23話:『暗(以下略)
「シールド割れてるー!!」
まじかよ!どうせビームだろ悪夢のビーム!
龍は体を光らせつつ一気に急降下する。まさか!
龍が家々目掛け黒炎を放つ。建物は一気に燃え上がる。
まずい、このままだと被害が拡大する一方だ。しかしさっきの弓兵からの攻撃が今はもう無い!
『お姉ちゃーん…!』
つまり今龍に何か出来るのは私のみ!私しかいないんだ!
『お姉ちゃん!』
どうする!?こうなったら身を挺して口を塞ぐか!?いやしかし!!
「お姉ちゃん!お姉ちゃんってば!」
ちょっと待て、今弟くんの声が聞こえるのはおかしい!
さっきは頭の中に響いた気がするし…まさか幻聴!?
そう思って周囲を見渡すと、一機の気球が浮かんでるのが見えた。
あ、乗っているの弟くんじゃん!それともう一人は…。
女騎士だーーーーーーーーーー!!
まじか!いやいるよな!ここ異世界なんだから!
状況がもうちょい良かったら握手でもして写真とか撮りたかった!
ラノベー読んで憧れてたんです!私!!
龍は気球をギロリと睨みつけつると、周囲を旋回しだした。
これは…相手の様子を伺っているな。サイズとか、強さとか、敵意とか。
女騎士さんが口を開く。
「サリア・コールよ!私はルースー領軍第二大隊長、エミリ・ルースーである!直ちにお前が操る龍を撤退させ投降せよ!さもなくばお前の頭を撃ち抜く!」
エミリさんは杖を取り出すと、私に向けて構える。
って杖の先端に魔法陣展開されてるーーーー!!
「え!?いやちょっと待…!」
エミリさんは杖を構えたまま続ける。
「しかしだ!彼にはまた違った作戦があるという!よってお前達に3分の猶予を与える!…さあ、話したまえ。」
エミリさんが言い終わるか終わらないかのうちに、弟くんが気球の籠から身を乗り出し、大声を張り上げる。
「お姉ちゃん!時間ないから端的に言うよ!龍の顎の下の所に、逆鱗っていう上下逆の鱗があるんだ!すぐ下に魔石があっていわば弱点!だから今から逆鱗を剥がすよ!」
「剥がすって…その逆鱗とやらがどれかも分からないのにどうやって!?」
「あいつが炎を吐く瞬間体が光でしょ?それを見極めるんだ!」
鑑定してみると龍のMPは14/175。
飛翔魔法の分を引くとビーム一発MP50くらいか。もう撃てないってことだな。
「あと流石に素手じゃ無理だよ!私武器も道具も持ってないよ!?」
そう私が言うと、弟くんは持っていた魔導袋から何かを取り出す。
「このノミと槌を使うんだ!…待ってて!『【何か買っていくかい?】』」
私の眼前に表示されたウインドウ。それを見て私は弟くんの作戦を察した。
私もさっきやったから分かる。弟くんは何か買っていくかい?を使って、私のところまで直接届けにいくつもりだ。
「無理だよこれは!この距離だよ?それに龍は高速で飛行してるし届かないよ!」
何mあると思ってるんだ!?
「今はもうこれしかないんだ!これが無理なら軍がお姉ちゃんを殺しちゃう!」
「で、でも…!」
「お姉ちゃん!信じて!」
弟くんがまっすぐと目線を向けてくる。
それを見ていると…なんだか…。
私達はすでに姉弟だ。
目と目を見て分かり合うなんて、造作もないことでしょ?
「わかった。わかったよ。信じる…からね?」
私は大きく息を吸い、そして眼前のウインドウに『購入』と指示を出した。
「はああああああ!えい!!」
弟くんが思いっきり籠を蹴り、一気に跳び出す。
狙うは龍の頭の少し先。なるほど、偏差ってやつだ。確かに正確に龍の飛行を予測している。
しかし、偶然か必然か、その瞬間だけ龍は少し翼を大きく動かしたんだ。
弟くんの体が、風に煽られてバランスを崩す。
「アレル!!」
まずい!!
