第34話 見えないところが、わんぱく。

「だから、蹴りっていうのは、単に足で攻撃するってことじゃなくてね……」

「おまえのアドバイスは聞かない!」


 困ったお嬢様だな……。

 俺のアドバイスがないと、俺にダメージ与えられないから言ってるのに。

 つるやは俺の方をぷいっとさせ、あいらんの顔を見やる。


「あいらんは無いのか、アドバイス」


 悪魔にしては珍しく、他の悪魔を仲間だと思ってるタイプなんだな。

 敵の言うことは聞かない、味方の意見を求めると。


「わたらせゆ倒すのに、わたらせゆにボロ負けしてるやつの意見聞いてどーすんだよ?」


 あいらんは正論すぎる言葉でバッサリ。


「ぐっ……」


 つるやちゃん、かわいそうに。彼女だけがおかしいみたいになって。


「わたらせゆの倒し方なんて、わたらせゆが一番詳しいに決まってるじゃん」

「自分の倒し方を自分で言うわけないでしょ!」

「わたらせゆは言うよ」

「ユウは優しいからね」

「お茶のおかわりちょうだい」


 カオスだな……。

 とりあえず、ゆきうと一緒にお茶を飲みます。

 つるやは、諦めずにあいらんからヒントを得ようとしているようだ。


「なんか弱点知らないの?」

「弱点かー。ぱんちらすると絶対見るから油断するかもよ」

「ふざけないでください」


 ふざけてないんだよなあ……。マジで弱点だと思う。


「ま、肉体でどうこうなんて無理だよ。弱点っていうと、わたらせゆは魔法は使えないぞ」

「魔法が使えない!? 一切ですか?」


 驚いてる驚いてる。そんなやついないからね。

 俺は笑顔で彼女に近寄る。


「一切使えないぞ」


 自分の顔にビシッと親指を突き立てて言ってやった。


「じゃあ、弱いじゃないですか。防御や回復もできないのでしょう」

「そうそう」

「なんでそんなに嬉しそうなんですか……」


 呆れられてしまった。

 

「ならば、風魔法!」


 見たことあるポーズ。これ、あいらんが最初に見せてくれたやつだな。単に強い風が俺を襲うだけ。


「あははは! 風魔法使ってる! 懐かし~」


 あいらんが、紅茶を飲みながら笑い転げている。効くわけないって身にしみてるだろうからな。

 ていうかコレって悪魔同士でも対して効果ないだろ。そりゃ、小さい人間ならたまったもんじゃないかもだが。


「くっ、次は電撃魔法!」

「あ。懐かしい」


 次はしまんが懐かしがっている。これは風よりは効くぞ。

 

「あっ!」


 びりっと来ました!

 しまんより強力だ!

 しまんの電撃魔法は、せいぜいうっかり触ったドアノブの静電気くらいだったが、 スーパー銭湯にある電気風呂くらい強い!


「いってー! いや、痛いよ、つるやちゃん!」

「そんな嬉しそうに言われても!」

「効いてるよー!」

「効いてたらそんなこと言わないんですよ!」


 いや、マジでこれはキツイけどなー。

 でも、できればビンタとかのほうがいいな。 


「あいらんさん! 魔法は弱点じゃないじゃないですか!」

「魔法が使えないのが弱点だって言ったんだぞ。魔法が効くなんて言ってないぞ」

「くっ」


 これはあいらんが正しい。

 つるやちゃんは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。いいねえ。


「ところで、つるやちゃんはぱんつ履いてるの?」

「な、なんですかこの人!?」

「いや、大事なことなんだよ」


 悪魔ってぱんつ履かないからさ。履かないというより持ってないから。


「ぱんつってあの人間がつける下着のことですよね?」

「そうそう」

「あんなの手に入りませんよ」

「そうだよね。やっぱノーパンか」

「ふんどしを履いています」

「ふ、ふ、ふ、ふんどし!?」

「布と紐はありますから……ってどうしたんですか!?」


 ふんどし……上品なワンピースを着たお嬢様悪魔がふんどし……。


「その手があったかー」


 天を仰いだ。じーざす。


「え? なんですかこの人」


 つるやちゃんはあいらんに「なんだこいつ」と指さしている。


「いや、すごいよ。わたらせゆがこうなるのは、大したもんだよ」

「なにが?」


 つるやちゃんはぽかんとしてるが、三人は頷いていた。なかなかやるなと。


「ユウのために下着を履いてるなんてすごい」

「違うわよ! なんでこいつのために履くのよ」

「ぼくたちはおにーさんのために履いてるけど」

「なんでよ!?」

「喜ぶから」

「なんでよー!?」


 つるやちゃんも天を仰いだ。

 下着をつけるのは自分のためであり、俺のためなわけがない。その常識が通用しない状況を嘆いているのでしょう。


「つるやちゃん……頼むから見せてくれ……ふんどしを……ふんちらを」

「なにを言ってるんですか?」

「俺の負けでいいから……」

「ほら、勝てたじゃん」

「そういうことじゃなーい!」


 ご立腹だが、俺はとにかく見たいのだ。


「じゃ、ちょっと無理やり見ますね」

「ちょ、やめろ! やーめーてーよー」


 俺は強引に足首を掴み、逆さ吊り。

 ぺろーんとスカートはめくれて、まぶしい白い布が。

 ちらではなく、モロなのだが、これはこれで。


「こ、こんな軽々と……」


 あられもない格好よりも俺の腕力に驚いているようだ。これはチャーンス。

 このままではあまりにも趣がないので地面に下ろすと、 スカートをめくっておしりを突き出させる。


「よいしょっと」

「な、なんというパワーですか」


 いいね~。ワンピースめくったら、ふんどしガール。こりゃいい。


「うん。負けた」

「なんでそうなるんですか!?」

「だから弱点だって言ったじゃん」

「ユウに勝つとはね」

「すごいねー」

「意味がわかんないー!」

 

 勝ったのに、納得がいかないようです。

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