第34話 一夜明けて
パチッ……
あれ?ここは……ベッドの上?あ、バージさんベッドに運んでくれたのね。そう思ってくるりと右を向けばバージさんの寝顔。
そっかぁ。昨日は私あのまま寝ちゃったんだ。
……どうしようかな。かなり眠ったからもう眠くないわ。
うん、起きましょ。
ぐっすり眠っているバージさんを起こさない様にそおっと起きて、ベッドからゆっくり降りてっと。バージさん、パジャマ着させてくれたのは良いけど、猫のパジャマ一人じゃ脱ぎ辛いのよね。
くう〜……
あら、お腹が。じゃ、このままリビングに行って朝ご飯作っていましょうか。そうと決めたらパタンと静かにドアを閉めて、トコトコとリビングへ。
リビングの灯りをつけると、やっぱりまだ誰も起きて来ていないわね。ふふっ、なんか久しぶりにゆっくり朝食作りやれるわね。
「では!ひしゃしぶりのちょうしょくくっきんぐでしゅ!」
まずはパンのセットをしましょう。今日はクロワッサンを食べたいのよね。材料を全部魔導ホームベーカリーにセットして、あとは設定をクロワッサンにセットして決定で終わり。楽よねぇ。
「あとは〜じゅーしゅと、ろーしゅとぼあとこーるしゅろーとうぃんなーでしゅね(あとはジュースと、ローストボアとコールスローとウィンナーですね)」
ローストボアは魔導調合プリンターでタレを作って、調味料とボア肉を袋の中でモミモミして、魔導レンジで2回チンするだけ。
コールスローはこれを使いましょ。魔導フードプロセッサーでキャベツを千切りにして、塩でモミモミ。魔導調合プリンターでマヨネーズとお酢作ってたのよね。あ、胡椒もあったわね。
卵はレンジでチンしておいて。あ、卵はね、器にお水に入れて、お水の中に卵を入れて黄身を爪楊枝で一回プスっと差し込むのよ。でレンジ後は水を捨てれば茹で卵ができるの。簡単でしょ。
さて、キャベツの水気を切って材料を全部ボールに入れてっと。
「まーじぇまじぇしーましょ♪」
フンフン鼻歌歌いながらやっていたら「ふふふっ」って後ろから笑い声が聞こえてきたの。振り返ってみたらシャルさんが起きて来ていたわ。
「あ、しゃるしゃん!おはよーごじゃいましゅ!」
「ユイちゃん、おはよう。可愛いネコさんが朝食作ってくれているのずっと見ていたかったんですけど。私も手伝いますわ」
「ありがとうでしゅ!」
笑顔のシャルさんにローストボアをスライスしてもらって、私はウィンナーを焼きましょう。魔導レンジをオーブンに切り替えて、網の上にウィンナーを敷き詰めてあとはお任せでポン!あ、これならシャルさんでも出来たかしら。
「あとはふるーつでいいでしゅね」
「そうですわね。いつも思うけどこんなに豪勢な食事を旅先でとれるなんて嬉しいですわ」
シャルさんはイエローグレープを洗いながら、笑いあう私達。ふふっ、何より私が快適さと美食を求めるからね。元日本人は贅沢なんです。
「ユイちゃん、セッティングは私がやりますわ。後はゆっくりしていて良いですわよ」
「はいでしゅ!おねがいしましゅ」
シャルさんの好意に甘えて、私はトコトコと魔導TVの前に。リモコンをとって確認したかったのよね。本当にポータルスポットが消えたのか。
プツン……と電源を入れたところでリビングには、エレンさんとカエラさん、そしてルインさんが起きて来たわ。
「おはよう!シャルさん、ユイちゃん!」
「あら?もう朝食できているの?」
「良い匂いしていたからなぁ」
3人共朝の鍛錬に起きてきたのね。しっかり着替えているもの。
「ふわぁ……はよ」
「おはよう」
その後はダンさんとバージさんが起きて来て、遅れてグラレスさんが起きて来たわ。
「おや、皆さん早いですね。おはようございます」
グラレスさんはキッチンにいるシャルさんに軽い挨拶のキスをして、みんなと挨拶を交わしていたわ。私も挨拶しながらリモコンで周辺地図を出していたらね……
「ぺりゔぁろんぽーたるすぽっと?」
私が思わず声に出したら、みんなの視線が魔導TVに向かったわ。
