第22話 王都に向かおう

 王都まで向かう道中、どうやら私が魔導TVで確認したポータルスポットは、未確認のポータルスポットだったみたい。魔導ハイヤーのナビにもついていて、みんなで確認しながら進んでいるんだけどね……


 「みぎゃああああ!」

 「ユイ!テントの中に入っていろ!」

 「今度はビッグヒトスジイエカかよ!」

 「こいつら血を吸うぞ!囲まれない様にしろ!」


 今度のポータルスポットはでっかい蚊の棲家だったの!中に入る前にウヨウヨいる蚊をなんとかしなくちゃいけなくて、即座にテントをだしたわ。


 私とシャルさん、グラレスさんはすぐさまテントの中に避難。冒険者メンバーは、結界を上手く利用して戦っていたわ。でも結界の外が真っ黒になるくらいいるのよー!この世界蚊取り線香ないのかしら?って思っていたらね……


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 魔導蚊取りジェットマット MP 3,000

 ***蚊でお困りの貴方におススメなのがこちら!ジェット噴射で蚊を即座に退治しますよ。また噴射強度設定もございます。弱にするなら蚊の苦手な匂いを噴射し蚊を寄せ付けません。野外でお休みの際には必須ですよ!勿論、魔素自動充填機能にメンテナンス付き。いつのまにか止まっていた隙に刺されるなんて事はありません!さあ、これからの快適生活の為にも必須なこの魔導具!是非お買い求めを!***


 これはもう即座に購入したわ!すると出て来たのが、イースノーマットのでっかい版よ!私が持てなかったからグラレスさんに持ってもらって、バージさん達に渡しに行ったわ。そしてバージさんが結界の端まで行ってジェット噴射開始させたら……今度は地面が真っ黒になるくらいボタボタ落ちてくるのよ。


 「すーげえ威力!こりゃ面白え!」


 ダンさんなんかそれを持って走り回っているの。ルインさんはその後について蚊の後始末。

 「地面吸収グラウンド・ゼロ

 と唱えてまわっているわ。ルインさんが言うと地面が蚊を取り込んで行くのよ。土魔法の一種って言っていたけど、凄いわ!あ、この魔物特に利用価値があるわけじゃないそうなの。どこの世界でも蚊は人間にとって害虫ね。


 因みに冒険者の女性陣は

 「うわぁ、見てエレン。鳥肌立っちゃった!」

 「私もよ。やっぱりこの系統の魔物駄目ね……」

 苦手なのに立ち向かって行ってくれていたみたい。ありがとう、2人共。


 あ、バージさんも魔導蚊取りジェットマット持って動きまわっているわ。どうやらポータルスポットの中に入れて来たみたい。

 「しばらくすれば入れる様になるだろ。それにしてもユイ助かったぞ」

 結界内に戻って来たバージさんも嬉しそうに私を抱き上げながら感謝をしてくれたの。いえいえ、どういたしまして。


 「そろそろいいでしゅか?」


 ダンさん達も戻って来て、結界の外に弱にして魔導具置いているんだけど、一匹も見えなくなったのよね。後から聞いたらこれ結構危なかったらしいの。街や村が襲われていたらかなりの被害が出ていただろうってグラレスさん言っていたのよ。見つけてよかったぁ。


 安全確認後テントを収納して、魔導蚊取りジェットマットを持ちながら移動し始めた私達。全員でポータルスポットの中に入ると、辺り一面魔物の死骸で真っ黒になっていたわ。


 「ユイちゃん!お願い、早くステータス出してー!」


 カエラさん同様私も鳥肌ものだったもの。

 「しゅてーたしゅ!」

 思わず大声で叫んだわ。すると今回も画面から光が出て空間を包み込んでいったの。でっかい蚊の死体は光で消滅。でも今回の選択は違ったの。


 『ポータルスポットを消滅させますか?

  YES MP10,000

  No キャンセル 』


 「またちがうしぇんたくでしゅ(また違う選択です)」


 みんなの顔を見上げる私。これどうしようって思っていたらグラレスさんが提案してきたの。

 

 「ユイさん、ポータルスポットは基本魔物を寄せ付けるものです。今までは消滅させる事ができなかったので、ギルド管理になっていました。消滅させる事ができるならば、消滅させたい。……ですがここはあえてキャンセルをしてみませんか?おそらく、リソースポータルスポットと同じ様な事になるはずです。それにこのポータルしばらくは大丈夫そうですしね」


 【先見】持ちのグラレスさんの言う事だしね。全員同じ思いだったのか、グラレスさんの提案に頷き、今回はキャンセルを選択したわ。そして2回目にポータルスポットに入ったら……


 『閲覧するには権限がありません』


 やっぱりそうなのね。これで確証が得られたわ。全員が納得し、魔導具を置いてこの場所を出発する事にしたの。どうやらこの辺りは蚊が多いみたいだしね。帰り道にもう一度寄って、その時権限があったら消滅させて魔導具回収する予定だったのよ。この時は。


 ま、この話はまた後でになるわね。


 一先ず魔導バイクで街道まで戻り、ハイヤーを出して先を急いだわ。1日目はポータルスポットの確認ぐらいだったわね。そして2日目は……


 「連続切断ドゥガスネイデン!」

 「グギャアア!」


 ダンさんのスキルが上がり、技が増えたみたいなの。おかげではぐれオーク3匹あっという間に1人で片付けちゃったのよ。


 「だんしゃん!しゅごいしゅごい!」

 

 バージさんの腕の中で盛り上がる私。そう、2日目も順調ねと思ったら、テントを張る場所に現れたオーク達。技を試してみたいダンさんが即座に動いたのよ。私に向かってサムズアップするダンさんと、拗ねるバージさん。

 

 バージさん私の安全を優先するから、いつも後手になるのよね。

 「ばーじしゃんありがとう!」

 こう言う時は思いっきり褒めてあげないと。だってバージさん強いの知っているのよ。偶に朝の訓練を見学すると、大抵ダンさんが膝をついているの。多分このメンバーでは一番よ!流石相棒!


