第30話 城田宮子の真実(重要な話……かも?)


 わたしは何の迷いもなく雄一くんの部屋に入る。


「くんくん…………はぁ〜! 雄一くんのグッドスメルが下半身まで伝わって……やばい、すぐにイっちゃいそう〜!」


 とりあえず景気付けに雄一くんの枕を犬吸いしてから部屋の中を物色する。


 勉強机には難関大学の赤本とモテる男の筋力トレーニングの本が積まれていて、真ん中にはノートパソコンがあった。


 雄一くんの検索履歴見たすぎる。


 パソコンを開くとすぐに暗証番号を要求されたので、とりあえず雄一くんの誕生日を暗証番号に入れてみると、あっさりパソコンのロックが解除された。


 不用心だなぁ、もう。


「あ! 『城田宮子 グラビア』って検索してる!」


 なんだかんだ言ってるけど、やっぱり本当はわたしのことが好きとか?

 まぁこれでもわたしグラドルだし、思春期の雄一くんからしたらいいズ●ネタだもんね。


「さてと、じゃあ今度は雄一くんがわたしで出した"アレ"を包んだティッシュを探さないとねー」


 そう思って部屋のゴミ箱を調べるけどそれらしき匂いは全くしない。

 引き出しやタンス等々の中を見ても、やましいものはなかった。


 なーんかムカつく。

 相変わらずわたしたちには無関心ってことなのかな?


「……ん? これ」


 棚にあったとあるものに目が行く。


「小学校の卒業アルバム……わたしたち5年生の時に引っ越したから貰えなかったんだった」


 中を見てみると、わたしたちが知らない、6年生の時の雄一くんがそこにいた。


「なんだ……やっぱり友達いないんじゃん」


 6年生のクラスでも、雄一くんは浮いたような感じに見えた。

 真顔で写る雄一くん。友達との写真はなく、クラスの集合写真と個人写真の2枚にしか写っていない。


 昔の雄一くんは、わたしたちに絡まれる前までいつも一人で、友達もいなかった。


 昔から気弱で大人しい性格の男の子。

 例えば町内会のビンゴ大会でも、とっくにビンゴなのに手も挙げずにじっとしていて、ビンゴカードの穴が全部開くのを待つくらい、人から注目されるのが嫌いな子だった。


 そんな彼にわたしが執拗に絡んだ理由……それはわたしたちの母親が発端だった。


 わたしの両親はわたしたちが小3の時に離婚した。

 父親は不倫相手と一緒にどこかへ蒸発してしまって、わたしたち三姉妹は母親と一緒に、雄一くんの隣の家に住んでいた。


 離婚で空気の悪いわたしたち一家と、雄一くんの一家はいつも真逆。

 雄一くんのご両親はいつも幸せそうな夫婦で、わたしたちの母親はずっとそれを妬んでいたようだ。


 だからあの母親は、わたしに向かって雄一くんをイジメるように指示してきた。

 あの夫婦の幸せを邪魔しようという腹いせのつもりだったと思う。


「そう、これが全ての発端だったんだっけ」


 もちろんわたしは反抗しようとしたが、反抗したら殴られるのが当たり前の家で、妹二人を守るには、わたしがそれに従うしか無かった。


 最初は嫌々雄一くんに一人で絡んでは、イジメっ子っぽいことを繰り返した。

 嫌で仕方なかったけど、美波や遥を守るにはそれしかないと思って……でも次第に、わたしの中に嗜虐心が生まれてしまう。


 雄一くんが困ったり悔しそうにする顔が堪らなく好きになってしまって、最終的にわたしは普通のイジメじゃ気が済まなくなった。


 わたしを嫌いな雄一くんに、わたしとイチャイチャするのを命令すればもっと気持ちいい顔が見れる……。


 そう思ったわたしは狂ったように雄一くんとスキンシップを重ねた。

 そうしていくうちに嗜虐心だけじゃなくて、純粋な恋心も芽生えてしまい、わたしの感情は複雑に混ざり合っていった。


 嫌がられたい、でも好かれたい。

 彼の嫌そうな顔を見たい、でもわたしを好きでいて欲しい。


「この真逆の感情が、今のわたしを作ったんだよ……愛しの雄一くん♡」


 その後、わたしは雄一くんのアンダーシャツを部屋で入手し、お風呂場にあったパンツと脱ぎ捨てられていた靴下をポケットに突っ込んで家を出たのだった。



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まさにモンスター誕生秘話

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