第39話 幼馴染のイジメっ子3姉妹


 風呂から出た俺は、(なぜか宮子が持っていた俺の)私服に着替えると、またリビングに戻ってきた。

 リビングでは宮子と遥が食卓で紅茶と俺の持ってきたフィナンシェでお茶をしており、宮子との胸殴りで負けた美波はまだ床に倒れたまま気絶していた。

 お互いの胸をぶん殴り合っただけで、いつまで倒れてるんだよこいつ。


「風呂、ありがとな」

「雄一、さっきはごめん」

「いつまで気にしてるんだよ。俺は最初から怒ってすらないぞ」

「でも」

「それよりも、この後何するんだ?」


 宮子だって俺を家に呼んだのに何もしないでボーッとするわけでもあるまい。

 まあSE●とか言い出したら帰るが。


「もちろん4●SE●!」

「帰る」

「冗談だから! 待ってよ雄一くん!」


 宮子は帰ろうとする俺の腕を引っ張りながらも近くにあった割り箸を俺に見せる。


「よし! 王様ゲームやるよー!」

「いいわね! やるわよ雄一!」

「ええ、王様ゲームぅ……?」


 俺は嫌すぎて苦い顔をする。


「なんでよりにもよって王様ゲームなんだよ。もっとマシなのないのか?」

「なら雄一くんはツイ●ターの方が良かった? わたしの身体を存分に味わえるほぼSE●ツイ●ター」

「王様ゲームで」


 宮子のことだ。

 ツイ●ターなんてやった暁には、どう足掻いても俺の股間にあいつの顔が当たるように仕向けられる決まってる。


「むにゃ……みんな、何やってる?」


 美波が起きてきた。

 どうやら気絶というよりも寝ていたようだ。


「これからわたしと遥と雄一くんで王様ゲームをやるけど、美波もやる?」

「やる、ユウを守らないと」


 んなこと言ってどうせお前も加害者側に回るだろ。

 これまで守る宣言をした後に裏切る確率はほぼ100%なのをこいつは忘れたのか?


「じゃあ準備として、この割り箸にわたしの口紅を付けてっと」


 宮子は割り箸を一本いやらしく舌を絡めて舐め始める。


「いや、舐める必要性はないだろうが」

「もー、雄一くん? もしかして自分の棒とリンクしちゃった?」

「してない」


 宮子は「もぉー」と不満を垂れながら割り箸の端に唇の口紅を移し、近くにあったボールペンでほかの割り箸に数字を書いた。


 俺は遥の隣に、美波は宮子の隣の椅子に座ると、4人で食卓を囲む。


「じゃあみんなー、やるよー」

「ちょっと待て」


 俺は宮子の号令を遮る。


「言っておくがキスの命令は禁止な。俺はここの誰ともしたくないし」

「「「はあ!?」」」


 いつもバラバラな3人が珍しく声を重ねて反応を示す。


「先生! SE●はいいですよね!」

「論外」

「そんなー」


 当たり前だろ。

 どこの世界に『1番と2番が王様の前でS●X』なんて理不尽極まりない命令が許される王様ゲームがあるんだ。


「ならハグとかは? それならいいよね雄一?」

「は、ハグはいいけど……なんつーか、やっぱりこの中だと遥って一番ピュアだよな」

「何よそれ!」


 宮子が手の中に口紅付きの割り箸を隠し、王様ゲームがスタートする


「さーいくよー、王様だーれだっ」


 と、宮子だけがノリノリで言って全員が一本ずつ割り箸を引く。


「……私が、王様」


 最初の王様は美波だった。

 一番最初に一番嫌なやつが来たな……。

 まあ、遥か以外の二人に王様が回った時点で地獄なのは確定だし、致し方ない。


「じゃあ……2番が3番のおっぱい揉む」


「「え……」」


 2番なのは俺、そして3番は……。


「あ、あたし……!?」


 は、遥……だと!?

 宮子じゃなかっただけ良かったが、遥のを揉むのは……。


「お、おい美波! 揉む系も禁止に」

「ダメ。やる前に言わないと取り消せない。ほら、さっさと遥姉さんのちっぱい揉みなよ」


 美波のやつ、遥の番号を予想してわざと俺に揉ませるように仕向けたのか……?

 ちっぱいコンプレックスを抱えてる遥にこんなことさせるとか、やっぱり性格悪すぎだろ!


「おい! 遥からも何が言っ」

「あ、あたしは……いいわよ。それにゲームのルールなんだし、逆らったら意味ないわ。だから仕方ないのよ」


 潔く受け入れる遥。

 こいつ正気か? 男に胸をさわられるんだぞ!?

 自分には胸がないからあまり気にしていないのか?


