第30話 ヤナ族からの依頼を受けよう

 「昨日対になって居るこの魔導具が点滅し出して、気が気じゃなくて……」


 少し落ち着いたヤナ族の女性シーラさん(20)とカミンさん(22)とコジュさん(21)。全員犬獣人で既婚者。そしてシーラさんは族長さんのお嫁さん。


 どうやら、安否確認が出来る魔導具があるみたいなんだけど、昨日の夜にシーラさんの魔導具が点滅。今朝になってカミンさんの魔導具の色が変わったみたいなの。色が変わる、点滅は装着している相手の体調を表しているみたい。


 なんとしても山に戻りたいと思っている時に、以前山まで来てくれたグラレスさんがムルカの街に来ている事を知ったシーラさん達。必死に探してこの宿に辿り着ついたみたいね。


 「それは心配ですね。皆さんのお気持ちお察しします。勿論皆さんの力になりたいと思いますし、我々も向かう予定でしたからね」

 「まあ!ありがとうございます!」


 グラレスさんの言葉に喜び合うシーラさん達。でも確かヤナ族のいる場所は標高の高いムルカの村。この大所帯で行くのは大変だろうなぁって思ったんだけど……アレ?魔導具のムルカの街にヤナ族のムルカの村、同じ名前よね?気になった私はこそっとバージさんに聞いてみたの。


 「バージしゃん、なんでやなじょくのむらとこのまちがおなじむるかなんでしゅか?(バージさん、なんでヤナ族の村とこの街が同じムルカなんですか?)」

 「そういえばそうだな」


 膝の上からバージさんを見上げてみると、悩み出したバージさん。あら、困らせちゃったかしら。


 「ふふ、私達ヤナ族とこの街は協力体制にあるのよ。ヤナ族の村にもここと同じ結界の魔導具があるの。ここほど強力ではないけど、私達の村でも結界の研究をしていてね。結界は張っているはずなんだけど……」


 私とバージさんの会話が聞こえたのか、コジュさんが教えてくれたんだけど、話していくうちにやっぱり心配になったみたい。ああ、一刻も早く現状を知りたいんだろうな……でもそうなると、余計になんで対の魔導具に反応があったのかって事よね。


 グラレスさんもそう思ったんでしょうね。ヤナ族の現状をまずは詳しく聞く事にしたみたい。どうやら原因の魔鉱石スポットのこともポータルスポットのことも知らないみたいだったの。あ、グラレスさんその辺は上手くぼかして聞いていたのよ。これ以上ヤナ族の女性達を不安にさせたくなかったのね。


 そしてムルカの村は標高3000メートルの位置にあるの。ヤナ族の慣れた人達でさえ、一日は気圧になれる為準備期間が必要なんですって。これは何度も行った事のあるグラレスさんも悩んでいた事だったみたい。


 私にできる事ってないかな。


 バージさん達も色々手段を話しているけど、ちょっと調べてみようかしら。そう思って、バージさんの膝の上でステータスボードを開いて見たら【生活魔導具サイト】と【移動魔導具サイト】に貴方にオススメ!が出ていたの。


 気になって生活魔導具サイトを開くと〈護身魔導具〉に貴方にオススメがあったのよね。で、開いて見たらコレが出てきたのよ。


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 うーん、すごいタイミング。このサイトよく私達の事見てるわよねぇ。そしてこれは買いね!この先魔物がいるとわかっているんだもん。みんなが動けるようじゃなきゃ駄目よね。後は……【移動魔導具サイト】の方は何かしらね。


 〈魔導自転車〉

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 〈魔導自動車〉

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     ・


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 「こりぇでいけましゅ!」


 思わず声に出した私に注目が集まり、照れ笑いをしながらなんとか説明をすると……


 「おお!新たな魔導具か!」

 「今度は空を飛ぶ魔導具とはすげーなぁ」


 興奮するルインさんに、面白がるダンさん。カエラさんとエレンさんとシャルさんは「流石ユイちゃんね」と私の頭を撫でて褒めてくれたわ。あ、バージさんもね。グラレスさんは何やら思案した顔をしていて、真面目な表情でヤナ族の女性陣に話しだしたの。


 「少し宜しいですか、ヤナ族の皆さん。今回は緊急のためいつもとは違う移動手段で向かいたいと思います。そのため我々が協力するのは今回の一件だけという事、またこれから見る事を噂話などで広めない事、勝手な行動を取らない事を約束できますか?」


 私達の話についてこれなかったシーラさん達も、グラレスさんの話にはしっかりと頷いていたわ。それを見て、グラレスさんが今後の動きを改めて話し出したの。明日の早朝に出発ってところまでは覚えていたんだけど……


 その頃には瞼と瞼がくっつきそうになっていた私。目をゴシゴシしながらなんとか起きていようと思ったけど、身体は3歳児。もう限界だったのね。コテンっとバージさんに寄りかかっていつのまにか眠っていたの。私はそのままベッドに運んで貰って朝まで眠ったの。その後はこんな話しをしていたそうなんだけどね。


 「グラレスさん。ずっと気になっていたんですけど、その女の子はグラレスさんのお子さんですか?」

 「いいえ、シーラさん。彼女を抱いていたバージの妹さんですよ。でも私達にとっても大事で貴重な子です。私達は彼女を守るつもりがいつも守られていますけどね」

 「ふふっ、寝顔がかわいいでしょう?でもとっても強い子なのよ。こんな小さいのにね」

 「シャルさんが言う通りだが、かなり抜けてもいるし、お人好しだ。だからこそ、そこにつけ込むようなら俺が許さない」

 「ったく、バージ。お前今協力するって言ったのに、何脅してんだよ。あー……でもシーラさん達、覚えておいてくれ。俺らもバージと同じ気持ちだって事」

 

 グラレスさん、シャルさんは笑顔で、バージさんはいつもの怖い笑顔でヤナ族の女性達に言っていたみたいなの。そして最後のダンさんの言葉には赤獅子メンバー全員が頷いていたらしいわ。


 ってシャルさんから次の日の朝聞いた時には、みんなの気持ちが嬉しくて嬉しくて。とりあえずバージさんに犬のパジャマのまま抱きつきに行ったわね。バージさん鍛錬から帰ってきたばかりで何の事かわかんなくても、「どうした?」って優しく撫でてくれたのよ。朝から心があったかくなったのよね。


 でも可愛いからそのままでいこうって言われたのだけは困ったわね。シャルさんも同意するものだから余計に着替えに手間取っちゃって。そんな一幕もあったけど、しっかり着替えて朝食を食べてチェックアウトをした私達。


 一旦宿に戻っていたシーラさん達3人と見送りのヤナ族の女性達と合流し、まず向かうはムルカの村。


 さあ、族長さんのもとに急がなくちゃ!

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