そう思った時、私の動きは今までにないほど、ポーションで加速した時よりも早かったと思う。
即座に腕に巻き付いた龍に体を固定している、フックショットのワイヤーをほどく。
そしてそれを足に巻き付けると、私は弟目掛け、空へと飛び込んだ。
伸ばした手が、ギリギリのところで弟の手を掴む。
今私を支えるたった一本のワイヤーが足に食い込む。痛い。というか感覚がない。
それでもなんとか弟を引き上げられたのは、私の意地だろうか。
「ふう、ノミと槌、確かにお届けしたよ。お姉ちゃん。」
「アレル…お前私が受け止めるのまで計算して跳んだのかよ…。」
「えへへ…まあまあ、それより今は逆鱗を探さないと。」
と、にわかに龍の体が光りだす。
新たに自身に乗った矮小な存在を、まとめて焼き尽くそうと思ったのだろう。大きく首を振り、私たちに狙いを定めようとしている。
「今は首の下にいるから炎は来ない!焦らず探そう!」
鱗のパターンを確認して…目を凝らして…。
「あった!!」
ノミを逆鱗の隙間に差し込み、槌を叩きつける。
逆鱗はいとも簡単に剥がれ落ち、その下から宝石のような結晶が姿を現す。魔石だ。
「で、こっからどうするの?昔使ったクリームとか、持ってないよ?」
このままだと焼け死ぬんですがそれは。
「大丈夫!すぐに地上から支援が来るから…。」
え、地上…?
◇
視点:3人称視点
兵士が見守る中少女がひとり、銃を構えて空を仰ぐ。
彼女は真剣かつ冷酷な眼差しで、標的を確認する。
「距離145m。的は直径30センチ。風無し。対象の速度は時速300km程か…私も舐められたものね。」
彼女はそう呟くと、火縄を着火し、火蓋を切る。
彼女は最後に息を大きく吸い込み、引き金を引いた。
「ふう…これで仕事終わりっ!」
そう言う彼女の表情は、既にいつものそれに戻っていた。
◇
視点:商人さん
「来た!」
「えっ?」
次の瞬間、突然魔石にヒビが入り、一気に砕け散る。
マジかよ!え、なんで!?何が起こった!?
「グァオオオオオオオ!!」
龍が苦悶の雄叫びを上げ、振り回される首から放たれる黒炎はあらぬ方向へ飛んでいく。
龍を支えるように大きく展開していた魔法陣が消えていく。飛翔の魔法だ。
魔法陣が完全に消えたと同時に、龍は落下を始めた。
「想像はしてたけどこれ私達も落ちるよね!!」
「お姉ちゃん僕に…ていうか僕が手に持ってるやつに掴まって!」
え、これ?これに掴まればいいの?
弟くんがボタンを押すと、一気に袋状のものが展開されて落下速度が減少する。
「…なるほど、パラシュートね。これ一人用じゃ…。」
「龍騎兵の人から貸してもらったんだ。僕達なら軽いから大丈夫。」
ふと下を見ると、門のすぐ外に龍が落下するのが見えた。
即座に弓を持った騎兵が出てきて、囲って止めを刺す。
討伐成功…ってことかな?
〜あとがき〜
兵士の種類について
色々いるよ!
歩兵:なまみのにんげん
弓兵:弓矢ぶっ放す
軽騎兵:馬に乗って剣や槍をぶん回す
重騎兵:重装弓騎兵とかいうジャパニーズ・サムライ
竜騎兵:飛竜に乗って空中戦闘を行う
魔術兵: 魔法使い
衛生兵:お医者さん。かつては補給部隊も担っていた。
偵察鑑定兵:独立して情報収集を行う
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