第35話 コジュさん達の様子を見よう

 「ほああ……さんかくのおうちいっぱいでしゅ」

 「ヒュイ!」


 朝食の後、バージさんウィルとヤナ族の様子を見にテントを出たんだけどね。あ、ウィルは私の肩に乗っているわよ。


 昨日はじっくり見れなかったけど、結界の中のヤナ族の家は三角の屋根が地面まであるタイプだったの。これ屋根は石を加工したのかな?壁はレンガっぽいの。きちんと石畳で整備されたところが村の大通りなんだって。


 「おなじいえがいっぱいでしゅと、わかんないでしゅ」

 「ほれユイ、入り口を良く見てみろ。それぞれ門の上の石の形が違うだろ?コジュ達がいるのは大通りの丸が二つの家だ」


 立ち止まって悩んでいる私に、屈んで教えてくれるバージさん。あ、本当だわ。色んな形がある。


 「ありぇはーまるひとちゅ。あっちはしかくがひとちゅ。あ!ありぇでしゅね!」

 「正解。な、近いだろ?」

 

 そうコジュさん達がいる所は目と鼻の先だったの。トコトコと歩いて行くと、結構大きな家だったのよね。家なのかしら?疑問に思いながらも扉を叩いてみると、バタバタ……と音がして中からカミンさんが出てきてくれたの。


 「あ、ユイちゃんとバージさん。おはようございます。よく眠れた?ユイちゃん」

 「はいでしゅ!なので、きょうはみんなのようしゅをみにきたでしゅ」

 「俺は付き添い」


 にっこり私達を迎えてくれるカミンさんに、訪問の理由を伝えたら喜んで私達を中に入れてくれたの。勿論ウィルにも挨拶してくれたのよ、カミンさん。ふふっ、可愛いだって。良かったねウィル。


 カミンさんによると、通路を挟んで右がトイレで左が洗面所だって。そして奥の扉を開けてくれたんだけど……


 「こりぇはねんだいものでしゅ」


 そう、部屋のあちこちは結構傷んでいたのよ。思わず口から素直な感想が出ちゃったわ。そんな私の言葉に思わず苦笑するカミンさん。


 「ここじゃ建材が手に入り辛くてね。みんなこんな感じよ。あ、それよりここは村の集会所でね、今は一時的に負傷者の受け入れをしていたんだけど、ユイちゃんのおかげで全員助かったのよ!」


 嬉しそうに報告してくれるカミンさん。集会所に並べられたベッドの上では男性のヤナ族の人達の姿があったわ。みんな気持ちよさそうに寝てたり、ゆったり休んでいるみたい。そっか、魔導救急ボックスで身体の傷は治せたんだ。体力や気力は個人の治癒に任せる感じだったもんね。


 そっかそっか。良かったぁ。


 ニコニコしていたら、奥の調理場からコジュさんも出てきたの。


 「あ、ユイちゃん!バージさん!いらっしゃい!朝ご飯もう食べた?」


 コジュさん美味しそうなシチューと焼きたてのパンをカートに乗せて出てきたの。うん、良い匂い!


 「たべてきたでしゅ!くばるのてちゅだうでしゅよ!」

 「ふふっ、ありがとうユイちゃん。でもこれ重いからこのジュースをバージさんのところに持って行ってくれる?」


 おう……3歳児の手伝いって何もないのね……


 体裁よく追い払われた私は、入り口近くのテーブル席に座っているバージさんのもとにジュースを持っていったの。そしてそのまま座っているバージさんに渡して、よじよじとバージさんの膝に登る私。


 「ふはっ。珍しいな、ユイから膝に乗ってくるなんて」


 上機嫌のバージさんとは裏腹に膝の上で頰を膨らます私の様子を見て、カミンさんが私の分のジュースを持ってきてくれたわ。


 「ふふふっ。こうして見ると年相応に見えるわね、ユイちゃん。気持ちは嬉しいのよ。朝から手伝いに来てくれるんだもの。でもユイちゃんにはもう数え切れないくらい助けてもらったわ。だからゆっくりしていて欲しいのよ」


 私の頭を撫でながらカミンさんが優しく慰めてくれたわ。バージさんは指で私の頰を突いて面白がっているけどね。まあ、最近はこの体に引っ張られて精神も幼くなっている気がしないでもないけど。


 私が黙っていると、納得したと思ったのかひと撫でして手伝いに戻ったカミンさん。コジュさんと一緒に、パンとシチューをトレイに乗せてベッドで休んでいる男性達に渡していたわ。


 みんな美味しそうに食べているなぁ。


 「ユイ、見てみろ。美味そうにしてるだろう?アレだってお前が渡した食料で作れたんだぞ」

 「……みんなでかったでしゅよ」

 「まーたお前は……よし!そんなわからずやのユイにはくすぐりの刑だ!」


 素直にうんと言えない私を元気づける為に、バージさんたら脇をくすぐってきたのよ。


 「うきゃあ!や、やめるでしゅよ!」


 キャハハハ笑う私とバージさんの様子に、クスクス笑い出すみんな。ま、いっか。他で手伝えば良いんだもんね。とにかくバージさんの膝から逃げ出した私は、ポテッと床に座りこんだの。この部屋を見て殺風景だなぁと思っていたから、だったらアレ出来ないかなぁってたのよね。


 ステータスの魔導具ショップサイトを開いて……と。


 【生活魔導具】

 【移動魔導具】

 【産業魔導具】

 【魔木魔導具】←そうこれ!