「ひゅーひゅー、遥のちっぱい揉めー」

「う、うっさいバカ宮子!」


 遥は宮子の頬をつねると、俺の方を見た。


「ゆ、雄一……強く揉んだら殴るから」


 俺はまだ状況が整理できていないが、とにかくこうなった以上、早く終わらせないといけない。


「ユウ、さっさと遥姉さんのおっぱい揉んで」

「でも、それは……」

「やらないなら命令キスに変える」

「分かった!」


 遥と俺は立ち上がると食卓の前に移動し、向かい合う。


「い、言っとくけど一揉み、だけだから」

「お、おう……」


 遥は目を瞑りながら少し胸を張る。

 俺は恐る恐る遥の胸に手を伸ばした。

 遥の胸は肋骨をしっかり感じられるくらいに小さいが、その分柔らかい部分がしっかり手に収まり、逆にエロい……。

 遥も、ちゃんとおっぱいが、あるんだな……。

 ふにっと一揉みすると、遥は「ひゃんっ」と小さな喘ぎ声を漏らした。


「ゆ、雄一の触り方エロすぎ! ばか」

「す、すまん……」


 遥は小さいせいで、ブラ越しとはいえ、少し先端が膨らんでいたのを感じられた。

 遥のやつ、興奮……してたのか?


「も、もう揉む系も禁止な!」

「なーに雄一くん、興奮してるの? やっぱりおせっせに変更する?」

「しねーよ!」

「ユウ……最低」

「命令したお前にだけは言われたくないんだが」


 ——2回戦。


「王様だーれだっ」


 ん? 今度の王様は俺か……。


「あっ、雄一くんが王様? もしかして全員にえっちなお願いしてきたりー?」

「んなことしたらコロすわよ雄一」

「しねえよ!」


 さて、どんな命令にするべきか。

 美波はみたいな刺激のある命令をこいつらにしてもな……。

 3人は命令を考える俺の方をジーッと見てくる。

 そんなに見られると逆にやりずらいというか……はぁ。


「じゃあ、1番と2番が相撲」

「「は?」」


 頭にぱっと浮かんだ適当な命令を口にすると、宮子と遥が同時にイラッとした顔をする。

 1番と2番はこいつらかよ……。


「遥姉さん、宮子姉さん倒してさっきの私の仇とって」

「知らないわよ! こんなクソデブの宮子に相撲で勝てるわけないじゃない!」

「あらぁ、言っちゃったわね遥……」


 宮子は血管も浮き出るレベルのガチギレ顔で、遥を部屋の中央にある大型の丸い絨毯へと誘う。


「ここから出たら負け。やるわよ遥」

「ちょっ、雄一! 覚えてなさいよ!」


 横綱宮子対十両の遥では差は歴然で、宮子の胸を押し出して攻撃する乳責めに耐えきれない遥は一瞬で押し出された。

 ガリガリの遥と筋肉と脂肪のバランスが良い宮子じゃ体格差がありすぎるもんな。


「なんかあたしだけおっぱい揉まれたり、おっぱいに押し出されたり散々なんだけど」

「遥姉さん可哀想」

「アンタだけには言われたくないわよ!」


 ——3回戦。


「王様だーれだ!」


 俺は……3番か。


「また私が王様になった」


 なんでまた美波に……。


「それで、今度はどんな命令するんだよ」


「……3番が、王様に抱きつく」


 ……っ!?


 ちょ、ちょっと待て。

 さっきからあまりにもこいつの命令がピンポイント過ぎないか?


「おい美波、イカサマすんな」

「自分に当たったからって文句言わないで」

「そうよ雄一、さっさと抱きついて来なさいよ」

「なんで遥はそんな雑なんだよ! お前も被害者側なんだから少しはこっち側につけよ!」

「もういいのよ。おっぱい揉まれちゃったし」


 遥は「はぁ」とため息をこぼした。

 そこまでショックなら最初に俺と一緒に否定してくれれば良かったのに。


「ユウ、はやく私に抱きついて」


 美波はいつの間にか食卓の横に移動して両手を広げてハグ待ちしていた。


「雄一くん! ハグなんて昔は死ぬほどしたんだから早く終わらせてよー!」


 し、仕方ない……さっさと終わらせるとしよう。

 俺は立ち上がるとゆっくり美波に近づく。

 ハグ……か。


『雄一くん、わたしに抱きついて?』

『雄一、さっさと抱きつきなさいよ』

『ユウ……はやくして』


 前まではずっと、忌まわしき過去だった。

 小学生の頃の悪しき記憶だったはずなのに。


「雄一くん、ついでに美波のおっぱい揉んであげたら?」

「雄一さっさとしなさいよ!」

「ユウ……はやく、シて」


 6年が経って、同じことをしてみると、あの頃とはまた違った感覚がする。

 3人は……昔から俺のことを嫌っていたわけではないのかもしれない。

 ただ、俺はずっと嫌がらせだと思い込んでいて、それをずっと嫌な記憶として残して来た。

 でも今は……。


「……宮子も言ってたけど、なんか……昔のこと、思い出すな」

「……そうだね」

「お前らに負けて、俺が抱きつくように命令されたり……手を繋ぐように命令されたり……」


 美波と身体を重ねると、昔みたいな軽さはなく、ひたすらずっしりとした胸が俺の身体に押し付けられた。


「ユウの身体……暖かい」

「そりゃ風呂上がりだからな」

「……ユウ……今は楽しい?」

「……少しな」


「ずるーい、わたしも混ざるー」

「ちょっと宮子! 王様ゲームの意味無くなるじゃない!」


 こうしてまた幼馴染のイジメっ子三姉妹と過ごす日常は、そんなに悪いものじゃないと思えていた。

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幼馴染のイジメっ子3姉妹が地元に帰ってきてから様子がおかしい 星野星野@2作品書籍化作業中! @seiyahoshino

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