第12話 出発準備って?
一昨日は早々に潰れた私だけど、次の日は早朝から目を覚ました私。バージさんが鍛錬に起きる時に一緒に起きたのよ。この日は私達も旅の為の仕入れに入ったわ。主に食料ね。
冒険者ギルドに私が持っていたレッドボアやオークやイエローボアを卸して、お肉とお金も補給。結構な金額になるのね。そして小麦粉、果物、お野菜も買えるだけ買ったの。気持ちよかったぁ。なかなか思う様に買うって出来る事じゃないものね。
そしてこの日はテントにこもって大事な調味料作り。面白いの見つけたのよ。
【家電魔導具】より
「調合魔導プリンター」 MP700,000(容器製造魔導プリンター付き。10分間セール中)
***独自の味付けを追求したい貴方に朗報です!バリエーション豊富なメニュー搭載のこの調合魔導プリンター!固体の粉末化は勿論、スープなどの粉末化まで可能になりました!液体の調合は勿論お手のもの。万能めんつゆやラーメンのスープ、焼肉のたれ、チキンナゲットのソース、卵かけご飯の醤油、ドレッシングなど辛さ甘さまで好みに合わせます!魔導プリンター独自製造の瓶や、パックに充填されて完成品が出てきますので保存もラクラク!常温に置いても品質の劣化はありませんよ!勿論魔素自動充填、自動洗浄、常時メンテナンス付きです!業務用サイズで大きめですが、アイテムボックス持ちの貴方には関係ありません!さあ、快適な食事ライフに必須のこの調合プリンター!今なら「容器製造魔導プリンター」もついてこのお値段!10分間だけのこのチャンス、是非お見逃しなく!****
……相変わらず人の好みのツボをついてくるのよ、このサイト。ええ、勿論即買いよ。だって容器って結構使うのよ。旅には必須でしょう?屋台の料理詰めるにも良いしね。
で、現れたのは、下部に四角い穴が空いて、上にタブレットがついた長方形型3Dプリンター。説明によると内部に「容器製造魔導プリンター」が搭載されているんですって。足台を持って来て上部を覗くと、原材料入れるところがあって早速色々試してみたわ。案内音声付きだから楽だったわね。
ギョーショもモロも素材を加えて醤油や合わせ味噌の味にしたり、薬剤を扱っているお店から唐辛子や胡椒、生姜、カカオにコーヒーも見つけたのよ!あの手間のかかるチョコレートもこの魔導具で一瞬よ!思わずバージさんが驚くほど叫んじゃったわ。
ん?バージさんは何しているのかって?「魔導エクレシア辞典」で何か一生懸命調べていたわね。それでも私の事を優先して動くから、お昼寝の時間には強制的に寝室に連れて行かれたわね。身体は3歳児だから「まだやりましゅ!」って言っててもやっぱりすぐ寝つくのだけど。
そしてお昼寝から起きてからも楽しい調味料作り。鶏ガラスープの素やコンソメスープの素、スパイスカレーの素まで作れたのは嬉しかったわ!バージさん「そんなにいっぱい作ってどうすんだ?」って呆れていたけどね。作れる時に作っておかなくちゃ。
夕飯を木漏れ日の宿に食べに行った時、グリットさんに調味料をお裾分けしたの。と言っても麺つゆと出汁いり合わせ味噌よ。ギョーショもモロもあるならこれぐらいは良いかなって、バージさんに許可を取って持って行ったらね……
「バージ!ユイちゃんを娘にくれ!」
私を抱きしめて離さないグリッドさん。アイラさんも「こりゃ良いね!バージ、ユイちゃんを置いて行きな」って乗るものだから、私を取り返したバージさんが、膝の上から離さなかったわ。しかも「ほらユイ、あーんしろ」って私に食べさせるのよ。「ひとりでたべれましゅよ」って言ってもこの日は許して貰えなかったわね。そんな様子を笑ってみているアイラさんに、本当に残念そうなグリッドさんが印象的だったけど。まあ、喜んで貰えたからよかったわ。