 久しぶりに活躍出来るわね。このサイト。ってことでタップすると…… 


 『 魔木を選択して下さい。

 →・キーリ(断熱性及び調湿性(防湿効果)に優れ、同時に収縮・膨潤率が低く木材としての狂いが小さいことも特徴。総合力アップ)

  ・カエテ(絹糸のような光沢、緻密で複雑な木目有り。 肌触りはなめらか、材質は硬く粘り気有り。攻撃性アップ)

  ・フナ(加工性、接着性は比較的よく、衝撃にも強い。但し曲がりやすい。衝撃耐性強化)

  ・ヒハ(防菌、防魔物性高い。木の香りが強い。魔物避けアップ)

  ・ボウノキ (加工し易い。水耐性強化) 』


 そうそう、最初に選択するのよね。ここはキーリ一択よね。そして、


 『統合させる魔導具もしくは対象を選択して下さい。

  →・購入済み魔導具一覧

   ・サイトから直接選択

   ・ステータススクリーンより選択 』


 ここはステータススクリーンを選択。ええと部屋全体を映して……ってやってたらバージさんが覗き込んできたのよね。


 「こーら、いたずらっ子が!今度は何をしでかす気だ?」

 「いちゃいでしゅよー!」


 ステータススクリーンは見えない筈だけど、私の動きが怪しいからピンと来たみたいね。優しくだけどバージさんにムニーとほっぺを掴まれる私。……仕方ない素直に吐くしかないわね。


 「ここをきれいにしたいでしゅ」

 「ユイ、お前……って今更か。やるのは船を綺麗にしたアレか?」

 「そうでしゅ。やっていいでしゅか?」

 「言っても聞かないだろうがお前は」


 上目使いにバージさんを見て頼むと、頭にポンと手を乗せて髪をくしゃくしゃにされたの。

 

 「好きな様にしな。俺が責任持つさ」


 いつもの笑顔でバージさんがかっこいい事を言ってくれたから、安心して頷き作業に戻ったわ。ええと次は……


 『 選択して下さい。

  1・全面をキーリと統合     MP 5,000

  2・天井と床をキーリと統合   MP 2,500

  3・壁のみキーリと統合     MP 2,500 』


 うん、全面かな。この魔木って既に魔導具化しているから自動メンテナンス付きの上に自動修復機能ついているからこの標高高いところでも大丈夫でしょ。ってことで1を選択。

 

  ダブルタップで決定すると、部屋全体が光りだしたの。これにはしまった!って思ったわね。みんなが驚いて騒ぎ出したんだもん。こういうところが抜けているのよねぇ、私。


 「大丈夫だ!全員落ち着け!」


 バージさんが一括したらピタッと静かになったのはびっくりしたけどね。そして光が収束した後は天井と床が全て白いキーリに変わっていたの。うん、良い感じになったわ!


 1人満足していたら、ため息をついて近づいてくるコジュさんとカミンさん。


 「もう……!ユイちゃん隠す気ないのねぇ」

 「バージさん、止めてくれないと」

 「ん?ユイの好きな様にやらせた方がこの村の為になるだろう?それとも何か?ここにいる奴らはユイの好意を無碍にする奴らなのか?」


 もはや諦めた様に言うコジュさんとカミンさん。バージさんは私の為に驚いているヤナ族男性達を威嚇していたわ。思わず威嚇までしなくても!とバージさんに懇願する私。


 「おや、やっぱりユイさん動きましたか」

 「まぁ綺麗ねぇ」


 私がバージさんの足に抱きついていると、ガチャッと部屋に入ってきたグラレスさんとシャルさん。その後ろで大口を空けている男性と、その男性を支えるシーラさんが「あらぁ」と驚いていたわ。


 ん?シーラさんが支えているって事はその男性は族長さん?


 「族長、言った通りでしょう?ユイさんはこういう子なんです」

 「ふふふ。ユイちゃんだもの。出来る事はやっちゃうのよねぇ。凄いわぁ」


 バージさんの足にくっついていた私をグラレスさんさんが抱き上げて、シャルさんが私を褒めてくれたけど……アレ?グラレスさん達こっちに来るって言っていたっけ?と、疑問に思っている私に族長さんが近づいてきたのよ。


 「クレーリア様の巫女よ」


 そう言って私の前で跪く族長さんとシーラさん。

 はい?巫女ってなんの話?

 グラレスさんどういう事?

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