第15話 宮子の罠♡


 宮子は俺の自転車の後ろにある荷台に座りながら、前屈みになって自転車サドルをその豊満な胸でスリスリと撫でる。

 その宮子の姿があまりにも異常過ぎて、俺は言葉を失っていた。

 その姿はまるで、男の肉棒を癒す時のようで、いやらしすぎて目を離せない。

 まるで宮子は自転車と行為をしているよう。

 自転車に向かって前後にバコバコバコ。


 って! こんなのもはや公然わいせつ罪だろ!


 宮子にドン引きしながらも、男として性的な興奮を覚えてしまう自分が憎い。

 こうやって見ていると、自分の自転車が宮子によってNTRたような気分にもなって複雑だった。

 こんなの嫌がらせの度を越してる……こんなの見せられたら、俺の下半身が……。


「おい美波! はやくあの激ヤバな姉を止めろ」

「承知っ。宮子姉さん、やめて。ユウが嫌がってる」


 美波は宮子にやめるよう注意したが、宮子は聞く耳を持たない上に自転車との性行為を一向にやめることはない。

 そのエロい身体で自転車と交尾するかのように身体を激しく擦りつける。


「あ、あーんっ! 雄一くんの自転車、気持ちいいっ♡」

「み、宮子姉さん……もういい加減にして」

「やーだっ♡」

「ダメっ、さっさと退いて」

「えー?」


 見るに耐えなくなったのか、美波は宮子の制服の首根っこをがっしり掴む。


「私はユウを守ると決めた。これから信頼関係を築くことをユウと約束したから。だからユウが嫌がってることをするなら、例え長女の宮子姉さんだとしても、私は容赦しない」

「ふーん? でもさ、そう言う美波だって"昼休みに"雄一くんのサドルで頬擦りしてたのにぃ?」

「はあっ!? おい美波!」

「…………」


 美波が俺の自転車に……頬擦りだと?

 俺は真っ先に美波の方へ睨みをきかせる。


「そっ、そんなキモいこと……宮子姉さんでもあるまいし、やらない!」

「嘘はいけないんだー? ほらこれ、なーんだ?」


 宮子は自転車の荷台に座ったまま、ズリズリするのをやめて上半身を起こすと、胸の谷間からホカホカのスマートフォンを取り出し、俺たちの方にホカホカな画面を向けた。


 画面にはとある動画が映し出されており、宮子が再生ボタンを押すと、盗撮のようなアングルで美波が俺の自転車の前までコソコソ現れたのが映し出される。


『あった。ユウの自転車……サドル、凄い、臭いのに良い匂い……ユウの臭い……好き、好き……ダメ、なのに、もっと、もっと嗅ぎたい』


「や、やめてよ宮子姉さんっ!」


 珍しく焦り気味の美波。

 しかし宮子の手の中にあるスマホの動画には、美波が俺のサドルにこれほどまでかと自分のモチモチほっぺを擦りつける様子がバッチリ収められていた。


「美波、これはどういう事だ?」

「かっ、カブトムシが! カブトムシが樹液に集まるのと一緒……だから、私は悪くないし、ユウがサドルに蜜を塗るからカブトムシが集まってくるんだし、責任の所在はユウにもあるというか、私は自分の本能に従っているだけでユウのことが好きとかじゃないし、ユウのサドルが臭いのが問題で、私はそのサドルを」

「ちょっと待て! さっきから言ってることよ意味が全く分からんのだが」

「……っ!」


 美波は罰が悪くなったからか、逃げるようにして自転車置き場から走り去る。


「お、おい美波! しっかり説明しろ! ってか、俺を守るって言っただろ!」


 美波のことを追いかけようとしたその時。


「——だーめ。やっと二人になれたんだから」


 宮子が周りの目を憚らずに俺の背中へそのエロい身体をぴったり重ねてきた。

 お互いの制服がまるで無いように思えるくらい、宮子は柔らかくて、そのデカすぎる胸も、想像をはるかに越えたマシュマロ感覚だった。

 現役グラドルの胸……なんだよな。

 こんなに柔らかいのか……っ!


「雄一くん、すっかり身体が大きくなったね」

「う、うるせえ」

「こんなに大きな身体で無理やり襲われたら……わたし、失神しちゃうかも」

「な、なんの話だよ!」


 俺は抱きついてきた宮子をブルッと振り解くようにして、やっと解放される。

 こいつは昔とは違うヤバさがある。


 ただいじめられている方がまだマシに思えるほどに、今の宮子はヤバい。

 少しでも油断したら身体を支配されてしまう恐れがある。


「雄一くん、わたしについて美波や遥から何を言われたのか分からないけど、わたしは……真剣だから」

「真剣?」

「ねえ、昔よく行ったあの砂浜へ行こうよ。そこで色々とお話ししたい」


 宮子は落ち着いた声色でそう言うと、真っ先に自転車のサドルに座り直す。


「押して?」


 俺は嫌々だが、宮子を自転車に乗せて高校を出ることになった。


 本来なら、こいつと二人きりなんてマズいに決まってる。

 遥や美波とは比べ物にならないくらい、危険に思えるからな。

 でも宮子と決別するには……ここで逃げるわけにはいかない。


 グラドルで、高校でもすでに注目の的になってるこいつとは、絶対に関わらないようにしないとダメだ……。

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