるから地味に嫌なんだよね…。

でっかい鑑定石にくっついてる画面に情報が返事される。

えーっと【ベント・ローム】…あれ。画面消え…


「ちゃんと伝え方教えた方が良かったですか?」

「!」

後ろ…取られた。

いつの間に…っていうか私この人のこと鑑定してるやんやっべぇ!!

「大丈夫ですすみませんすみません!!お姉ちゃん!!よく分かってないのに勝手に魔力流さないで!!」

弟くんがめちゃめちゃ慌てている。

「ご、ごめんなさい!!」

宣戦布告する気なんかないからあ!

「気をつけてくださいね。対象選択が先、魔力を流すのが後です。」

「は、はいー!」


今度はちゃんと自分の情報を提出した。

そしてその後は商人向けの依頼(商人ギルドもラノベーでよく見る冒険者ギルドみたいに依頼が来るらしい。)で良さそうなものを選んでもらっている所だ。

窓口も[依頼受注]って所に移動してる。


『さっきさ、一瞬見えたんだけど受付の人、双子だったね。』

『そうかもしれないけどそう言うのは早く忘れた方がいいよ!』

そんなやばいのか…。までもちょっと気になるから鑑定で検索しちゃお。


────────

【双子1】

分類:一般スキル

入手条件:双子として生まれる。

双子として生まれた2人のお互いに送られるスキル。

彼等の所得経験値、HP、MPはリアルタイムで共有される。

また、彼等がお互い近くにいると全ステータスが倍になる。

双子として生まれたなら、決してこのスキルを受け取らないことも消すこともできない。

────────


うーわすっごいステータス倍だよ倍!

それであんな動きが速かったのかな…って言うことは双子の片割れもギルドにいるのかな。確かに窓口って情報共有大事そうだよね。

多分思考共有とか持ってるんじゃ…えーっと…

「お待たせしました。こちらがあなた達が受けることができる依頼で…オススメはこれです。」

おっとロームさんが書類を持って来たか。その中の一枚を私達に渡してくる。


「なるほど、随伴依頼ですか…確かに今の僕たちなら行けます。」

受け取った書類を見た弟くんは、少し悩んだ後行けると答えた。

「良かったです。ではこちらにサインを…。」

『ちょっと待って!私がわからないところで話進めないで!』

随伴依頼ってなんなのさ!

『今までの僕達もやったことないからね。「行商に来てほしい」「買い取って欲しい」みたいなのとはまた違って、冒険者のパーティについて来てくれって依頼なんだ。』

『そりゃまたどうしてさ。』

『【アイテム・ボックス】とか【魔法袋】とかは結構レアで、商人が持ってることが多いんだ。だからざっくり言うと僕らの仕事は荷物持ち。【何か買っているかい?】を持ってるとさらに…ってロームさん待たせてるからサインしちゃお。』


弟くんが契約書にサインを書き込む。

この契約書は宿屋の時のとは違って特別な魔法で錬成されていて、サインすると一定期間の間絶対に契約を破れなくなるとか。怖い。

私も弟くんに教えてもらいながらサインを書き込む。


契約書を受け取ったロームさんが何か呪文を唱えると、魔法陣が現れ契約書が複製された。

そのうちの片方を受け取る。

「これで手続きは終わりです。お疲れ様でした。」

「よし、じゃあ行こっかお姉ちゃん。」

依頼を受けた私たちは、商人ギルドを後にした。


「で、これからどこに行けば良いのさ。」

「ここ。」

弟くんが契約書の一部を指さす。

えーっと、[集合場所:大体ギルド内酒場の奥の席らへんにいるかもしれない。]と。

「わー。とてもわかりやすいー。」

「皮肉言わないでよ。とにかく行かないと始まらない。」

「まーそうだろうけど。じゃあ行くか…ギルドってのは多分冒険者ギルドだろ。場所は…」

「そこ。」

えっ。


────────

【冒険者ギルド:エレー・ロセフス】

サントウルス王国のごく一部に展開するギルド。

展開する地域こそ狭いが、他のギルドが一切介入できないほど濃くその地域と結びついており、地域内の都市や村のほとんどに支部が存在する。

情報を共有する能力が最も優れており、適した冒険者や軍を即座に派遣できることから、展開地域内の魔物被害は物凄く少ない。

機能は一般的な冒険者ギルドと同じだが、くにからのいらいがあったりする。

因みにこの名前は、設立者の故郷の言葉(方言)で『絶対的な牙』

────────


真向かいじゃねえか…。

確かに言われてみれば、狼が蛇に噛み付く紋章?みたいなのが描かれた旗が飾られている。ちなみにエリウスルスの紋章は金貨をくわえた鳥ね。


「行ってみるか…。」

「変な人に絡まれるかもだから、気をつけてね。」

確かにそんな雰囲気はある。ドア開けっぱなしだし。

中に入ると、商人ギルドとは全然違うことが一目でわかる。

なんというか、酒場と窓口が合体してる感じ。

ありらこちらに酔っ払いがいるよ…苦手なんだよねこーゆーの…。


「奥って書いてたよね…ここを歩くのか…。」

「こんな場所いくらでもあるから慣れた方が良いよ。」

まじかよ…。

少し歩くと、待ってましたと言わんばかりに酔っ払い達が絡んでくる。


「おいガキ!ここはお前らが来ていい場所じゃねえんだぞ。」

「なんだあ?保育所ならあっちだ間違ってんぞ!」

いや確かに!確かにギルドでで主人公舐めたやつが絡んでくるのはあるあるだけど!

今そういうのいらない!そういうテンプレはよそでやって!

「おい無視かぁ?舐めとんのか!?」

いやでもテンプレ通りならどうせこいつら噛ませ犬…。


「おいお前ら。その辺にしておけ。どうやら嬢ちゃん達は俺が依頼した相手のようだ。」

「ボルタスさん!しょうがねえ。アンタの顔を立てて引いてやるよ。」

あ、下がってった。

それよりこの人、自分が依頼したって言ってたな。ってことは私達はこの人を探してたわけだ。

「俺はボルタス。一応パーティのリーダーやってて、ランクはBだ。」


ランクねえ。ラノベーではお世話になってます。

周囲の反応を見るに、ボルタスさんはなかなか強いのだろう。

だけど多分ギルドの切り札はもっと強い。Aとか。

え?S?あんなん無双系主人公のためだけに存在してんだよ。


そんなどうでもいいことを考えている間に、私達は席に案内された。

席にはボルタスさん含め、3人が座っている。

「セルスです。」

「クルメですっ!」

「ボルタスだ。パーティ名は【熊猫】って言って、パーティ単位だとランクがBのプラスになる。」

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