第49話 バンザイだよ。もうバンザイ。

 さて、あらためて彼女をよく見てみよう。

 彼女の名前は、わかるてぃ。見た目は可愛らしくはあるが、男子か女子か迷うほど。ふんにゃはボーイッシュだけど男には見えないから。逆に女っぽい感じあるから。

 印象は快活ですね。まあ明るくて元気よ。笑顔が満点だね。にっかーと笑うところは無邪気。ゆきうの笑いはなんか裏がある感じするけど、わかるてぃは一切ないだろうね。

 身長は130cmあるか、ないかもな。小学校の中学年ですね。つるや、しまんは150cm近くあるだろうから、まあ小さい。

 胸もない。あいらんも無いっちゃ無いが、あるっちゃある。わかるてぃは、ない。無。ぺったぺた。


「な、なんだジロジロと」

「まあ、黙ってジロジロ見られてくれ」


 ルックスを説明するには行数……いや、時間が必要なんだよ。

 髪は短い。色はちょっと青いかな。坊主とかスポーツ刈りってことはないが、女の子っぽい髪型ってことはないね。

 スタイルはいいです。いか腹じゃないよ。お腹はきゅっとしてるよ。

 手足も、細いです。ほっぺとか尻はぷにぷにしてそうです。あいらんはもっと肉がついてて、全体的にぷにぷにですが。

 肌はピカピカだ。まあ若さがエグい。別にそれはみんなそうだけど、それにしたってキレイすぎる。

 指でツンツンしたくなるね。


「おい、ツンツンするなよ!」

「しょうがないだろ!」

「しょうがないわけないだろ!」


 怒ってるんだけど、本気ではないな。ムキーッと抗議してるだけ。

 うーん。こいつ独特の可愛さがあるな……姪っ子だったら絶対可愛がるだろ。

 ねー。かわいいけどねー。うん。


「じゃ、元気でね」

「待ってよ! ジロジロしてツンツンしてサヨナラすんなよ!」


 何が不満なんだよー。ジロジロしてツンツンしてサヨナラされて何が不満なんだよー。あ、まさか……そういうこと?


「あー、うん。かわいいよキミ」

「へ?」

「じゃね」

「いやいやいや! カワイイって言われたくてじゃないよ!」


 ん~?

 これしかないと思ったが……


「つるやちゃん」

「はい」

「絶対そうだよね?」

「そうですよ。嬉しそうですし」

「う、嬉しそうじゃないよ!」


 嬉しそうやないか。

 つるやと目を合わせる。お互い、にこり。ほんわか。


「じゃ、そういうことで」

「じゃあね」

「うん、じゃあねー……じゃないよ!」


 地団太踏んでぷんすかしてるけど、絶対こいつイイヤツなんだよな。

 やっぱ今までの悪魔とちょっと違うぞ。敵意がないんだよ。だから戦う気にもならないんですよ。


「わかった、わかった。遊んであげるから」

「遊んで欲しいわけじゃない!」


 やれやれ。子どもは難しいな……。


「じゃあ、何だ? お腹空いてるの?」

「なんでそんなずっとナメてんだ! ナメんな!」


 子ども扱いされて怒ってるのか。子どもだなあ。


「じゃ、ナメてあげるよ、ぺろぺろ」

「う、うわーっ!?」


 ほっぺを舐めてあげました。ぷにっぷにだよ。


「怒ったぞ」

「そりゃ大変だ」

「こんなにバカにされたことないよっ」

「バカにした覚えはないんだけどなあ、ごめんごめん」

「むっきー!」


 完全に怒らせました。意図したことじゃないんですが。


「お前、体がデカいから負けないと思ってるだろ」

「はい」

「ばーか! こっちは怪力の種族なんだよ!」

「えっ、そうなの!?」


 そういうのあんの!?

 悪魔って全部同じじゃないんだ?


「つるや、知ってる?」

「いえ、私たちって別にお互い闘ったりしないんで……」

「あ、そう……」


 こいつら、ほんと自分たちのこと知らないんだよな……。もうちょっと悪魔軍って感じしてくれよと思うまである。もはや四天王とか倒したいよ俺は。


「で、怪力なのね?」

「そうだよ! 今更あやまっても遅いよ!」

「いやいや、嬉しいよ俺は」

「なんで!?」


 小さすぎてプロレスとか、無理だと思ってたわけですから。

 魔法でパワフルになるとか、そういうパターンはあったけど。

 怪力かー。


「俺を放り投げるとか、余裕なの?」

「んっ!?」


 おや……? なんだか様子がヘンです……。


「えっ? できない感じ?」

「いや!? で、できるよ?」

「ん~?」


 無理してるのか?


「怪力なんだよね?」

「そうだよ」

「つるやは、投げられるの?」

「余裕でしょ」

「あ、そうなんだ。じゃ、ちょっとやってみてよ」

「えっ!? いいの?」

「どうぞー」

「えー、よいしょっ」


 わかるてぃは、つるやを重量挙げのように持ち上げた。

 

「おー」

「わー」

「どうだ」


 まあ、確かにすごいよね。なかなか自分より大きな身体を持ち上げるってのは。

 

「じゃ、次は俺を持ち上げようか」

「う、うん」


 自信なさげだな。


「がんばれ」

「うん」


 わかるてぃは、俺をなんとかして持ち上げようとする。だが、まあ無理だね。これはやり方の問題だな。


「ちょっと待って。俺がつるやを持ち上げるから、それを一回見て」

「ん? うん」


 俺はいわゆるボディスラムのやり方でつるやを持ち上げる。


「こういうふうに、手と腕のちからだけで持ち上げるんじゃなくて、体全体を使ってね。こういうふうに」

「ふんふん」


 素直に聞いている。

 ナメんなという威勢もありながら、テクニックは真摯に学ぶ姿勢。こいつ、いいプロレスラーになるぜ!


「ほら、こい!」

「よいっ……しょおっ!」


 持ち上がった! 俺が!


「すごいすごい」

「すごいです!」


 俺を下に下ろすと、わかるてぃは、バンザイして「わーい!」と喜んだ。

 俺たちは3人で抱き合い、輪になって踊った。

 感動的だなあ……。

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