第41話 温泉施設を作ろう 2

 「ん?ぐられしゅさん、なんていったでしゅか?」

 

 いつものようにリビングで朝食を食べる私達に、グラレスさんが今日の予定の提案をしてきたの。


 「はい。今日はペリヴァロンポータルスポットへ向かいましょう」


 ニコニコと言うグラレスさん。今日も温泉施設を作る予定だって知ってたハズなんだけど……何か見えたのかしら?


 勿論、否定意見は出なかったわよ?ペリヴァロンポータルスポットに関してはもうみんな理解しているし、グラレスさんの先見は信頼できるからってすぐに行動する事になったわ。


 でも準備をしてさあ行こうと言う時にね……


 「アンホークで行くんだろ?頼む!俺も乗せてくれ!」

 

 グランテスのリーダーのデジュさんが頭を下げて頼み込んで来る一幕があったの。デジュさん達かなりアンホークに興味を示していたものねぇ。


 でも、行き先はまだ見た事のないペリヴァロンポータルスポット。知り合って日の浅い人は、できれば連れて行きたくないじゃない。私が困った顔をしていると、そこはグラレスさんの話術で何とか収めてもらったのよ。やっぱり腕きき商人の話術は凄いわね。


 そしてやっとアンホークに乗り込み、飛び立った私達。


 『目標地点まで約30分です。標高が更に高くなります。皆様魔導リアウォッチの装着をしっかり確認して下さい』


 アンホークのアナウンスに、それぞれ装備を確認する私達。因みにメンバーはいつもの赤獅子メンバー(ルインさん抜き)、バージさんとグラレスさんと私。


 あ、ルインさんとシャルさんはどうしたかって?ルインさんは相変わらず魔導紡績工房をじっくり観察中。また糸をかなり作り出してたわ。


 シャルさんは、「せっかくの機会ですのよ?ちょっと手伝って来ますわ」だって。シャルさんのスキル「縫合」がどうやらスキルアップしたらしいの。試す為にシーラさん達と一緒にカシュミール縫うんだって張り切っていたわ。

 

 そうなると空きが出るアンホーク機内。いや、広いから定員数は関係ないんだけど。……なぜか機内にヤナ族副村長のスヴェンさんの姿があるのよねぇ。


 「ユイ様のあるところに、ヤナ族繁栄の兆しありと聞きました。これはヤナ族副村長として見逃すわけには行きません!」


 どうやら、デジュさんが頼みこんでいる間に入り込んでいたスヴェンさん。ちゃっかりしているというか、こういう人だったっけ?というか……

 まぁ、仕方ないか。ヤナ族はかなり標高が高い場所まで移動するらしいし、魔導リアウォッチも要らないらしいから大丈夫だろうし。


 というわけで、いつもとちょっと違う雰囲気の機内で移動する私達。まぁ、アンホークの快適な空間で、普段通り読書したり会話したりしてたら、あっという間にペリヴァロンポータルスポットの位置に到着したんだけどね。


 『ここが目標地点です』


 アンホークの案内でフロントガラスを見ると、切り立った山肌に沿って一箇所だけ明るい場所があって、その箇所の景色が揺らいでいたの。


 「結構大きな入り口だ。このままアンホークで入っても良さそうだな」


 窓から確認をするバージさんの言葉を補足する様に、アンホークも『このまま突入可能な入り口です。突入しますか?』と言ってきたの。


 私もグラレスさんの目を見て確認をして了承し、アンホークでペリヴァロンポータルスポットに突入したわ。すると内部は……


 幹が太く大きな木々が生い茂り、木の根が集まり出来た洞窟の中を豊かな水量の清流が流れ落ちて、大きな湖を作り出していた空間が広がっていたわ。更に木々の隙間から光が差し込み、青く澄み切った水面がキラキラしていて、幻想的な雰囲気を作り出していたの。


 「こんな山頂付近にこんな場所が……」


 この近辺に来た事のあるスヴェンさんも驚いていたわね。エレンさんやカエラさん女性陣は、幻想的で美しい景色に感動していたし、バージさんやダンさんは空間の中に動物がいる事に驚いていたの。


 「魔物じゃなく、動物がポータルスポットにいるなんて……」


 グラレスさんもそう呟いた時、私のステータス画面が勝手に開き、パアアッと光がポータルスポット全体を包みこんだわ。しばらくして光が収まったらステータス画面に選択肢が現れたの。


 『ペリヴァロンポータルスポットを亜空間(小)と統合しますか?

  YES→亜空間(大)へ

  NO→キャンセル 』


 これは即決だったわ。だってこんな綺麗な景色を無くしたくなかったもの。それにキャンセルしたとしても、前回のポータルスポットの様にステータスに何か加わるかもしれないし。


 そう思ってキャンセルしたの。

 今回はグラレスさんに頼らず決めてみたのよ。

 すると、もう一度指示が出てきたの。


 『ペリヴァロンポータルスポットを魔石化しますか?