 この後も何匹か出て来たから、近くに集落がないかみて見たらやっぱりいたのよ。今回はまだ50匹くらいの出来立て集落ね。バージさんが斥候役をして見て来たら、今回も女性冒険者が捕まっていたけど死亡していたみたいなの。やっぱりオークは撲滅すべきね!


 ってどうやらバージさん斥候がてら、もう倒して来たんですって。早い!戻って来たバージさんに、魔導バイクで連れて行ってもらって、オークを収納。女性のご遺体はルインさんが燃やして土に埋めてくれていたわ。よかった。


 こんな感じで2日目も終了。3日目も朝早くに出発して、道中にあったポータルスポットに寄ったの。今回は街に近い平原だったから虫じゃなくて……

 

 「おおかみしゃんのむれでしゅか?」

 「ああ、シルバーウルフの群れだ。10匹程だがな。」


 バージさんが言うにはどうやらシルバーウルフの棲家になっていたみたい。シルバーウルフはウルフ系の魔物の中でも素早さに特化した魔物。ここでやっぱりバージさんが出て来たけど、戦うんじゃなくてね。


 「誘引解放アトラクドリリース


 バージさんスキルの方を使ったのよ。魔物にも効くのかと思っていたら集まり出した魔物達。でも襲い掛かりはしないものの、まだ警戒はしていたわね。私は、それでも怖くてバージさんの足にぎゅっと捕まっていたら、抱き上げてくれたバージさん。


 「魔物調教ダァームド[人を襲うな]」


 すると逃げ出したシルバーウルフ達。バージさんは

 「くそっ、まだ駄目か」

 って言っていたけどね。ダンさん、ルインさんは

 「お、バージのやつスキル順当に鍛えてんな」

 「ああ、その内テイムに近い事出来る様になるだろ」

 って有望視していたのよ。みんな旅の間に少しずつスキルアップしていたみたい。

 

 で、今回のポータルスポットはね……


 『ポータルスポットを無効化しますか?


  YES 無効化→亜空間化 MP 100,000

  No キャンセル→消滅 MP 10,000 』


 また違うのが出たの。でも無効化して亜空間化してもこのままにしてはおけないし……そう思っていると、グラレスさんが珍しく指示して来たのよ。


 「ユイさん、これは無効化してみて下さい!」

 「……はいでしゅ!」


 【先見】で何か見えたのだろうと思って、無効化をやってみたわ。するとね、ステータスに変化があったの!


 ユイ (3) 女 人間

 HP 200

 MP 10,000,000

 スキル 魔導具ショップサイト

     アイテムボックス

 称号 異世界からの渡り人

    クレーリアの祝福(魔力増幅)

 センス ポータルスポット 2/100

     亜空間 小(未設置)


 「ぐりゃれしゅしゃん!」

 「やりましたね!ユイさん!」


 ステータスに加わった場所が【センス】の下なのが気になるけど、良い事には違いないからね。グラレスさんに高い高いされて喜ぶ私。判断に困ったら頼りになる人がいるのは助かるわ!こんな感じで、王都までの道中戦ったり休憩したりして来たのよ。そして遂に王都の城壁が見える所に着いたの。


 「ありぇがおうとでしゅか?(あれが王都ですか?)」

 「そうよー!王都で補給と情報収集ね!」

 「カエラ、今回は服を選んでいる暇は無いわよ」

 「わかっているわよ、エレン」


 カエラさんに抱っこされながら、王都を指差す私と、隣でカエラさんに注意をするエレンさん。カエラさんは服が好きなのね。覚えておこう。


 あ、今日は王都の城壁が見える丘で宿泊するのよ。今テントの周りではダンさんとバージさんはいつもの鍛錬中。ルインさんは魔導TVで魔導エクレシア辞典を見ているわ。グラレスさんとシャルさんはテントの中でパンとスープを料理中。


 その後は訓練を見学していたら、ダンさんが「参った!」と言うところで丁度呼びに来たシャルさん。


 「ご飯にしましょう!」

 

 全員で返事をして快適なテントの中に移動する私達。

 「明日こそ挽回してやる!」

 「おお、また返り討ちにしてやるよ」

 ダンさんバージさんは肩を組んで歩いているわ。なんだかんだ気が合うのよ、あの2人。

 「今日もご飯食べたら王宮のレシピね!」

 「あら、お風呂先に入れば良かったわ」

 こちらの女性陣はドラマに夢中みたいね。

 

 私はまた寝ちゃうだろうなぁ。

 でもみんなが楽しく過ごせるのって良いわよね。


 さ、明日は王都。

 どんな街かしらね?

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