第38話 温泉を調べよう
宴会の途中、バージさんに連れてもらって村の結界の外に出た私。途中見つかってダンさんとルインさんも護衛についてきたの。
「ほらあそこだ。湯気が勢いよく上がってるだろ」
「……おい、ルイン。お前この状態どうするつもりだったんだよ……」
ルインさんに場所を案内して貰ったんだけど、戦いの後って土地が酷く荒れているのね……地面ボコボコだわ。ダンさんが呆れるのがわかるわね。
「あー……落ち着いたらなんとかするつもりではあるぞ?」
ルインさん今思いついた感じね。土魔法で整えるのかしら?見学したいわね。……それよりも硫黄の匂いが凄いわ。私は慣れているけど。
「うーわ……ひでえ匂いだな。ユイ大丈夫か?」
「もちろんでしゅよ!というかバージしゃん、もっとちかづいてくだしゃい!」
「げぇ!」
あー、バージさんは駄目だったかぁ。ごめん!私の足じゃ近づくの大変なのよ。なんとかお願いしてバージさんに近くまで行って貰ったけどね。バージさん鼻つまんでまで連れていってくれたのよ。後でお酒や好きなの物いっぱい作ってあげなきゃ。
温泉が湧き出る所まで来てみると……地面の底の穴は歪みくらいなのかしらね。よく日本で見てた10メートルくらい縦に吹き出す温泉じゃなくて、徐々に出てくるタイプだったの。ポコポコポコポコ音がしてたわ。うーん、温泉って天然ガスもあるんじゃなかったかしら?異世界だと違うのかなぁ?というかこれ触れる温度じゃなさそうだなぁ。
「なぁ、もういいだろ?ユイ〜」
あ、バージさんが根をあげたわ。今日はここまでね。
「ありがとうでしゅ!きょーはここまででいいでしゅ」
「……今日はって……はぁ。仕方ねえか、ユイだもんな」
そう言って私を抱え直してくれるバージさん。優しいわよね。あら?そういえばダンさんルインさんは?……って遠い‼︎かなり遠くに行っちゃってるわ……この匂いやっぱりキツイかしらね。
で、宴会に戻ったら戻ったでヤナ族の人達から「変な匂いするぞ」って指摘される私達。そういえば犬獣人だものね、匂いには敏感だったわ。
おかげでダンさんルインさんも私達と一緒にデラックス魔導テントに戻ってみんなでお風呂に入り直したのよ。そこまで臭いかしら……?
お風呂も上がり私はもう宴会はいいかな、と言ったらダンさんとルインさんがバージさんを宴会に連れ出してくれたから、今はテントに私一人残っているの。
ふふっ、よかった。調べたい事があるのよね。
魔導TVの電源をつけて位置情報を調べてみたら、やっぱりついてた!温泉マーク!これってもっと調べられないかしら……?そう思って温泉マークにカーソル持っていって押してみたら、魔導エクレシア辞典に切り替わったの。
『[治癒温泉]
ルインとエレンの攻撃によって出来た歪みから湧き出た温泉。硫黄温泉の一種。乳白色の泉質。温泉が地表に至るまで聖鉱石(希少な聖属性の魔石の原石。地中深く存在するため存在は明かされていない)の間を通り治癒能力が付与された温泉。効能は美肌、肉体疲労、古傷回復。但し源泉温度は75〜7°のため注意。
補足:魔導具ショップサイトの産業魔導具から必要な魔導具を設置すると温泉に入る事は可能。 』
へえ〜美肌かぁ。これって女性陣嬉しいだろうなぁ。私はまだ3歳だしぷにぷにだからいいけど。でもここはヤナ族の土地だし要相談……「まあ!なんて事ですの!」ってシャルさん?いつの間に戻ってきたの?
「ユイちゃん!これは本当なの?美肌って!」
「あわわわ。しゃるしゃんおちちゅいて!」
ガシッと私の肩を掴むシャルさん。ひええ、目が真剣だわ。
「そうでしゅ。でもじっさいにはいってみにゃいと……」
私の返答に考え込むシャルさん。
「そう、そうですわね。……これって凄い事ですわよ。美肌に回復なんて……ヤナ族の産業になりますわね。でもユイちゃんの力をただで使うのもヤナ族の皆さんは良しとしないですわ。だったらカシュミールに加えて、労力の提供ですわね。それに私達の事もありますから、明日から動き出さないといけないですわね」
シャルさんたら一人の世界に入っていっちゃった。あの、戻って来て〜!どうしようとシャルさんを見上げていると、くるっと私に顔を向けてにっこり笑うシャルさん。
「念のため確認しますわ。ユイちゃんは温泉に入ってみたいという事でいいですわね?」
「は、はいでしゅ」
「ふふっ、何よりユイちゃんの意思が大切ですもの。ならば私達がその願いに協力しないなんてあり得ませんわ!ユイちゃん。一緒に頑張りましょう!」
「はいでしゅ!」
シャルさんに乗せられた感があるけど、いずれみんなに話そうと思っていたし、まあいいかな。それでノリノリになったシャルさんに言われて魔導具ショップサイトの方も確認したんだけどね。[産業魔導具]の中の建設魔導具に貴方にオススメがあったの。
貴方にオススメ!
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相変わらずだわ……このサイト。もしかして、利用者私一人だから売り込みが激しいのかしら。……あまり深く考えてもわからないものはわからないし、そのままにしときましょ。それにしても今日は買えないわね。まだ相談もしてないし。
シャルさんにそのまま伝えたら、どうやらやる気に火がついたみたい。
「ユイちゃん、今他の人呼んできますわ!ちょっとの間寂しくても一人で我慢していて下さいませ!」
大丈夫と言う間もなく走り去ったシャルさん。うん、よっぽど美肌が気になるのね。これぞ女性パワーってものかしら。なんか違う気もするけど。……飲み物でも飲んで、久しぶりに「王宮のレシピ」みようかしら。
トコトコと冷蔵庫から飲み物を取って来て王宮のレシピを見ていたら、グラレスさんが戻ってきてくれたの。
「ユイさん。シャルが凄い勢いで族長に突進していった理由わかりますか?いやぁ、なかなかあそこまで迫力あるシャルは久しぶりでしたからねぇ」
シャルさん、どれだけ本気出しているのかしら……
とりあえずグラレスさんに温泉の事を伝えたらね。
「それはそれは!シャルがあそこまで本気になるはずですねぇ!是非やりましょう!勿論協力は出し惜しみしませんよ!」
グラレスさんまで本気になっちゃったのよ。それから本格的な打ち合わせみたいになってね。熱中してたらシャルさんも戻って来て「明日族長さんを朝食に呼びましたわ!」って嬉しそうに報告してたの。それにエレンさんやカエラさんも帰って来て話に加わってきたの。それはもう大盛り上がり。それに王宮のレシピの話しも加わって、話しが弾むこと弾むこと!
私はみんなも迫力に圧倒されつつ、明日に備えるつもりで一足先に寝室に入ったわ。3歳児って本当によく眠くなるのね。ベッドの上でウェルと遊んでいたらそのまま寝ていたみたいよ。
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