第40話 臆して強がるな。堂々と怯えろ。

「うっめ~」

「んまい」

「おいしい」

「ごちそうだね」

「おいしいです」


 唐揚げってうまいよなー!

 ついに、異世界で唐揚げを食うことができたよ。

 粉と揚げ油は、人間たちからゲット。

 香辛料は、しまんが。

 調理は俺です。

 今はみんな集まってのディナータイムだ。


「脚くれ脚」

「胸もいいけど」

「やっぱ脚だよな」


 唐揚げは脚だよねー。

 え? ももじゃねーのかって?

 鶏の脚のことは、ももって言うんじゃねーのって?

 なんで鶏?

 鶏なんてありませんよ。

 唐揚げっていうのはね、調理法なんですよ。タコの唐揚げとか、ふぐの唐揚げとか知らないの?

 鶏だったら鶏の唐揚げって言わないとさ。

 じゃあ、何の唐揚げなんだよって?


「カエルさいこー!」

「今度はもっと捕まえてこよう」


 蛙ですね。この世界に来てから、まあまあ頻繁に食ってますね。

 なんせこの世界の人間は小さいわけですから。牛を育てたりしてくれませんので。

 小さめの牛とか羊がいてくれりゃよかったのになー。

 馬車はあるけど、あれは馬じゃないしな。食べられる感じしないよ。

 まあ、でも最近のグルメ事情はいい感じですよ。アカネ王女のとこより、シンシャのいるこの町の周辺の方が食材がいい。

 何が違うって、沼と池だね。

 海で魚釣りするより、沼で蛙を捕まえる方が遥かに簡単なんだよね。

 あとザリガニね。これも天ぷらにすると美味。

 田舎の夏休みの話じゃないですよ? 異世界ですよ?

 食事がしっかりしてくると、生きやすい。


「おっと、はしたない」


 うんうん。

 つるやちゃんがスカートを直しました。

 俺にぱんちらを見せて、そのあとちゃんと隠す。わかってきたようですね。

 衣食住+エロ。これが幸せってことなんだよね。

 地位とか名誉ならばいらないけど、美少女ハーレムは欲しいですね~。

 俺は最強になりたいとか、無双したいとかもないし。

 金銀財宝とか、物欲みたいなものも特に無い。

 今となっては、現代日本に戻りたいとも思ってない。

 毎日、美少女にかこまれて楽しく過ごせれば幸せだ。

 しかし、この生活。俺は怖い。

 命の危険があるからだ。

 なに?

 誰にビビってるのかって?

 敵じゃないですよ。俺は無敵だよ。

 物理的には余裕ですよ。おそらく魔王だって余裕でしょう。

 だけどね……

 

「病気が怖いよー!」

「うわっ」

「なんだ急に」


 ぱんちらを見てニヤニヤしてた俺が突然叫んだので、みんな驚いています。いや、だって怖くね?

 この世界、人間が小さいんだぜ?

 俺を診察できる医者がいないんだぜ?

 薬も絶対効かないぜ?

 虫歯も怖いぜ。歯医者がいないぜ。

 医療が進んだ日本のありがたみよ……。


「いや、病気ってならないの?」


 みんなに聞いてみる。

 

「病気?」


 あいらんがアホそうな顔で答えた。

 ナニソレオイシイノみたいな反応じゃん。


「病気の概念ないの?」


 異世界だから、そもそも病気なんて無いとかありえるかもしれんぞ。それなら安心だ。考えてみれば、異世界転生して病気になった人は聞いたこと無いな。


「あるよ」


 答えたのはしまん。やはり、あいらんがアホなだけか。

 なんだよ、あるんじゃねーかよー。怖いよー。

 怖いのは、三大疾病。

 がん、脳卒中、心筋梗塞などだろう……大きな病院じゃないと死ぬ! 異世界にはない! 死ぬ!

 

「ほっぺたがすっごく腫れたことある」

「ん? ほっぺが……おたふくかぜか?」

「体が熱くなって大変だった」

「ふむ……そっか。俺もなったことあるな。覚えてないけど」


 おたふくかぜね……まあ、病気だな。確かに。うん。


「あー、病気ってそういうやつかー。はいはい、あれね」


 あいらんが、ようやく病気の概念を把握したらしい。バカは風邪を引かないとはよく言ったものだ。


「からだがすっごく痒くなって、ぷくーっと膨らんでて、つぶしたら水が出てきて大変だったやつか」

「あー。水ぼうそうってやつか」


 俺はなったこと無いが。


「からだ中が痒くなるのは、なったことがあります」

「お、つるやちゃんも病気だったのか」

「はい。体中がポツポツと赤く腫れました」

「ふむ……じんましん、かな……」


 じんましんね。

 なるほどな……。


「全部こどものやつだなー!?」


 これ全部、こどもクリニックで聞く病気名だなー!

 確かに、この悪魔たちは大体12,3歳に見えるけどー!

 こいつらは、こどもすぎて参考にならんなあー!


「しまん」

「うん?」

「人間はどうだ。病気あるのか」


 小さくても人間は人間。

 人間のことはしまんに聞くに限る。

 こどもよりは参考になりそうだ。


「病気になると、つらそうでカワイイ」

「そんなことは聞いてねえ!」


 とんだサイコパスだよ。

 しまんの人間への愛情はイカれている。

 まあ、しかし病気はあるってことかな。


「変な匂いのものを食べるとなりがち」

「食あたりじゃねーか!?」


 それは病気じゃねえよ。

 腐ったもん食っただけだろ。


「グロい色のキノコ食べてもなる」

「そりゃ毒キノコだろ」


 病気じゃないんだって。

 毒を摂取してんだって。


「あとは……。いい匂いの草を吸いすぎると、だんだん言動がおかしくなって、寝なくなって食べなくなって死んだりする」

「……」


 それも病気じゃないですね。

 何とは言いませんが。法律で規制した方がいいんじゃないかな。

 いや、あるよな。普通に考えたら異世界にそういうのはあるよな。気をつけましょう。合法だからいいってことじゃないですからね。

 

「そのくらい」

「あ、そう……」


 なんかどうでもよくなってきたわ。

 若いのに病気を気にしてる場合じゃないか。イチャイチャしよーっと。

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