第33話 到着!ーダン&ユイ視点ー

 「ルイン右頼む!」

 「任せろ!」

 「カエラ!エレン!魔物の数は?」

 「だいたいあと2百ってところ!」

 「ユイちゃんのおかげね!」


 村の入り口を背に戦っていた俺達。圧倒的な数に押されつつも、王都から派遣されていた3パーティとヤナ族の精鋭で村への侵入はなんとか防いでいた。すると、いきなり辺りが光り出し、光が収まると無限に湧いていた魔物の数が減ったんだ。おそらくユイがポータルスポットをなんとかしてくれたんだろう。


 流石ユイだな。だが……


 「デジュ!そっちは大丈夫か?」

 「ああ!おかげでな!」

 「スヴェンさん達はどうですか⁉︎」

 「もう少しは持ちそうだ!」


 デジュは王都から派遣されていた3パーティの内の1つBランクの「グランテス」のリーダーだ。この3パーティのまとめ役でもある。スヴェンさんはヤナ族の副長。族長が怪我をしてから、ヤナ族の精鋭達をまとめている。が、この2グループ俺達が来る前から戦っていた事もあり疲労が濃い。


 休ませてやりたいが……

 ……ん?あの音……⁉︎


 「なんだ?この音?」

 「何か近づいてくるぞ!」


 戦いながらも警戒するデジュやスヴェンさん達。

 お!来たか。


 バタバタバタバタ………‼︎という音と共にアンホークが姿を現した。


 「おい……!あれって……」

 「大丈夫です、スヴェンさん!仲間ですよ!」

 「おいおい……!突っ込んでくるつもりか‼︎」


 俺がスヴェンさんに説明していると、慌てたデジュが言うよりも早くビックホーンワイルドシープの群れに突撃していくアンホーク。


 ドガガガガガガ!という衝撃音と共に多くの魔物を弾き飛ばしていき、辺りを蹂躙すると……


 「誘引アトラクトリリース!」


 アンホークからバージが飛び出してきた。バージがスキル発動すると、辺り一面ビックホーンワイルドシープ達の動きが止まった。そこをバージが素早い動きで次々と仕留めていく。


 ……アイツ!またスキルアップしたか⁉︎


 バージのおかげでアンホークの周りに空間が出来た時、アンホークに突撃しようとしていたビックホーンワイルドシープの群れの動きが変わった。


 「はーい、どいてくだしゃいねー」

 「さあ、行きますよ」

 「後ろは任せて下さいませ」


 おい、ユイ……ここでまさかの魔導誘導棒かよ……


 アンホークが消えて、姿を現したのはユイ達だ。なんで、魔物の中に現れるんだ!と一瞬焦ったが、こちらの杞憂だった。大人しく左右に分かれ道を作る魔物達を誘導しながら、一列になってこちらに歩いてくるんだもんなぁ。全く力が抜ける……。


 ーユイサイドー


 良かったぁ!みんな無事だった!赤獅子メンバーも怪我なさそうだし、他のみんなも大丈夫そう。


 「コジュ!カミンにシーラまで!なぜきた!」

 「あなた!魔導具が反応してどうしても気になって……」

 「スヴェン!後で非難はいくらでも聞くわ!まずは私達を怪我人のところへ連れていって!」


 私がみんなの様子をみて安心していると、ヤナ族の女性達を見つけた男性がコジュさんに詰め寄っていったの。コジュさんの旦那さんかしらね。そこで詰問が始まりそうになったところを、すぐに本題に戻すシーラさん。そんなシーラさんには魔導拡張リュックを渡していたの。シーラさん達には村のみんなの為に動いて貰う事にしたのよ。


 リュックの中には沢山の食料とアンホークの備え付けの魔導救急セット、それに見つけていたこれ!