  YES→ エターナル魔石5個作成可能

  NO →ペリヴァロンポータルスポットを収納』


 「こりぇはこまったでしゅ」


 まさかペリヴァロンポータルスポットが収納できるなんて!収納出来るなら好きな場所にも出せるって事よね……と考えたりもしたけど、流石にこれはグラレスさんを見つめちゃったわ。するとにっこり「ユイさんの決定が正解ですよ」って言い切られちゃった。


 ……エターナル魔石は確かに欲しいけど、この時の私は、このペリヴァロンポータルスポットを活用出来ないだろうかって考えていたのよね。


 だって、ヤナ族の村の周りにこのポータルスポットがあったら?魔物も寄せ付けず水や資源が簡単に手に入るようになるのよ?そしてこの中が更に安全な避難先にもなるのよ?

 

 何よりここに温泉を引き込めば、絶好の露天風呂が出来るじゃない!


 うん、最後の願いが1番強かったのは元日本人思考故ね。温泉は絶好のロケーションがあってこそって思っていたんだもの。


 「ノーでしゅ!」


 思わず叫んだら辺りがまた光出したの。目が見える様になったら、アンホークは元の山肌の上を飛んでいたわ。そして私のステータス画面にこれが加わっていたの。


 ユイ (3) 女 人間

 HP 100

 MP 1,000,000

 スキル 魔導具ショップサイト

     アイテムボックス

     エターナル魔石変換装置 1

 称号 異世界からの渡り人

    クレーリアの祝福(魔力増幅)

 センス ポータルスポット 3/100

      亜空間 (小) 

     ペリヴァロンポータルスポット(深緑の湖)×1


 「うきゃあ!やったでしゅよ!」


 飛び跳ねて喜ぶ私に、目の前で起こった事に感動して私を崇めるスヴェンさん。ニコニコ笑顔のグラレスさんとエレンさんカエラさん。バージさんとダンさんはちょっと苦笑い。魔導エクレシア辞典の為のエターナル魔石も欲しかったんですって。うん、確かに……


 ま、まぁでも今回はヤナ族が喜んでくれるし、私の目的まで果たせるし、いい決定よね!


 それで興奮のまま帰途に着いたんだけどね。村まで帰ってきたら、村の入り口で2人が仁王立ちして待ち構えていたのよねぇ。


 「なぜ一言声をかけてくれなかった!」


 お怒りの言葉はルインさん。


 「だって魔導具に夢中になってたじゃない」

 「声はかけたわよ?一応」


 でもエレンさんカエラさんの言葉で「ウッ」と言葉に詰まるルインさん。そりゃ仕方ないわね。だって魔導具に触っている時のルインさんって、何言っても空返事しか返ってこないんだもん。


 それでも置いて行かれた事が悔しかったのか、不機嫌なままのルインさん。その様子を見てグラレスさんがルインさんに、ペリヴァロンポータルスポットが収納出来た事を教えたの。


 すると私の肩をぐっと掴んで「すぐ見せてくれ!」とガクガク揺らすものだから、バージさんに殴られてたわね。私はなんだかふらふらしちゃったけど、過保護なバージさんがすぐ抱き上げてくれたからね。ふう、助かったぁ……


 で、もう1人はというと……


 「なぜお前がアンホークに乗っているんだ!」


 そう、アンホークに乗れなかったデジュさん。自分が乗れなかったから悔しくて、スヴェンさんに八つ当たりしてたみたい。メンバーから理由は聞いていても、やっぱり悔しいのが勝っちゃったんだって。後ろからきた「グランデス」メンバーが呆れながらも「まあ、許してやってくれ」ってフォローしてたわ。うん、いいチームね。


 当の八つ当たりされているスヴェンさんは、気にするどころかデジュさんを煽っていたわ。からかって遊んでいたとも言えるわね。アンホークの乗り心地が如何快適だったかとか、奇跡の様な体験だったとか楽しそうに話していたもの。


 ……うん、あっちはそのままにしましょ。


 さて、戻ってきたけど、まだ時間はたっぷりあるのよね。

 ルインさんも待っているし、ペリヴァロンポータルスポットを取り出して、露天風呂完成に近づけなきゃ!


 楽しみ〜!


**********

作者より:ご迷惑をおかけしますが、この回で一旦更新をしばらく休止します。理由は、カクヨムコン前に「亜空間ホテル」を完結させるためです。連載ばかり増やしていてもいけないと思い直しまして(^_^;)こちらも必ず再開させますので、しばしお待ちくださいませm(__)m

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新・魔導具ショップサイトで異世界を快適に過ごしたい 風と空 @ron115

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