第36話 人間なんて、好きでも嫌いでもいいよ。

「人間ですか……こちらが嫌いというより、向こうが……」

「シンシャか……」


 つるやちゃんに、人間をどう思っているか聞いた。

 あいらんは、人間をどうでもいいと考え、軽くいじめていた。

 しまんは、人間が好きすぎて拉致監禁。

 ゆきうは、人間が嫌いなので、ムカつくからあまり関わってなかった。

 この世界の小さな人間に対する価値観。まずは確認しておこうと思ったのだが……。


「うるさいし、うっとうしい……そういう感じですね」

「蚊とかハエみたいな扱いっすね」


 ある意味一番リアルだな。

 俺もシンシャに対しては、そんな感じっすよ。


「人間しか持ってないものが欲しいから行くだけで……」

「なるほどね。人間に対しては何かしないんだ?」

「邪魔だったら、手で払うくらいです」

「はいはい」


 マジでハエだな。


「それで……? 渡良瀬様は……」

「あ、待って。その呼び方はシンシャと同じだからやめて」

「……というと?」

「いや、俺もシンシャは好きじゃないから……」

「えっ? 人間の味方ではないのですか?」

「んー。それ聞いちゃう?」


 つるやちゃんは、大きな目をぱちくりとさせて見上げている。他の悪魔の三人は、ニヤニヤしながらこちらを見ている。


「確かに俺は人間に召喚されて、悪魔をなんとかしてくれと言われてはいる」

「はい」


 そうですよね? という表情。


「だが、はっきりいってどっちの味方かというと悪魔の方」

「ええ?」


 人間100人とあいらんが崖から落ちそうになってたら、当然あいらんを助けるからな。

 そう思ってあいらんの顔を見る。


「ちがーう。わたらせゆは悪魔の味方じゃなーい」

「ええ!? そんな……」


 嘘だろ……?

 あいらんは、にや~っと笑って。


「わたらせゆは、私たちの味方なだけ。男っぽい悪魔には容赦ない」

「あ」


 そっか。悪魔ってあいつらも含まれんのか。存在を忘れてたよ。


「ユウは、人間とか悪魔とか関係ない」

「そうそう。カワイイかどうかしか興味ない」

「いや、厳密に言うとえっちなことができるかどうかだろ」

「それだ」

「それだね~」


 お、おまえら……。

 あっさりと真実を言うなよ……。


「えっちなことって……」

「あ、それは後でじっくりとね」


 楽しみにしてますので……。

 どういうことかわかってなくて、本当にわからないという顔をしている。ホントに楽しみだな……。

 

「それよりも、人間と悪魔の話だが……俺はね、仲良くしろ……とは言わないが共存共栄しようぜっていう考え」

「共存共栄……? 私たちに得があるってことですか?」

「そうそう。人間が普通に持ってるものって、使えないものが多いじゃない」

「小さいですからね」

「そうそう。俺たちが使えるように作ってもらうわけよ」

「その手がありましたか……人質を取れば……」

「意外と怖いことを言うね。でも、それじゃ続かないのよ。人間じゃ仕入れられないものを渡さないとね」

「なるほど……何を作らせるんですか?」

「ぱんつ」  

 

 まずは、ぱんつ。

 あっ!?


「違うぞ!? ふんどしが嫌いなわけじゃないよ!?」

「は……? はあ……」


 あぶねー。

 俺がふんどしに不満があると思われたらヤバい。

 むしろ、ゆきうにもふんどしして欲しいしな。


「わたらせゆは、ぱんつが大好きだからな」

「ユウはぱんつ見るために生きてる」

「最近はティーバックも気に入ってるよ」


 まあまあ。みんな落ち着いて。当たり前のことを言ってるだけだよ。

 

「んでミニスカートも作ってもらわないとだよね~」


 そうだね……。


「違うぞ!? ワンピースが嫌いなわけじゃないよ!?」

「は……? はあ……」


 あぶねー。

 俺がワンピースに不満があると思われたらヤバい。

 むしろ、あいらんにも着て欲しいしな。


「つまり、私たちのサイズの衣服を人間に作らせると?」

「そうそう。悪魔って、服作るの苦手じゃん?」

「……わたくし、裁縫が得意なのですが」

「えっ!?」


 考えてみれば、彼女はワンピースを着ている。ふんどしにしたって、ぱんつほどじゃなくても技術が必要だ……。


「料理ができないので、人間のものを搾取しているだけで……」

「料理は、あいらんが出来るんだよ」

「そうなんですね。悪魔同士が一緒にいるのはそういうメリットがあるんですね……」


 そうだね……。

 少なくとも衣食住は悪魔だけで成立しちゃうかもね……。


「となると、人間なんて、やっぱ不要なのでは……」

「あいらん。言うな」

「……」


 いや、違うんだよ。

 ほんとに。

 いろいろメリットあるから。ほんとに。


「シンシャの町の人間たちも豊かにしてあげた方がいいんだって」

「な~んか、自分に言い聞かせてないか~?」

「ユウ、かわいい」

「おにーさん……くふふ」


 こういうイジられ方は苦手なんだよな……。

 恥ずかしいったらないぜ。


「勇様」


 どうやら、つるやちゃんは俺を勇様と呼ぶようです。


「ま、はっきりいって人間と仲良くはしなくていいし、シンシャに会うのは俺だけでいい。ただ……」

「ただ?」

「俺たちとは、仲良くしてもらう」


 つるやちゃんは、にっこりと微笑んだ。

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