 〈家具魔導具〉より

 魔導パイプベッド(マットレス付き) MP12,000

 ***しっかりした睡眠が必要なあなたに朗報です!この魔導パイプベッドは回復(中)機能搭載!寝ているだけで身体が回復していく優れ物!更に安眠に役立つセラムの香りと快適な寝心地を提供するマットレス付きでこのお値段!勿論耐久性や通気性は抜群です!更に自動メンテナンス付きはもう常識!さあ、快適な朝をこの魔導パイプベッドと共に迎えましょう!***


 これをとりあえず10台購入して渡しているんだ。まずは重症の人から使ってもらおうと思って。


 これを早く届けたいシーラさんの真剣さに、ヤナ族の男性もすぐに動いてくれたわ。ヤナ族の穴を埋めるようにグラレスさんとシャルさんが魔導誘導棒で対応してくれているの。今のところ侵入は防いでいるけど、魔物を減らす為にはやっぱり冒険者さん達に動いてもらわなくちゃ。


 「みなしゃんはこりぇを飲んでくだしゃい!」


 私は私で疲れた表情の冒険者の皆さんにポーションを配って回ったわ。これも大量買いしていたからね。


 「ありがてぇ!」「助かる!」


 次々と感謝の言葉を伝えて飲み干し戦闘に戻っていく冒険者さん達。それに赤獅子メンバーも素早く飲んでバージさんの応援にいったわ。


 ビックホーンワイルドシープの数もアンホークやバージさんのおかげでかなりの数を減らしているし、赤獅子メンバーや体力回復した冒険者さん達も加わって、すごい勢いで数を減らしていったわ。


 私もグラレスさん達のところに加わって近づいてくる魔物を遠くへ誘導していたけど、ヤナ族の男性さん達も戦いに加わっていたから余り出番はなかったけどね。


 戦闘は赤獅子メンバーの活躍は目立っていたけど、バージさんも凄い!流れるように魔物を倒していくんだもの。それに触発されて、冒険者さん達やヤナ族の男性達も次々と倒していったのよ。


 私はそんなみんなをサポートする為、見える範囲で倒されたビックホーンワイルドシープを収納していったの。足場を作って動き易くしたおかげで、討伐のスピードが上がったわ。


 「コイツで最後だ!切断スネイデン!」


 そして時間はかかったけど、最後はダンさんが仕留めたのよ。バージさんたら最後を仕留められなくて悔しそうにしてたのよ。なんか2人で頭数競っていたみたいね。余裕あるなぁ。


 カエラさんエレンさんはそんな2人をみて苦笑いしているし、ルインさんは私が収納しきれていない魔物を燃やしていたわ。後の人達はみんな地面に倒れこんでいたわね。うん、みんなお疲れ様!


 みんなの様子を見ながら、私は戻ってきたバージさんとルインさんと一緒に、残りのビックホーンワイルドシープを収納して回ったの。このままにしておくと他の魔物が来て危険だからね。


 グラレスさんに後で聞いたら、次々と魔物が収納されていくものだから、周りから驚きの目で見られていたらしいわ。そりゃそうか。こんな大容量のアイテムボックス持ちっていないみたいだもんね。後で追求来そうだなぁ。


 でもそれよりも私が大変だったのは、気が緩んだためか眠気が押し寄せてきた事。バージさんの足を掴んでふらふらしている私。そんな私をバージさんが笑って抱っこして村に連れていってくれたの。


 うつらうつらしながら、村の空き地に魔導デラックステントを設置したところまでは覚えているんだけどね。もう私はバージさんの腕の中でぐっすり寝入っちゃったんだ。


 そんな私達を見ていたダンさんのところに、スヴェンさんとデジュさんが近寄ってこんな会話をしていたみたい。


 「ダン。……あの子は一体何者なんだ?あんなに入るアイテムボックス持ちは見た事がないぞ」

 「デジュ君の言う通りだ。それにあの大きな乗り物はなんだったんだ?魔物を誘導するあの不思議な道具といい、シーラ達に持たせた魔導具と言い分からない事が多すぎる。魔物がいきなり数を減らした事もだ」

 「あー……今回は流石に説明が必要だよなぁ。デジュにスヴェンさんちょっと待ってくれ。後で必ず説明する場を作るから」

 「ふむ……、訳ありか。わかった。こちらも族長が目を覚ましてから話しが聞きたい」

 「なら、俺らは各リーダーだけ集めておくさ。後できっちり教えてくれよ」

 「ああ、わかった」


 そんな一幕があった事も気づかず、「ひちゅじがいっぱいでしゅ……」って多少うなされていた私。バージさんがしばらく私の頭を撫でていたら「うにゅ……」って言いながらすぐ眠ったみたい。3歳児にしては頑張ったものね。

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