この後の時間はバージさんにほぼ持ち歩かれていた私。食後はお風呂にゆったり浸かって、その後はバージさんの膝の上でまさにウィンドウショッピング。人数増えるし、ソファーやテーブルに椅子は必要になるんじゃないかなって思ってね。
でもバージさんによると、「何でもかんでもユイ任せになるのはな。そこは明日荷物搬入してからで良いんじゃないか?」だって。それもそうね。人を喜ばせるのって、与えられた人の気持ちも考えた方がより喜ばれるのよね。要らない手間もかからないし。
って事でこの日はバージさんも一緒に就寝。木陰の宿には申し訳ないけど、もうこのベッドじゃなきゃ寝れないのよね。元日本人は贅沢だわ。ってバージさんもなんか同意しているわね。まあ、一度生活レベル上げたら下げるのは大変って事ね。
そしてぐっすり眠って迎えた出発前日の朝。バージさんと一緒に起きて、バージさんは裏庭で鍛錬に、私は「魔導エクレシア辞典」を開いてゆっくり読書。するとね、またパラパラ自動で動いて出てきたページが……
「しゅきるあっぷでしゅか?(スキルアップですか?)」
そう、こう書いていたのよ。
【スキルアップ】
この世界に住む人特有のスキル。多くの人はスキルがあるだけで満足し、スキルアップの現状を知らない。スキルアップには、経験値と能力値ともう一つ、知識を取り入れなければならない。知識はこの本からも取り入れる事が可能。旅の仲間には見せることを推奨。
へえ!この世界の人達もスキルアップ出来るんだ!もしかしてバージさんそれでこの本熱心に読んでいたのかしら。バージさんは「誘引」だっけ?何に変わるのかしらね。
そう思っていたらバージさんが赤獅子メンバーを連れて帰ってきたわ。早速バージさんに「スキルアップ」の事を言ったら……「ああ、それで俺も色々見ていたんだ。見るべき場所は魔導エクレシア辞典が教えてくれるからな」だって。
それを聞いた赤獅子メンバーは大喜び。スキルみんな持っているらしいの。聞いてみたら、ダンさんは剣士だから「切断」、ルインさんは勿論魔法で火と水と土属性。エレンさんも魔法で光と雷属性、カエラさんは弓師で「射撃」ですって。みんな旅の間のいい目標が出来たって言っていたわ。でも「魔導エクレシア辞典」一冊しかないから、必ず誰かの手の中にありそうね。
ワイワイと賑やかに裏口から朝食を食べに食堂に向かったら、「ユイちゃん!」ってグリッドさんに熱烈歓迎を受けた私。あ、勿論バージさんに抱えられているわ。グリッドさんによると、どうやらあの調味料がいたくお気に召したみたいね。今度はお金を払うから売ってくれって頼み込まれたわ。勿論その場で快諾、販売したわよ。いっぱい作ってあったもの。ホクホク顔のグリッドさんと、申し訳なさそうなアイラさん。こちらこそ気に入ってくれてありがとうございますって事を伝えて、朝食へ。
朝からガッツリメニューの木漏れ日の宿の朝食は、オークの味噌ステーキと野菜たっぷりスープに焼きたてパン。鍛錬してきたメンバーは朝からガツガツ食べていたわね。私はバージさんに一切れお肉をもらってスープとパンでお腹いっぱい。ボリュームあるのよ、ここの食事。でも既に味噌と麺つゆ使いこなしていたみたいで美味しかったわ。
で、その後はみんなでテントに戻って、赤獅子メンバーには部屋決めをして貰ったわ。一人部屋が出来る事に大喜びだったわね。その間に私とバージさんがパルトール商店へ。グラレスさんとシャルさんの荷物を引き取りに行ったの。
「いやあ、ユイさんがアイテムボックス持ちで助かりますよ。魔導テントも楽しみです!」
パルトール商店に着いた私達を今か今かと待っていたグラレスさん。シャルさんに言わせると「子供みたいにワクワクして待っていたのよ、この人」って教えてくれたわ。グラレスさんにしてみたら夢の実現ですものね。なんか気持ちわかるわね。
グラレスさんの方で準備してくれたのは、服や絨毯、それに……
「あ!おっきいテーブルでしゅ!」
そう、家具も用意してくれていたの。家具も持っていける説明もしていたからね。「全員で囲って食べた方が美味しいでしょうからね」とグラレスさん。「ねえユイちゃん、このロングソファーも入りそう?」と家具を見せてくれたシャルさん。どうやらみんなの為に家具を準備していたグラレスさん達。「もちろんでしゅ!」と喜んで収納したわ。……バージさんの言う事聞いてよかったわ。好意を無にするところだったもの。
荷物を全部収納し終わった私達。グラレスさん達は、店の人達に挨拶をしてから木漏れ日の宿に来るみたい。あ、息子さん出てきて挨拶してくれたのよ。どうやらグラレスさんの前妻の息子さんなのね。グラレスさんの前の奥さんは子供を産んで亡くなったみたい。で、息子さんをお世話していたシャルさん(元々グラレスさんを好きだったみたいよ)が猛アピールしてくっついたそうなの。シャルさんすごい。そんな息子さんも人間ができているのか、幼児の私にも「父と義母を宜しくお願いしますね」って言ってくれたわ。「はいでしゅ」って返事は締まらなかったけどね。
挨拶をしてパルトール商店から一足先にテントに戻って来たバージさんと私。バージさんは夕食まで裏庭でダンさんと鍛錬するんですって。私は家具をアイテムボックスから出して設置。勿論、部屋決めが決まった他の3人にも手伝ってもらったわよ。テント内の贅沢さがまた上がったの。その後は私は寝室で一休み。他の3人も自由に過ごしていたみたい。
1時間くらい寝たかしら。私が起きたらもうテントの中にグラレスさんとシャルさんも到着してたわ。グラレスさんもシャルさんも「こんなに快適な魔導テントなんて初めてよ!」「これは素晴らしいですな!」って大喜び。お風呂から上がって来たバージさんとダンさんも自慢げに頷いていたわね。
そして夕食時、木漏れ日の宿の食堂の一角を借りて、メンバーの「壮行会」が始まったの。私は勿論バージさんの膝の上。
「さあ!今晩は私の奢りです!明日から旅に出る為お酒は少しですが、飲んで食べて英気を養いましょう!」
グラレスさんのかっこいい挨拶で始まった食事会。「さあ!いっぱい食べておくれ!」とアイラさんが運んでくる料理で、テーブルの上はいっぱいになったわ。グリッドさんも頑張って作ってくれたみたい。そんな賑やかな食堂の一角。しかも地元で有名なグラレスさんや赤獅子メンバー、バージさんまで揃っているんだもの。「何だ?何だ?」とそれぞれの顔馴染みが集まって、結局食堂全体を巻き込んで宴会が始まったわ。
私はバージさんの膝の上でいたから大丈夫だったけどね。赤獅子メンバーやグラレスさん達は、みんなから景気付けのお酒をドンドン注がれていたわね。あ、ルインさんにはみんなお茶やジュースだったけど。バージさんにもお酒を注ぎに来てくれていたのよ。嬉しそうに飲んでいたわね。
みんなと楽しそうにお酒を酌み交わすダンさん。
魔導具談義が止まらないルインさん。
しっかり味わって飲んでいるエレンさん。
場を楽しんで盛り上げるカエラさん。
一人一人に丁寧に接するグラレスさん。
そんなグラレスさんをサポートするシャルさん。
いつになく柔らかい表情をするバージさん。
私はこんなみんなと一緒に旅に出れるのね。
明日から楽しみだわ。
そんないい気分でいたらね……
「さ、もうユイは寝る時間だ」
「ええ!もうでしゅか!」
「子供は早く寝て備えないとな」
って私だけバージさんに連れられて一足先にテントの中へ。
……3歳児ってままならないわね。
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