第32話 インクリースプロダクション化を止めよう 2

 突入したポータルスポットの内部は、辺り一面青い宝石に囲まれたキラキラしている空間だったの。でも地面には増殖した大量のビックホーンワイルドシープの群れが入り口を目指していたわ。「これほどとは……」とグラレスさんも流石に驚いていたわね。とにかく私が急がなきゃ!


 「しゅてーたしゅ!」

 

 今回も光が溢れだし、大量の魔物が光に包まれて消えていったわ。そして虹色の光が空間いっぱいになった時、選択画面が出て来たの。

 

 『インクリースプロダクション化により選択肢が広がりました。

 

  エターナル魔石に変換しますか?

  →変換後はエターナル魔石15個に変化します。魔物が500残ります。


  エターナル魔石変換装置を設置しますか?

  →通常のポータルスポットをエターナル魔石に変換出来る様になります。魔物が全て消えます。


  バージョンアップしますか?

  →魔導エクレシア辞典/オックスバードがバージョンアップします。魔物が300残ります。


  →サイトが3つ強化されます。魔物が100残ります。


 以上から選択して下さい。 0:03 』


 「ほああ?」

 「魔物も残るのか⁉︎」

 「時間も短くなってます!」

 「あらあらウィルちゃんまで」


 あまりの選択肢に、思わず間抜けな声を上げる私。バージさんは魔物が残る事に驚き、前回よりも短くなった時間にグラレスさんも少し焦っているみたい。シャルさんだけはなんかのんびりしてるわね。おかげで、肩の力が抜けて助かったわ。


 今回は即答できるけど……


 私の考えでいいのかみんなを見上げると、

 「ユイが決めろ。後は俺がなんとかしてやる」

 「ええ、ユイさんの決定で良いと私も思います」

 「ユイちゃんが決めた事だもの。大丈夫よ」

 バージさんは私の頭を撫でながら心強い言葉で後押ししてくれたの。グラレスさんは先見で何か見えたみたいね。シャルさんはいてくれるだけで安心できるわ。本当にみんな大好きよ。


 「えたーなるましぇきへんかんそうちにしましゅ!」

 『承認しました』


 承認の言葉と共に、空間にあった虹色の光がステータスボードに集まって来たわ。そしてステータスにこれが加わったの。


 ユイ (3) 女 人間

 HP 100

 MP 1,000,000

 スキル 魔導具ショップサイト

     アイテムボックス

     エターナル魔石変換装置 1

 称号 異世界からの渡り人

    クレーリアの祝福(魔力増幅)

 センス ポータルスポット 2/100

      亜空間 (小)


 ん?なんで横に数字があるのかしら?疑問に思って数字をタップしてみると……


 『変換可能なポータルスポットが装置の中に入っています。変換しますか。初回使用特典で一度だけ2倍になります。

   許可→変換後エターナル魔石2個作成

   キャンセル→初回特典そのまま、一度だけ溜まったポータルスポットの分だけ2倍に変換可能 』


 「やったでしゅ!これでバージョンアップがちかづいたでしゅよ!」

 「成る程なぁ。こうなる訳か」

 

 覗き込んできていたバージさんも、この展開には感心してたわね。それもこれもグラレスさん様々ね!多分もう一つの方を先に行っていたらこれらの選択が現れなかったんじゃないかしら?


 「貴方達は神の使いですか……?」


 その様子をみて、さっきまで状況についていけず息を呑む様に静かにしていたシーラさんがボソリと呟いたの。カミンさんとコジュさんは両手を胸の前で組み、涙を流していたわ。あ、ヤナ族の女性達乗っている事忘れてた。どう説明しよう……


 「シーラさん、カミンさん、コジュさん。全て立ち会わせてしまいましたが、私達は神の使いではありません。勿論、このユイさんも。特殊な能力はありますが、人間ですよ」

 「ええ、それも普通に生活したいだけの女の子なの。仰々しいそんな言葉で敬われるのは、この子の本意ではないわ」


 私が悩んでいたらグラレスさんがすかさずフォローをしてくれたの。それにシャルさんも。嬉しいのは私の気持ちをわかってくれている事。こんな現象を見たら確かに勘違いをしちゃうかもしれないのにね。


 「それに感謝をしたいなら、今見た事を誰にも話さないで欲しい。俺達は普通に旅をして行きたいんだ。それがユイの為にもなる」


 バージさんもしっかり釘を刺してくれたの。私の思いも汲んで。嬉しくなって思わずバージさんの足に抱きついちゃったわ。なんて良い人達に私は会えたんだろうって、出会いに感謝したわね。


 そんな私をバージさんは優しく抱き上げてくれて、シャルさん、グラレスさんも優しく私の頭や背中を撫でてくれたの。その様子に、シーラさん達も何か感じてくれたのかしら。


 「わかりましたわ!絶対他言致しませんわ!」

 「私も!」「勿論私だって!」


 3人とも力強く約束してくれたのよ。良かった。すると、グラレスさんがパンと両手を合わせてその場の空気を変えたの。


 「さて!一先ずここは纏まりました!でもまだ安心はできませんよ。アンホーク!ここから村の状況がわかりますか?」

 

 そうね!まだ終わってなかったわ!グラレスさんの一言で緊急感が戻ってきた私達。今魔導ヘリは魔鉱石ポータルスポットがあったと思われる洞窟上空にいるの。もしかして村が見えないかしら?と窓の外に目をむけると、まだ村の方向に魔物が押し寄せていたのが遠目でも確認できたわ。


 『現在、魔物反応が村の周りに200以上はございます。それに少々駆逐のペースが落ちております。急ぎ戻りますか?』

 「あんほーく!むらへむかうでしゅ!」

 『了解いたしました』


 ポータルスポットが無くなり随分と減ったけれどまだ数が多い。残して来たみんなもそろそろ疲れて来た頃かしら。アンホークがかなりのスピードで向かっている中、バージさんはすぐにでも戦える様に武器の最終チェックをしているし、ヤナ族の女性達はずっと祈っているわ。私に出来る事ないかしら……そう考えていると、シャルさんが私に頼み込んできたの。


 「ねえ、ユイちゃん。魔導誘導棒を私と旦那様の分出せないかしら?そして村の入り口を3人で守ってみない?」

 「戦いは出来ませんが村を守る事はできると思いますよ」


 私の考えを読んだのかと思わず思っちゃったわ。でもその案はいいんじゃない⁉︎思わずシャルさんの手を掴んでぶんぶん手を振っちゃったわ。


 「やってみるでしゅ!」

 「うん。出来る事をやりましょう」

 「戦わなくても守る方法はいくらでもあります!」


 私達3人がやる気になっているところに、グラレスさんの言葉でシーラさん達も何かやれるかもって思ったのね。3人が話かけてきたわ。


 「何か、私達にも出来る事をさせて下さい!」

 「私達の村なのに、ここまで来て何も出来ないのは歯がゆいです!」

 「お願いします!」


 真剣な表情で頼み込んできたのよ。思いは一緒、ううん、自分達の村だもんそれ以上よね。なら、わたしの魔導具で丁度いいのがあるわ!


 「そうでしゅね!みんなでむらをまもるでしゅ!」


 魔導ヘリの機内のみんなの思いが一つになって、丁度村が見えて来たわ。入り口近くで赤獅子メンバーや冒険者達の戦っている様子が見えたの。みんな!もうちょっと頑張って!


 「アンホーク!とつげきでしゅ!」

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