第35話 夕暮れ、涙。またあした。
「バカにしてます?」
「いや、してないですね」
「負けたって言ってるじゃん」
「だから、なんで負けなんですか!?」
肩をすくめる俺とあいらん。
「なんでわからずやみたいな扱いなんですか……? わたしは変じゃないですよね?」
ワンピースをめくりあげて、ふんどし丸見え状態だよ?
変に決まってるじゃない?
「いや、あの、いいよ? もっと攻撃してもらって。俺はいくらでも受けるから」
「そうだよ。わたらせゆは、気が済むまで攻撃させてくれるから。どうぞ」
「……」
あれ? 俺もあいらんもしまんもゆきうも。みんな温か~い対応なのに。
つるやちゃんは何が不満なのかな?
「いいよ、何でも言いな。何が不満なの?」
「それだよっ! その態度!」
「つるやー。わたらせゆの態度は何も悪くないよ」
「だから、その感じだよ! まるで子ども扱いだよ!」
「子どもだなんて思ってないよ。えっちな目で見てるよ」
「そうだよ。ユウはみんな女扱いだよ」
「んもー!」
「子どもみたいな態度だな」
子ども扱いした覚えはないが、すっかり子どもになってしまった。しまんもゆきうも腕を組んでヤレヤレという感じ。
「もういいよ。わたらせゆ。さっさとわからせようよ」
「そうそう。お尻ペンペンしよ」
お尻ペンペンは子どもへのおしおきだけれども。
この反応に、つるやはなぜか発奮。
「なんですか? 必殺技ってことですか? いいですよ。かかってこいですよ」
おいー。
この流れで俺に攻撃を許しちゃうのかよ、つるやー。チョロいってー。
「いや、負けを認めるのは早いって。もっと攻撃しなよ。俺には全然効かないことを思い知らされなよ」
なんだったら、ちょっとビンタされたいんだよ。俺は。
素足で顔を蹴られたいんだよ、俺は。
「うわ。ほんとにバカにしてる。よくみんな怒らないね」
つるやちゃんは憤っているが、あいらん達はもはや呆れている。わがままな女扱いである。
「いいから。みんなはそれに屈したってことでしょ? やってごらんなさいよ。耐えてみせるんだから」
うーん。
やらざるを得ないか。
あいらん達もさっさとやれって顔してるし。
「んじゃ、やりますか」
ひょいっとおじぎさせて、お尻を突き出させる。手慣れたものですよ。
なで、なでと。
「ひゃん!? なんで撫でたんですか!?」
ほう……。
撫でただけでこのリアクションか。カワイイじゃないですか。
「おい、あざといぞ!」
「あざとい」
「あざとーい!」
あいらん達のブーイング。あざとくて何が悪いの?
「今から叩くよー、という準備の撫でだよ」
「なんですかそれ……」
「二回撫でたら……叩くんだよっ!」
久しぶりに叩く尻!
「いったー……」
静かに声を漏らす、つるやちゃんだが……。
「うわー。めちゃくちゃ手ぇ抜いてる」
ジト目のあいらん。
「えっ……手を抜いてる?」
「そりゃ本気でやったら……なあ?」
「本気でやってください」
頑固な娘だなあ……。
しょうがないか。
「いくぞー」
「撫でなくていいんですが」
俺はふんどしの尻を、二回撫でると……
「いーち!」
パァアァン!
「!?」
叩いた方も痺れるくらいのヒット!
叫び声も出ない。
今まで生きてきて初めての衝撃なんだろうぜ。
「にーい!」
ぱっちーん!
「んー!」
痛かろう。
しかし、あれだけの態度だったからね。
すぐにギブアップなんて、プライドが許さないんだろうよ。
手で口を抑えてるよ。
あいらん達はニヤニヤしている。
「さーん!」
「~!」
「よーん!」
「……」
あいらん達の目が同情に変わった。
俺はこの工程は大事だと思っている。
このあと仲間としてやっていくにあたり、いくらなんでも発言や態度がね。
これですぐに「まいった」なんて言ったって、あいらん達が納得しない。
本当にわかってるのか、裏切るのではないか。そういう疑惑があっては、仲良くやっていけないんですよ。
やりすぎだよって、止めに入ってくるまで叩くしかないだろう。
「ごー!」
「ぅ……」
「ろーく!」
「ひぅ……」
「なーな!」
「や、やめ……」
「はーち!」
「ご、ごめんなさ……」
「きゅーう!」
「ひっく……痛いよう……う、うわーん」
「じゅ――」
「もうやめろーっ!」
あいらんがジャンプキックをかましてきた。
ゆきうも背中から抱きついてきた。
しまんは青ざめていた。引いている模様。
「やりすぎだって! お尻ペンペンを9発!?」
「泣いてるじゃん!」
「どうしてそこまで……」
悪魔たちからまるで悪魔を見るような向けられたぞ。
まあ、でもミッション達成ってとこだろ。
「痛いよー、痛いよぉ~! ごめんなさい、ごめんなさーい!」
つるやちゃんは、四つん這いになって泣き叫んでいる。
うむ。十二分にわからせることができた。
俺は、彼女の背中をさすりながら「痛かった?」と優しく声をかける。
そして――
「お尻じゃなくて、お腹とかほっぺたにやったらどんだけ痛いんだろうね?」
と耳元で囁いた。
「あいらん達が、言ってたことが、正しかったですー! 勝てる、わけが、ないですぅー!」
よしよし。
俺は彼女を抱きしめて、頭を撫でてやる。
「ううう……大きい……力強い……安心します……」
続いてお尻を撫でてやる。
「もう叩かないからねー」
「はい……もう叩かないでください……」
こうして、新しい仲間が増えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます