第11話 宮子の正体……♡


 遥のスマホに写っていたのは——マイクロビキニ姿でどエロい仰向けポーズを取る、長髪美少女の写真だった。


 色っぽい笑顔に、爆乳と形容するのが最適解な胸。そしてムチムチな太もも。

 ムラっとするその脇を大胆に見せて誘惑している。


 な、なんだ……これ。


 否が応でも下半身がビクッと反応してしまうほどの魅惑的な身体つきと、天使のように可愛い顔つき。


「これ、グラビアアイドル、みたいな……」


 そう言いながら遥の方を見ると、呆れ顔でため息を漏らした。


「そのまんまよ。宮子は今、高校生グラビアアイドルとして活動してんの」


 あの宮子が、グラドル……?

 確かにいつも甘ったれた声をしていたし、あざとい性格だったから向いているのかもしれないが……なんで、グラビアなんて。


「ここから東京まではそれほど遠くないし、仕事が入ると宮子は高校に来ないの。ここ最近グラビアの仕事が立て込んでるみたいだから、まだ高校には来てないってワケ」


 やけに宮子だけ見かけないと思ったら、そういうことだったのか。


「芸名は?」

「ミヤ。アルファベットでmiya……っていうんだけど、芸名聞くなんて、まさかアンタ帰ってからそれでシコ」

「するワケない。俺はお前たちが嫌いだ」

「……絶対シ●るじゃん」

「しないっての」


 しようとしてもできるわけない。

 俺は宮子に何度も恥ずかしいことを要求された。

 その数は遥や美波の比にならない。

 そんな相手で興奮なんかできるもんか……と思いつつも、俺は宮子のグラビア写真をもう一度見てしまう。


 宮子の胸……美波と同等かそれ以上の大きさだ。

 両手なんかじゃ絶対に収まりきらないくらいにふっくらとしている。


 長女と三女がこんな爆乳姉妹なのに、次女の遥は……。

 俺は目の前に座る遥に視線を向けた。


「なんていうかさ……お前には同情するよ」

「ちょっ! あたしの胸見ながら言うんじゃないわよ!」


 ブチ切れた遥は身を乗り出して俺をビンタしようとしたが、俺はその手をグッと掴んだ。


「もう昔の俺じゃない。お前のビンタくらい止められる」

「……っ! な、なによ。雄一のくせに生意気っ」


 遥はプンスカ鼻息を荒くして、クリソーを飲み干した。


 おそらく遥だけ発育が悪いのは偏食家だからだろう。

 性格がひん曲がっているから、食べ物の好き嫌いも激しかったし、小学校の給食でも嫌いな食べ物はいつも俺にパスして来た……。


「遥って、昔から肉と米を食べないもんな。だからそんな痩せるんだよ」

「う、うるさいわね。それならあたしが巨乳になれるように、あ、アンタが……揉んでみるのはどう?」

「そんな罰ゲームもうやらない」

「ばっ! 罰ゲームって! 今のはさすがに悪口だから!」

「そもそも自分の胸揉ませるとか発言が痴女なんだよ」

「……っ! あったま来た! もう帰る!」


 遥はキレながら机に2000円札を置いて、カフェから出て行った。

 今どき2000円札って……なんで持ってんだよ。


「奢るっていう約束だから律儀に金置いてくなんて。遥のやつ……変わったな」


 見直した、ということではない。

 昔と変わっていないと思った遥も、少しは大人になっていたと思っただけだ。


「また言い過ぎたかもしれないな。今度会ったら……謝るか」


 俺はカフェオレを飲み干すと、カバンを肩に掛けて会計を済ませる。


 さてと、もう夕方だし自転車で帰——っ。


「ゆ、雄一……」


 またしても遥は俺の自転車のサドルに座っていた。


「ごめん。やっぱり帰り道が分かんないから送って……?」


 ほんと、こいつは……。


「スマホがあるんだからマップで自分の住所検索してルート検索すればいいだろ」

「宅配とかAmanzo(アマンゾ)とか、いつも美波に任せっきりだから、マンションの名前と住所分かんないっていうか」

「お前、ほんっとダメダメな姉だな」

「……そ、そうよ。どうせあたしはダメダメな姉よ!」

「開き直んなよ」


 俺は呆れながらも自転車を押し、サドルに座る遥の金髪に手を伸ばした。


「カフェ代ありがと。あとさっきは言い過ぎた……ごめん」


 ぽんっと遥の頭に手を置いて俺は謝罪する。


「もうそれはいいわよ……あ、あたしも胸揉めとか、よく考えたら痴女だったから。ごめん」


 よく考えなくても痴女だと思うんだが。


「仲直りしたんだし、明日のお昼はあたしと食べる義務を与えるわ」

「普通、そこは権利だろ」

「ぎ、義務よ! 明日、学食であたしと食べないなら、美波に有る事無い事チクってやるから!」

「はぁ……」


 遥はやっぱ、変わってないな。


 ✳︎✳︎


 ——同日の夜。東京。


「宮子ちゃーん! 今日も最高に激エロで可愛いかったよぉ」

「……あ、ありがとうございますっ」


 わたしはカメラマンさんに挨拶してからスタジオを出た。

 この仕事でしばらく仕事は落ち着くから、明日から高校に行ける。


「ほんっと気持ち悪いブタばかり……吐きそう」


 わたし、城田宮子は高校生でグラビアアイドルになった。

 まだ新人だから仕事は多くないけど、最近はそこそこ忙しい日々を過ごしていた。


 雄一くん以外の男に視姦されるのは最悪だけど、雄一くんは……今のわたしなら好きになってくれるはず。


 わたしは知っている。


 小学生の頃の話。

 雄一くんの部屋にはどこからか拾ってきたグラドルの写真集があった。

 雄一くんがやけにわたしたちに靡かない理由が、その時判明した。


 そう——雄一くんはえっちな身体のグラドルにしか惹かれないんだと。


 だからわたしはこうして努力して豊乳を手に入れ、抜群のプロポーションを手に入れた。

 何も努力してない美波なんかよりも大きい胸と、三姉妹の中では一番可愛い顔をしていた遥なんかよりも今のわたしは可愛い。


 つまり、わたしは三姉妹で最強になった。

 もうライバルは誰もいない。


 雄一くんはわたしの身体に惚れてくれるはず。


「雄一くん……♡」


 毎晩欠かさず雄一くんを想って自慰に励んだ努力が明日、報われる。


 やっと——会えるねっ♡

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