第31話 インクリースプロダクション化を止めよう
バララララララ……
「しゅごいでしゅねー!たかいでしゅー!」
「ユイ、気をつけろ」
「いやぁ、快適ですねぇ」
「貴方、ほら横を鳥が飛んでいますわ」
呑気に空の旅を楽しんでいる私と心配性のバージさん。そして凄いのは、ここでも余裕があるグラレスさんにシャルさん。この2人って慌てないのよね。
そう、私達は魔導ヘリコプターで現在移動中。勿論宿はチェックアウトしてきたし、街の門までは歩きで移動したわよ。その後魔導ハイヤーで移動して山麓まで来てから、魔導ヘリコプターの登場。そして1番ハイテンションだったのはやっぱりこの人。
「アンホーク、これは何だ?」
『障害物を確認するメーターでございます。当機には結界が備わっておりますが、飛行中魔物の襲撃も予測されます。敵の接近は赤丸にて表示されます。基本は回避、攻撃されましたら速度を上げまして突撃も可能でございます』
パイロット席に座りじっくり操作方法を搭載されたAI(今回はアンホークって名乗っていたわ)に講義して貰っているルインさん。機内の扉が開いた途端に、即座にパイロット席に座りアンホークに質問しまくるブレないルインさん健在ね。因みに今はオートモードで飛んでいるわよ。でもルインさんならそのうち手動で飛ばせそうな感じよね。
「すげーよなぁ。この空間。揺れもなければ、音も静か。しかも衝撃耐性もあるから、万が一敵にぶつかっても一切中に響かないとはなぁ。俺らいらねえよな」
「ダン。村に着いたらいくらでも活躍の場所はあるわ。今は温存していると考えなきゃ。カエラなんか着くまででもって、時間を惜しんで魔導エクレシア辞典読んで備えているのよ」
こちらは最後尾に座っているダンさん、エレンさん、カエラさん。窓を見ながらのんびりしているダンさんをエレンさんが相手をしているわ。カエラさんは熱心に魔導エクレシア辞典を読んでいるの。もう少しで技が掴めそうなんですって。
そんな私達に挟まれる様に座っているのがヤナ族の女性達。3人とも両手を組んでお祈り態勢のままなのよねぇ。大丈夫って言っていても、初めて見る移動魔導具に空まで飛ぶとなるとやっぱり恐怖が強いのかしら。でも多分これが普通の反応よね。
そんな機内とは関係なく順調に進む魔導ヘリコプター。山頂に近づく程に景色が変わってきたの。
「だんだんきがしゅくなくなってきたでしゅね(だんだん木が少なくなって来ましたね)」
木がまばらになり、山肌に沿って岩地と白や黄色の高山植物の景色に変わってきたの。天気も快晴だし風も安定している見たいね。だから余計に見えて来たのよ。
「まずいぞ。目的地は魔物に囲まれている」
ルインさんの言葉に窓に張り付いてみると、村は結界が機能しているものの、圧倒的な数のビックホーンワイルドシープに囲まれていたの。それを見て叫び声を上げるヤナ族の女性達。グラレスさんやシャルさんが落ち着かせる中じっくり見てみると、結界の入り口を守って戦っている人達がいたのよ!
「あしょこ!まだたたかってましゅ!」
応援に来た冒険者の3パーティらしき姿が見えたの。その中に体格のいいヤナ族の男性達も混ざっていたわ。今は善戦しているように見えるけれど数が多すぎる!
「ねえ、ダン。おかしいわ。これだけのビックホーンワイルドシープがこの辺にいたなんて考えられない……」
「確かにそうだ。これじゃスタンピートクラスじゃねえか!」
「ねえ!ちょっと見て!」
エレンさん、ダンさんがこの状況に違和感を抱いている中、カエラさんが叫び声を上げたの。みんなが振り向く中、魔導エクレシア辞典が宙に浮きまた自動的にページを開いていったわ。そして開いたページには…
[インクリースプロダクション化ー魔物増産化現象ー]
魔鉱石内にポータルスポットが出現し、そこから1キロメートル以内に更にポータルスポットが出来た場合に起こるポータルスポット現象。魔物を呼び寄せるポータルスポット同士の相互作用により、ポータルスポット内に侵入した魔物を増産するスポットへと変化する。
対策:現在ポータルスポット同士が同期している状態。ユイを連れてどちらか片方のポータルスポットに入り、ステータスを開く。ポータルスポットをエターナル魔石に変換させると、増産された魔物が消去される。
開かれたページをカエラさんが読み終えたと同時にバージさんと目が合う私。そうか!私がポータルスポットを何とかすれば良いんだ!バージさんも一緒に来てくれるのか私を見てうなづいてくれたわ。その様子を見ていたダンさんがルインさんに呼びかけたの。
「ルイン!先に俺達を地上に降ろしてくれ!」
「私達だけでも加勢に行って来るわ!」
「ふふっ。やっと覚えたもの。試したいじゃない」
あれだけの魔物の数にも恐れずに助けに行くと言うダンさん、エレンさん。カエラさんは魔導エクレシア辞典からまた一つ学んだみたい。試せる事が嬉しいのか良い笑顔だわ。頼もしい!
「アンホーク!村の入り口上空6メートルまで降下!ダン達は後ろのカーゴドアから出てくれ!当然俺も行く!」
ルインさんの指示の下降下を始める魔導ヘリ。入り口上空まで来ると開いた後部カーゴドア。
「
そこから地上に向かって矢を連続で打ったカエラさん。風を切り裂く大きな音と共に地上に向かって行く矢の威力は魔物を貫通し、地面に大きな穴を空ける程。
空からいきなり降って来た威力のある矢に驚いた地上の冒険者達。一部の冒険者と村人に隙が出来てしまい魔物が遅いかかろうとするところに今度はエレンさん。
「
威力が消えない限り魔物を追う雷撃魔法を唱えたの!これも出来るようになったんだわ!エレンさんも凄いわ!
エレンさんの攻撃に魔物達が一斉に倒れていく中、冒険者達とビックホーンワイルドシープとの間にぽっかりと空いた空間。そこを目掛けて機体から飛び降りて行ったダンさん。
「
ダンさんも威力が上がったのか空中から斬撃で魔物数体を切断していたの!凄い!凄い!
でも着地したダンさんにまた群がり出す魔物達が!
「
その魔物達からダンさんを守る様に周りを龍のような火が囲んだの!そして、ダンさんの後ろにスタッと綺麗に着地したのはルインさん。いつの間にかエレンさんとカエラさんも地面に無事に降りていたわ。そしてダンさんが上を見上げて「ユイ!頼む!」って私に向かって言ったの。そして私の返事を待たずに、一斉に戦闘に加わって行った4人。
「りょーかいでしゅ!」
聞こえるかわからないけど4人に向かって叫んだわ。そしてすぐにバージさんを見上げた私。
「アンホーク!ポータルスポットに向かってくれ!」
『了解致しました』
バージさんは私を抱えながらアンホークに指示を出して、魔導ヘリはポータルスポットへ行き先を変更。戦っている4人を残して進む機内では、一心に祈りを捧げるヤナ族の女性達とシャルさんの姿があったわ。
「アンホーク!左側のポータルスポットに向かって下さい!」
グラレスさんは何かが見えたみたい。
詳しい指示を出していたわ。
スピードを上げて向かう先には、大きく揺らぐポータルスポットの入り口。
真下には蠢くビックホーンワイルドシープの群れ。
今回のポータルスポットの大きさがわかるわね。
早く食い止めなきゃ!
「あんほーく!このままつっこむでしゅ!」
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