「なんだ?この青いポータルスポット?」
「わからんが、これはムルカの村から更に上に登るのか……」
ダンさんもルインさんもわからないみたいね。しかも更に標高が高い場所にあるわ。するとバージさんが何か思いついたみたいね。
「ユイ、魔導エクレシア辞典も開いてみてくれ」
あ、そうか!と思ってTVで開いて見ると……
[ペリヴァロン・ポータルスポット]
***ポータルスポットの一種。ペリヴァロン=環境を意味する。魔物を寄せ付けず、亜空間の中にまた別の環境が存在する稀なスポット。100年ほど前砂地に出現したペリヴァロン・ポータルスポットについては、ポータルスポット内に水場が存在した例がある。 ポータルスポット内にユイを連れて行く事を推奨***
やっぱり出てきたわ、解説。しかも私をご指名ね。これを見たグラレスさんは何か見えたのか考えていたの。
「ふむ……。これについては急がなくても良さそうですね。まずはヤナ族の件が終わってからアンホークに連れて行って貰いましょう」
一先ずこの件は保留になったけど、まず私が知りたかったポータルスポットに関しては消えていたからホッとしたわ。
みんながペリヴァロンポータルスポットについて注目していた間にシャルさんがみんなの朝食のセッティングを終わらせてくれていたの。ちょっと早いけど私のお腹がぐーぐー鳴っていた事もあって、全員で朝食を食べる事にしてくれたわ。
テーブルの上には焼きたてのクロワッサンが山積みで良い匂い。コールスローは各自で取り分ける形にして、大皿には山のようにスライスされたローストボアにソースがピッチャーに入っていて、隣りには瑞々しいフルーツがいっぱい。あ、勿論ウィンナーもあるわよ。更にフレッシュジュースもあるし、我ながらすっごい美味しそう!
「いただきましゅ!」
実は私食事の時ってバージさんに取り分けて貰ったり、食べさせて貰ったり、口を拭いて貰ったりしているの。3歳児は食べるのも綺麗に食べられないのよね。勿論しっかり量は食べてるのよ、バージさん。器用よね。
食べながら今日の確認をグラレスさんが切り出したわ。今日はヤナ族の被害状況の確認と手伝いをする事になったの。そしてもう一つ。
「ユイさんの事ですが、ムルカの村と王都からの冒険者パーティには協力者になってもらおうと思います。昨日あちこち様子を伺っていたのですが、特に問題がない様でしたので族長の回復を待って話し合おうと思っています」
グラレスさんがそう言うなら私は問題ないと頷き、この話は後に持ち越し。シャルさんが食後の紅茶を淹れてくれてまったりした雰囲気の中、私はジュースをごくごく。
「プハッ!おいしかったでしゅ。ところでこじゅしゃんたちはどんなようしゅでしゅか?」
そう、一緒に来たヤナ族の女性陣の様子も気になったのよね。ヤナ族の被害状況やムルカの村の全貌も気になるし。
グラレスさんの話しによると、昨日の時点で負傷者の看護は終わっているみたい。どうやら魔導救急ボックスがかなり役立ったのね。それに魔導パイプベッドも活躍したみたいね。昨日の短時間だけで、寝ていた人もスッキリとして動ける様になったみたいよ。
「よかったでしゅ!きょうはようしゅをみにいきたいのでしゅが、いってもいいでしゅか?」
「ああ、俺がついていくから大丈夫だ。ダン達に冒険者パーティの様子を確認して貰っても良いか?」
「まぁ、ユイとバージはいつも二人一緒だからなぁ。じゃ、俺達も様子見に行ったらそっちに合流するわ」
「私とシャルは先に族長さんの様子を見に行って来ます」
私達はコジュさんのところへ、赤獅子メンバーは冒険者パーティの様子見、グラレスさんとシャルさんは族長のお見舞いと、トントン役割決まって行ったの。
それに私実は気になっていたのよね。
ムルカの村がどうなっているのか。
やっぱり新しい場所を見るのはワクワクするわよね!
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